「果物は、自分の種を食べられることによって拡散(子孫を増やす)させたいために甘くなり人や動物に“食べられるようにしますが、野菜は逆に“食べられないように”えぐみや苦みなどの毒(アク)”を持ていっていて身を守っている。」
と南雲吉則医師の著書に、野菜と果物についてこのようなくだりがあり、興味を持ちました。
この本から、野菜のアクについて、ほうれん草のアク、蓚酸。
「ほうれん草のお浸し」について興味のあるところをまとめて、ついでにほうれん草のお浸しなど作ってみました。
野菜には、「毒」がある
「葉物野菜」は、ほうれん草なら緑色というように保護色をしたアクがあります。
このアクは、蓚酸(しゅうさん)と呼ばれるもので特有のえぐみや苦みで身を守っています。
野菜を食べるとこの蓚酸で、お腹を壊すので昔は、生で葉物野菜などを食べないようにしていたそうです。
だから野菜を食べるときは、茹でるなどして「毒」を出しましょうということなのです。
「ほうれん草」は、生で食べると苦みがあり、歯の裏側がザラザラしますよね。
このザラザラは、ほうれん草の蓚酸と唾液の中のカルシウムが反応して蓚酸カルシウムという結晶を作ってザラザラとした感触になるのです。
昔の日本人は、ほうれん草を必ずゆでて「お浸し」にして食べたのは、このアクを食べないため、ほうれん草の栄養を美味しく効率よく摂るためなのです。
私は、ほうれん草をゆでで胡麻和えにしたり、大根おろしを掛けたり、鰹節や醤油を掛けてよく食べますが、今まであまりお浸しにして食べていませんでした。
それは、お浸しの正しい作り方をよく知らなかったからなのです。
この本で、野菜のアクやほうれん草のお浸しに興味を持ち、ほうれん草のお浸しの正しい作り方を覚えたい。
ひと手間掛けて、野菜の毒、蓚酸をきちんと取って調理したいと思ったので、ほうれん草のお浸しを作ってみることにしました。
今回、白ごはんcomさんのサイトを参考にして、『ねこぶだし』を使って作りました。
ほうれん草のお浸しの作り方
根の先が汚れていたら少し切り落とす。
このとき束が、バラバラにならない部分で切ることが大切です。包丁で「十字」に切り込みを入れます。
ボウルの水の中で切った根元を洗い土や汚れを落とします。
洗いにくい付け根の泥が落ちてくれます。続けて水を取り替え、反対側の葉も洗います。
鍋に湯を沸かし、ティースプーン山盛り1杯の塩を加えます。
塩を入れることで、ほうれん草全体に塩気がうっすらと浸透し、おひたしにした後に水っぽい仕上がりになりにくくなります。
ほうれん草の葉を手で持って茎を湯に浸け、茎の部分だけを先に30秒ほどゆでます。
30秒経ったら全体を湯に沈め、続けてさらに30秒ほどを目安にゆでます。
茎と葉に「時間差」をつけてゆでることが大切です。
すぐに冷水にほうれん草を取って冷まします。
すぐに水で冷やすのは、ビタミンを分解させないため。蓚酸は熱に溶けやすく、塩の浸透圧で溶け出すので、これで取り出せます。
余分な熱が通るのを防ぎ、「色止め」にもなります。
冷めたらほうれん草を軽くしぼってまな板に移し、料理に応じた幅に切り分けます。
水気を絞ると、緑のぬるぬるした汁が出るのが、蓚酸アクです。
ほうれん草は切った後に水気が出やすいので、料理に使う幅に切った後、もう一度しっかり水気を絞ります。
水気を絞ったほうれん草を保存容器に入れます。
だし:醤油:みりん=8:1:1をボウルなどに合わせ、ひたひたに注ぎ入れます。固まっているので、このように、箸でほぐすとよいです。
私は、だしにねこぶだしを水で薄めて使います。
冷蔵庫に入れ味をなじませれば、スポンジが水を吸うように葉の中に出汁が入っていきます。
ゆでた野菜をひたしていただくから、お浸し
こうやって野菜をひたしていただくのでお浸しです。
蓚酸などのアクをひと手間掛けて、毒素をきちんと出し、栄養素を効率よく摂取する。昔からの人間の知恵によって伝えられている調理法が、お浸しなのです。
アクもなく、出汁がよく沁みて、シンプルだけど心にもじんわりと染み入る懐の深い味でした。