ちょっと古い本ばかりになってしまいますが、私が、今まで考えたこともない「現実」を知るきっかけとなった本を何冊か紹介します。
本で知った知らなかった世界―経済的なアプローチよりー その2
本で知った知らなかった世界―経済的なアプローチよりー その3
全てルポルタージュによるノンフィクションです。
『バナナと日本人 フィリピン農園と食卓のあいだ』鶴見吉行 岩波新書
栄養価が高く手軽に食べられるひと房100円のバナナは、何故こんなに安いのか?
安いバナナを享受している私は、この本を読むまで考えたことはないですが本を読むことで今まで考えたことのない「現実」があるということを知りました。
著書は、1982年に出版され私が読んだのが、1890年代後半です。
日本人にとって当たり前の存在であるバナナが、どのような担い手によって栽培され、日本に輸出されスーパーに並んでいたかを知ることが出来る本ですが、単にそれだけの話ではないのがこの本です。
それは、バナナの生産現場、流通過程で行われている持てる者と持たざる者との時代錯誤というべき「搾取」と支配という不条理な現実が歴史的背景や実地の調査も交えて書かれています。
それに加え、安くて当たり前という私達消費者の無自覚な意識もそうした搾取に加担しているという話でもあります。
バナナの主要な生産国のフィリピンのバナナ農園では、歴史的には資本家が大土地を囲い込みそこに目を付けた多国籍企業がバナナの大規模生産を開始し、資本家や多国籍企業のみが有利となる契約を生産者である小作農家と結び搾取の構造を作っていきました。
搾取の構造の中では、資本家や多国籍企業が小作農を借金漬けにして重労働を課し、利益を還元させない低賃金で働かせるという旧宗主国が植民地にしたような奴隷的支配により安価なバナナを供給させてきました。
「安い価格を支えるための現地生産者の犠牲」というものを当時の経済的に豊かだった日本では問題にされず誰もが考えなかった訳ですが
それならば、農民は新たな儲かる作物を自分達で作ってお金を稼げばいいではないかと思うところが、それさえ作らせないような巧妙な仕組み(借金漬け)で農民を囲い込んだので、そこからも逃げられず資本主義の仕組みも機能しない負の連鎖が続くことになります。
「地産地消」や「内発的発展論」の実践が機能したところでは、こんなこと起きないだろうなあと思いながら、そんな単純なものではなく
実際にはもっと複雑な問題が入り組みその土地の伝統文化や歴史は無視、過酷な労働条件や環境破壊という現地小作農にとっては、全くアンフェアな貿易が行われ、そんな現実を知らずに私達はひと房100円バナナを食べていたのです。
著書が書かれて40年以上経って南北問題を含む記述はさすがに古いだろうと思うが、現実には不公平な貿易、多国籍企業の支配は行われ、奴隷のような低賃金かつ重労働で紅茶やカカオ豆やコーヒー豆のプランテーションでも同じようなことが続いていてとても変わったとはいえません。
私達消費者の意識の低さも相変わらずだけど、私達に出来ることは、安い物には訳があり犠牲になっている人やものがあることを念頭に置き私もそうだけどに安さだけにつられず商品の「適正価格」というものを考えて買い物をすることが大切かと思います。
最近、スーパーやコンビニでも目にするようになった「フェアトレード」商品をバナナを含めて積極的に買うのもいいでしょう。
(今度、フェアトレードの高カカオチョコを見つけたら買ってみようと思います)