ちょっと古い本ばかりになってしまいますが、私が、今まで考えたこともない「現実」を知るきっかけとなった本を何冊か紹介します。
本で知った知らなかった世界―経済的なアプローチよりー その2
全てルポルタージュによるノンフィクションです。
『内発的発展論』鶴見 和子・ 川田 侃 東京大学出版会
バブルが弾けて経済が停滞し始めた19990年代に「オールタナティブ」という言葉をよく聞くようになり、そこから何だろうと興味を持ったのが「内発的発展論」というものです。
オールタナティブは、「代替の」とか「もう一つの」という意味で、「内発的発展論」もオールタナティブな考え方です。
従来の発展というと国家や中央が主導となって開発進める西欧型の近代社会モデルが中心でしたが、公害、生態系破壊、貧困、飢餓、戦争など地球的規模の問題が起きているのは外発的な発想といもいえる西欧型モデルだからであって、このモデルとは違う視点からの代替案を考えてみようというのが「内発的発展論」です。
日本での「内発的発展論」の第一人者が、鶴見和子や西川潤です。
鶴見和子や西川潤の本を読んで、新しい発展の道を「地域」から発想というのが新鮮で、「自分達の伝統や文化、思想を見直してみよう」「その地域の特性を生かしたまち作りもいいのではないか」「環境とも上手く共生していこう」という視点は、当時、西欧型「近代化」が当たり前だと思っていた私は、こんな考え方があるのだと新鮮でした。
心理学者である鶴見和子は、今までの外部からの刺激や環境要因だけでなく、個人の内なる欲求や動機が内発的な発展や成長の鍵となるとし住民が主体となって、その地域の自然や文化を守りつつ合理的に活用しながら取り組む持続可能な発展が、「内発的発展」だとしています。
具体的な内発的発展モデルの例としてよく九州の由布院が挙げられます。
湯布院の若い旅館経営者達が牽引し、元々あった自然景観 や温泉資源を生かし巨大な外部資本を入れない「反開発・反大資本」で、都市にない豊かな自然を生かしたまち作りをしようとまち作りとともに映画祭などのイベントの催しなどで湯布院の知名度を上げ全国区にし、そこから今に至るまで観光客を惹きつけてきました。
私も湯布院は、行ったけど雄大な由布岳の裾野に広がる湯布院温泉や金鱗湖や日本の原風景のような農村風景があり土産物屋から雑貨店、カフェにギャラリーとお洒落で個性的な店も多く湯布院牛など食べ物も美味しくてとても魅力的なエリアでした。
湯布院の例のように大企業を誘致するという外部に頼ったものではないので、財政が破綻したり、産業が低迷したりても地域の経済とともに共倒れになることはない持続可能な「内発的発展」という考え方は理念として非常に魅力的なものです。
(現在、半導体工場を誘致して潤っている地方都市でも、親企業が崩れればドミノ倒しになるリスクをはらんでいます)
しかし、その後「経済発展」を実現する具体的な方法は曖昧なままなのか、湯布院のような地域資源や地域固有の価値を活かして経済活性化した例はなかなかなか現れず外来型開発からの脱却というのは素晴らしいのだけど理論が、実践に結びついていないような気がして残念です。
「地域の中で様々な産業が連関し地域の内部で循環するような経済の仕組みを構築することで、外部に依存しない持続可能な安定した産業を生むことが出来、その循環が機能すれば、社会に根付いた文化や伝統を社会の発展資源として生かすことが出来、グローバル化が進む国際社会の中でも他との差別化を生みます」
とこの頃は、これからは「内発的発展論」が日本を変えるだと思ったことでしたが、どうですかね?
この理論は、陳腐なものなのか、はたまた机上の理論なのか
その土地ならではの食文化の「体験」を目的とした「ガストロノミーツーリズム」など「持続可能な社会」の中で生かせないものでしょうか。