ちょっと古い本ばかりになってしまいますが、私が、今まで考えたこともない「現実」を知るきっかけとなった本を何冊か紹介します。
本で知った知らなかった世界―経済的なアプローチよりー その2
本で知った知らなかった世界―経済的なアプローチよりー その3
本で知った知らなかった世界―経済的なアプローチよりー その4
全てルポルタージュによるノンフィクションです。
『エビと日本人』村井 吉敬 岩波新書
『バナナと日本人』と『エビと日本人』は、どちらが先に読んだか覚えていないけれど『エビと日本人』は、エビを切り口にエビから見える世界を書いています。
アジア太平洋資料センターの村井氏の講座も聴講にも行きました。
やはり、エビとかバナナとか日本人が好きな食材を一つ取り上げて深掘りする着眼点はナイスで、これが「途上国の開発経済」みたいなタイトルだったら私も手に取らないだろう
大のエビ好き日本人とエビを育てる人々、エビを獲る人々、エビを加工する人々、エビを売る人、食べる人との関係を通して労殿搾取や環境破壊、貧困問題、途上国と先進国の格差を浮き彫りしていく手法は、バナナと通ずるものがあります。
印象に残ったのは、産地のインドネシアなどでは高級なエビは、輸出用で食べられないということ
エビの乱獲による資源の枯渇、海底の環境を破壊するトロール漁法、養殖エビのために破壊されたマングローブ林、人工的な飼育方法によって汚染される水と私達が、エビを食べることが外国の豊かな自然が犠牲になっているということです。
(この他にくず魚の投棄、黒変防止の薬剤投与、伝統的漁法の衰退、零細漁民が貧困等あり)
私達日本人のそんな遠い海外の深刻な事情を知らずにエビをパクパクと食べることは、原発のある地域と原発の恩恵だけを受けている都市との悪意のない関係のようで何ともやるせない気持ちになります。
また、エビと日本人との関係で面白かったのが元々、日本人はそれほどエビを好んで食べていた訳ではく、商社やエビ問屋、冷凍食品メーカー、スーパーマーケット、政府などが利害を一致させ日本人をエビ好きにさせたというもので、「エビで儲けることが出来る」という利益至上主義によるものです。
エビを遠い海外から輸入することで、数々の搾取、貧困、貧富の差の拡大、暮らしや環境破壊が起きているという現実を知る上で多くの人に読んで欲しい本です。