ちょっと古い本ばかりになってしまいますが、私が、今まで考えたこともない「現実」を知るきっかけとなった本を何冊か紹介します。
本で知った知らなかった世界―経済的なアプローチよりー その3
全てルポルタージュによるノンフィクションです。
『ルポ 貧困大国アメリカ』堤未果 岩波新書
2000年代アメリカの「9.11」以降に読み、軍事能力の高さ、経済力と豊かな生活水準、科学技術、民主主義の政治等の世界最強国というそれまで持っていたアメリカに対するイメージが変わった本で経済大国、軍事大国アメリカの負の一面を知らされた一冊です。
(1990年代半ばにニューヨークに行ったときヒスパニック、アジア系人種が多くてびっくりした記憶があり、この頃から映画やドラマのアメリカとは違うのだと感じていましたが)
この本で、一番衝撃的だったのが、アメリカのシビアな「医療」です。
医療と言っても医療費で、国民皆保険が当たり前だと思っていた当時、アメリカは、一部を除き公的医療保険がなく民間の医療保険でそれをカバーするしかなく、自分で医療保険に加入しなければ一度の病気で貧困層に転落することがあることに驚きました。
(たとえ出産や盲腸の手術でも100万円以上、掛かります)
これは、国民の半数近くが民間の医療保険に入り、医療を「市場原理」に任せているから起こり得ることで、このときばかりは日本の保険制度のよさを実感し改めて日本人でよかったと思いました。
医療保険のほかにもうひとつ「民営化」されたものが、「軍隊」で、民間の軍事会社がイラク戦争のため貧困層を狙って兵隊をリクルートするというもので、無保険のため医療費で破産したり、多額の学費ローンで負債を背負った人が金銭目的で多く入隊しているという事実を初めて知り、いかに自分が、平和ボケしているかと思い知らされました。
今では、傭兵というのは当たり前になったが、世界最強国家であるアメリカという国は、安全保障といった分野までも商業ベースの上の成り立っているかと思いました。
このほか、ブッシュ政権が数々の福祉を削減し弱者を切り捨て貧富の格差を助長していったことを指摘し、2000年代このような自己責任論という言葉とともに新自由主義な考えが日本にも流れて来る危惧を覚えた記憶があります。
この頃に貧富の差が拡大しさらにここから20年、分断の流れへと進んでいくアメリカを目の当たりにし我が国も対岸の火事ではないという思いを強く持ちました。