母の乳がんで、医師とのコミュニケーション技術は大切だと痛感した
『最高の医療を受けるための患者学』上野直人著 講談社+α新書
2007年母は、乳がんの手術をしました。
そのときにこの本を今読んでいたらよかったと思うことがあります。乳がんの手術では、左胸を全摘しました。
当時、私は岩手県、母は東京と離れて暮らしていたので、母と私の情報のやり取りがスムースに行きませんでした。
母が、担当医の説明を聞いてそれを私が電話で聞くとうやり取りでした。
病気に関する情報のやり取り
病気に対する知識がない情報弱者の母は医師の説明を正確に理解していないので、患者本人の母を介して伝わる情報は、まるで「伝言ゲーム」のように曖昧なものが多かったです。
私が、担当医に直接病気の説明を聞くことが出来たのは、手術当日(術後の説明)だけでした。
母の説明+医師から直接聞いた説明で推定する母の乳がんは
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というものでどこまでが正確な病状なのか実は、よく分かりません。
母の話と私が直接担当医から聞いた情報で振り返って推測して書いているからです。
医師との「コミュニケーション技術」が足りずに正確な情報を引き出すせなかったために推測でしか分からないのです。
幸い初期の乳がんで、10年経った現在、再発も転移もないからよかったものの、患者本人の母も家族の私もこれでは、患者や家族としては最高の医療を享受することは出来ません。
この本には、そんなことにならぬよう患者として、満足度の高い医療を受けるためのノウハウ、技術が書かれていてとても参考になります。
最高の医療を受けるために患者が行うこと
がん専門の医師が書いたこの本は、患者として、医師の力を最大限引き出して、よりより医療を受けるためのコミュニケーションを「技術」として身につける方法を9つのステップでまとめています。
特に治療に選択肢の多い乳がんは、乳がん患者として自分の病状を知ることや治療の方法を知り選択することが重要なので参考になることが多いです。
- 診察室では」、真剣にメモを取る
- テープレコーダーの活用
- 医療者とのコミュニケーションの腕を磨く
- 重い病気のときこそ時間をかけて
- 質問内容は事前に整理
などで母の乳がんの術後の説明では、メモを取ったり質問事項を考えたりしていたはずです。
でもやはり、医師とのコミュニケーション技術が不足していたため、受け身で説明を聞いていただけだったような記憶があります。
転移のない、「顔つき」が悪くないという深刻な病状ではないがんだったということで安心したということもありますが。
ステップ4
質問上手になる
・質問内容は事前に整理しておく。
・質問をするタイミングを考える。
・医師以外のスタッフにも聞いてみる。
・ふだんから質問の練習をしておく。ステップ5
医師の話した内容を消化する
・医師から聞いたことは家族や友人の前で反復する。
・確認したいことは書き残しておく。
・あいまいなところは次の診察で確認する。
選択肢の多い乳がん治療など参考になる部分を書き抜きました。医師に質問するタイミングというのも案外難しく、聞きたいことを聞きそびれてしまうこともあります。
医療用語などの専門用語が出てくるので、分からないことは後から調べるように「メモ」を取ることは必須で、録音機なども使用すれば後で何度も聞き返せるのでいいと思いました。
乳がんの場合、「乳房を残す」かどうかという選択肢があります。病状にもよりますが、乳房の全摘、温存、再建という方法があり自分で選ぶことが出来ます。
母の場合、乳房を胸の筋肉以外全摘しましたが、医師から全摘以外の選択肢を示されたかどうかわかりません。
母は、再発するリスクが少ない全摘を迷わず選んでいましたが、初期のがんという病状からして「温存治療」も可能だったのではないかと私は、後になって思うのです。
胸の形は保ったまま、がん細胞を取り除くことができたのではないかと。
医師から可能な選択肢を聞き出して、どの方法を選ぶのか、もう少し母と納得するまで時間を掛けて考えてみればよかったと思うのです。
このように乳がんは、患者本人の希望や価値観が治療法の選択に大きく関わる病気なので、この本のように医師や医療従事者とよくコミュニケーションを取ることが、納得のいく治療を受ける第一歩なのかと思いました。
最高の医療を受けるためには、患者自身が行動を起こすことが必要
私も母の手術までに、ネットや本で乳がんについて勉強して何も分からない情報弱者の母と二人三脚で手術に臨むつもりでした。
母は当時70代と高齢なのもあり、病気に対する知識欲もなく、全ての治療を医師任せにしていました。乳房の全摘以外の治療法もあまり知らなかたと思います。
私もネットなどで、乳がんについてのにわか知識を得たものの、物理的に母の診察に付添うことが出来ず、母の話も満足に聞いてあげることも出来ませんでした。
医師とのコミュニケーションを取る機会も術後の説明だけで、それも私のコミュニケーション技術が足りず、母の乳がんの病状が正確にはわかりませんでした。
病状が正確に把握出来ないと自分で、全摘か温存か再建かなどの治療方針を選べません。
そのため、どのようにしたいかという「意思決定」が出来なくなり、満足度の高い最高の医療を受けられなくなってしまうのです。
これからは、母のような「おまかせ医療」ではなく、患者自身が自分を守るために病状、治療内容、治療方針などを知り、自分の要望や目標をはっきり伝えることが大切になります。
最高の医療を受けるためには患者が変わる必要があり、医師や医療従事者とコミュニケーションをはかることが医療の質を高めることだと思いました。
そのためのよりよい「技術」を身に着けるための具体的な方法が、この本に分かりやすく書いてあります。
特にがんの場合、完治を目指した治療、腫瘍を小さくする治療、標準治療、治験参加、延命治療、緩和ケア、ホスピスと治療と常に選択肢があり、医師や医療従事者とともにコミュニケーションを取りながら治療の意思決定に関わっていくことが重要なのです。
母は、術後の抗がん剤治療を中止し、5年後から検査通院の負担を減らすために医師と話し合って、本人の希望で検査項目を減らしました。
この本にも書いてありますが、どの治療がいいかを決めるのは患者本人です。それは、どういう人生を生きたいか本人が決めるということでもあるのです。