紀行文、滞在記のベスト10です。
ほとんど何十年も前のもので(新しくても10年くらい前か)、いかに最近、本を読んでいないというのが分かります。
ただ読んだ本の記録は 後から振り返ると自分がどういう道を通ったか分かるので面白いです。
今読み直せば、当時の視点とは異なるのでしょうがその頃の感性で書いてみました。
第8位:『旅行者の朝食』米原万里
未知の食べ物に対してか革新的で「食べるために生きる」タイプ(要するに食いしん坊)の筆者の視点から各国の美味しい料理ばかりではなく、まずいものや変わった料理や文化の違い、食文化の違いを綴っています。
石井 好子の食べ物を題材にした『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』はお腹の空くエッセイで、これは、口の中に唾液が溜まるエッセイかな。
見たことも食べたこともないものを「食べてみたい」って思わせるのがこの本です。
中でも「絶対食べたい!」って思わせたのが「ハルヴァ」(トルコ蜜飴)というお菓子で、ネットで探して注文したことがあります。
私が、実際に食べたハルヴァは、ひまわりの種やナッツ類が入ったヌガーのようで、特別美味しいものではなかったです。
米原さんが最初に食べた究極のハルヴァ(「プラハの同級生のお土産の青い缶からこそげるように掬ったひとさじのハルヴァ」)は、米原さんもなかなか手に入らなかったように見つかりません。
だからこそ、『旅行者の朝食』の中でのみ存在する幻のハルヴァは尊く、私にとってこの本は、「ハルヴァ」の本でもあります。
第7位:『大和古寺風物詩』亀井勝一郎
若い頃、入江泰吉氏の斑鳩の里や西の京の写真で奈良にも魅せられるようになり、それからこの本を手に取った記憶があります。
戦時中、文芸評論家亀井勝一郎の、大和路をめぐる随筆集で、斑鳩宮、法隆寺、中宮寺、法輪寺、薬師寺、唐招提寺、東大寺、新薬師寺に行ってから読んだか、読んでから行ったのか遠い昔なので記憶が曖昧です。
建物、歴史、仏像、歴史的な考察が描かれていて、ガイドブックやパンフレットには載っていない古代史の知識や美しい文章が新鮮でした。
特に法隆寺の百済観音を見て、「仏像は、美術品ではなく信仰の対象」だと目覚めたくだりは、仏像は美術品として鑑賞の対象だと考える和辻哲郎『古寺巡礼』とは真逆で印象的でした。
仏像は、「美術」か「信仰」か美術館や博物館で仏像を見るたびに考えてしまいます。