私は、脂漏性皮膚炎や汗疹(あせも)、手湿疹、その他のアレルギーなどの皮膚疾患で体のあちこちが痒くなり、痒みに悩まされていました。
今年の夏は暑いので、汗疹などで体中の痒みが止まらず全身を掻きむしってしまいました。
手湿疹に悩まされていたけど、脱ステロイド剤で手が綺麗になった
痒くて、「掻けば掻くほど痒くなる」とい悪循環になりましたが、どうして皮膚は、痒くなるのか、掻けば掻くほど痒いのか。
自分でも、経験して掻くのをどうして止められないのか。
痒くなるたびにそんな切実な疑問が生じるのです。そんな皮膚の正体(メカニズム)を知りたくて手にした本はこちらです。
「なぜ皮膚はかゆくなるのか」菊池新著 PHP新書
この本で、得たことを中心にその疑問に迫ってみました。
掻くことは本能、生き延びるために有利に働いた
「痒い、掻くと気持ちいいという」感覚は、元来生命が存在するために必要なのです。
脳は、病原体などを媒介する「(ノミやダニなどの)虫を掻き取って排除せよ」「肌が、かぶれる物質を今すぐ取り除け」と指令を出し皮膚が痒くなります。
掻くと気持ちいいと感じるのは、生物が病気になったり死なないための生き残るための知恵だったのです。
このように痒みは、痛みと同様、外界の侵襲異常を脳に知らせる重要な知覚でしたが、現代は、アレルギーやアトピー、精神的なものからくる痒みなどあり、単に生きるために痒みが起きているのではなく、原始の時代よりもっと複雑になっているのです。
掻けば掻くほど痒くなるのは何故
痒い場所を掻くのは、脳からは「痒いから掻きなさい!」と指令が出るからです。
「報酬系」とよばれる脳の部位が反応し「掻くことは、気持ちいい!」とご褒美を貰えると脳が認識しているから気持ちよく掻いてしまうのです。
掻いて快感を得ることを体が覚えてしまえば、掻くことを止められなくなってしまいます。
脳は、「さあ、気持ちいいから、掻きなさい!」と痒みの前にニンジンをぶら下げているので、皮膚にダメージを与えると分かっているのに我慢出来ずに掻いてしまうのです。
私のように脂漏性皮膚炎などで、常に痒みが続くのは、皮膚が長期間慢性に炎症を起こしているとわずかな刺激でも痒みと感じてしまいます。
髪の毛が、肩などの地肌に触れただけでも痒くなることがあり、痒みが「過剰状態」になっているのです。
無性に痒くてたまらない状態を引き起こす「イッチ・スクラッチサイクル」
痒い状態を引き起こすのは「イッチスクラッチサイクル」というものです。
「イッチ」は、痒み「スクラッチ」は掻くという意味で、以下が、イッチスクラッチサイクルのメカニズムです。
痒い→掻く→掻いた部分が傷つく→傷ついた部分に炎症が起きる→症状が悪化する→もっとかゆくなる→さらに搔き壊す→掻いた部分がもっと傷つく |
「掻けば掻くほど痒くなる」という悪循環をを生み出すのですね。これを図にしてみました。
例えば、「花粉症」の私を例に説明するとこんな感じです。
スギ花粉が、鼻から体内に侵入→体の中のマスト細胞にスギ花粉の分子がつく→マスト細胞の顆粒が放出され、その中の痒みの原因物質ヒスタミンがばら撒かれる→痒くなる
ここで私は痒いので、掻いてしまいます。
掻く→皮膚細胞が傷つく→傷ついた皮膚を修復するために「サイトカン」(il-1、tnf-α)と呼ばれる化学伝達物質が出る→炎症が起き皮膚が悪化
同時に
「サイトカン」が出る→痒みを増す軸索反射(じくさくはんしゃ)が起きる→痒みが増殖→はじめて掻いた場所の炎症が広がる
私は、我慢できずに掻いて掻いて掻き崩していまいます。
掻き崩す→表皮細胞が破壊→知覚神経が表皮の中まで伸びる→知覚が過敏になり痒みに敏感になる(少しの刺激でも痒く感じる)
私は、髪の毛が肌に当たっただけで痒くなります。そして、私は、夜昼問わず搔きまくってしまいます。
このサイクルが延々に続き、私は掻いて掻いて皮膚を悪化させてしまうのが、イッチ・スクラッチサイクルなのです。
掻かないためには
では、痒いから掻いてしまい、さらに痒くなる循環から抜け出すにはどうしたらいいのか。
それは、イッチスクラッチサイクルを止めることが、痒みを止めることにつながります。
イッチスクラッチサイクルの「痒み」の部分をストップさせることが痒みの連鎖を止めることになり、解決法となるのです。
痒いから掻けと脳から指令が出ても、「掻かないこと」で重要なのです。
でも掻かないようにすることは、とても難しいですがその方法をいくつか紹介したいと思います。
「痒みは存在しない」と自己暗示
意志の力で掻かないようにします。
痒みを受け入れ、掻く習慣を排除しますが、その際に「この痒みは本当の痒みではない、脳が作った幻想だから振り回されてはいけない」と自分の脳をコントロールするのです。
痒いと思うと掻かずにいられないので「かゆみは存在しない」と自己暗示するのです。
え~これは、難しいという人は
人為的に掻けないようにする。
それは、掻くことが出来ない状況を作ることです。例えば
①「手袋」をして掻けないようにする。
私は、寝ているときに無意識に掻いてしまうことがあるので、私はしたことはないのですが、そのときは手袋をして寝ると掻くことが出来ないので掻かなくなります。
②布やテープでカバー。
皮膚科では、痒い場所に「亜鉛華軟膏(昔からある白いベタベタした膏薬)」という薬の塗られた布を貼ったり、「ステロイド含有テープ」を貼ったりします。
それらの、薬効成分により皮膚の炎症を鎮めるほかに、痒い場所を布やテープでカバーすることで、掻きたくても掻けない状態になるのです。
など物理的に掻けなくすることです。その他には
痒い所を、冷やす。
- 冷やすことで、痒みの原因ヒスタミンの分泌を抑えることが出来る。
- 冷やすことで、神経を一時的に麻痺させることが出来る。
このように冷やすことで、痒みを抑えることが出来ます。
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痒い所に、メントールを塗る
痒みの胡麻化し成分となるハッカ油などのメントールを痒みの部分に塗ります。メントールは、「冷感」がありスース―するので、なんとなく痒みが和らぎます。
精神的な影響から生じる痒みには。
かゆみは単に皮膚炎などの体表の病気から発生するだけでなく、心が深く関わっている場合があります。
そのような特に原因が特定されない痒み、精神的なものからくる痒みには、向精神薬が効くケースがあります。精神科を受診してみることで解決する可能性もあるのです。
気持ちを別なものへ向ける
私は、脂漏性皮膚炎や手湿疹の痒みで、イッチスクラッチサイクルの状態になりました。でも休んでいた仕事を再開したことで、このサイクルを止めることが出来ました。
気持ちが、「痒み」から「仕事」に向いたこと、人前だと掻くことが出来ないというのもあり掻かなくなり、掻かないことで痒みが自然に治まったのです。
まとめ
痒みは、外界の侵入異常を脳に知らせる本来生物が生き延びるために備わった本能的な知覚です。痒いと脳は、「掻きなさい」と指令を出し掻くと快感が得られるように報酬を与えます。
掻くと「気持ちいい」。「痒い」→「掻く」の動作をすると、快感が得られるので、ますます掻くことが止められなくなります。掻くとマスト細胞が壊れて痒みの物質ヒスタミンが体内にばら撒かれて、痒みは拡散していきます。
痒みには、掻けば掻くほど痒くなる「イッチ・スクラッチサイクル」というサイクルがあります。このイッチスクラッチサイクルを止めることが痒みをなくすことにつながります。
イッチスクラッチサイクルの循環を断ち切るには、「掻かないこと」が重要となります。
そのためには、手袋をする、テープを貼ったり薬を塗るなど人為的に掻けない状態を作る。脳に「痒みなどない」と暗示を掛ける。痒い場所を冷やす、メントールを塗るなどの対処方法があります。
また、精神的なものからくる痒みは、向精神薬を使うと治まることがあります。
痒み、痒いという気持ちを別なものに向けるという方法もあり、私はこれで脂漏性皮膚炎や手湿疹の痒みが治まりました。