(写真 ユーソニアン住宅の原寸モデル展示)
『開館20周年記念展 帝国ホテル二代目本館100周年 フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築』(パナソニック美術館)
ライト展ということで、芸術鑑賞の範疇に入るのか分かりませんが、ライト作品では帝国ホテルと落水荘が好きで興味があったので行きました。
フランク・ロイド・ライト
フランク・ロイド・ライト(1867~ 1959年)は、アメリカの建築家です。
私が知っているのは、帝国ホテル(帝国ホテル二代目本館)と落水荘を設計したことです。
滝の上に建つ落水荘は、テレビのCMで見て夏は、涼しそうで別荘にいいなあと思い
40年以上前に明治村(愛知県犬山市)で見た帝国ホテルは、イーグルスの歌にある架空のホテ「ホテルルカリフォルニア」やラッフルズホテルとともに宿泊してみたいと当時、憧れのホテルでした。
(実際に宿泊出来るのは、ラッフルズホテルのみ)
日本に馴染のある建築家で、「自由学園明日館」に加えて兵庫県芦屋市の「山邑邸(現・ヨドコウ迎賓館)」の建築にも携わっています。
アメリカ以外でライトが設計した建物が見られるのは、日本だけだそうです。
フランク・ロイド・ライトは、建築家として72年間1200以上の建築物を設計し
帝国ホテルを設計していた6年間は日本にも住み、日本人建築家も大きな影響を与えました。
ライトの建築思想のひとつが「空間はその土地に根差したものであるべき」
というのがあり、これを実践したのが「ロビー邸」「を代表とする「プレーリースタイル」です。
(日本では、明日館、ヨドコウ迎賓館)
アメリカの広大なプレーリー(草原)に建てられた建築物は、広々とした土地を活かし深い庇や低い屋根のラインによる水平性を強調したもので、開放的で機能的なものでした。
自然との調和を図りながら美を追求した「エドガー・カウフマン邸(落水荘)」や晩年にはニューヨーク・セントラルパークの「ソロモン・R・グッゲンハイム美術館」の代表作を残しました。
展覧会
平日の展覧会場は、男性のビジネスマンのような人が多く(男性比率高め)、ドローイングを熱心に見ていて建築や設計の仕事に携わっている人が多い印象を受けました。
ライトの仕事を、ドローイング、写真、模型、家具やステンドグラスなどの実物、資料などで展示し、特に日本初公開となるコロンビア大学エイヴリー建築美術図書館フランク・ロイド・ライト財団アーカイヴズが所蔵する貴重なドローイングが多数展示されていました。
展覧会では、歌川広重の「名所江戸百景 王子不動之瀧」(1857年)の版画があり、何でかなあと思ったらライトは、歌川広重の浮世絵に造詣が深く作品にも浮世絵の影響を受けていることでした。
(自ら浮世絵のコレクターやディーラーとして多くの作品を蒐集したそうです)
浮世絵に魅了されたライトは、無駄が削ぎ落とされた背景や単純化された構図に着想を得て彼の建築スタイルやデザインに反映させています。
だからか、彼の建築作品には、自然光の活用、開放的な空間、自然との調和、簡潔で線の美しいデザインなど日本の美意識に通じる要素が随所に見られます。
もしかしたら、この滝の絵からライトが着想を得て、自然と建築の融合という美的アプローチをして「落水荘」の構想にヒントを得たのかもしれないとふと思いました。
帝国ホテル
帝国ホテルは、愛知県の明治村(一部移築)で初めて見たとき、ノスタルジックでまるでおとぎ話に出てきそうな建物だと思いました。
ライトの理想を細部まで追求したこの「帝国ホテル二代目本館」は、惜しみなく手間を掛け予算も費やした結果、個性的で類を見ないものとして高い評価を受けました。
完成直後に関東大震災に見舞われましたが、周りの建物が倒壊する中、ホテルだけ被害を免れたので優れた耐震性のある建造物であることが証明され、振動を吸収し揺れを分散する独自の耐震構造についても追求していました。
本展では、「帝国ホテル二代目本館」の設計図面に加えてホテルの全貌が見て取れる模型、家具、装飾がほどこされたレンガや大谷石の部材、食器やメニューなども展示
ホテル全体を忠実に再現した3Dプリンターによるレプリカは、オリエンタルな佇まいとともにどこかの王宮のように見えます。
実際にホテルで使われていた家具や食器は、ホテルと調和しホテル全体をアートとして捉えていたのだと思いました。
ル・コルビュジエが、画家としても活躍してるようにライトも幼稚園の窓ガラス、門の装飾や食器のデザインに秀でデザイナーとしての一面も知ることが出来ました。
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だから、精緻なドローイングもまるで絵画のようで、透視図とともに芸術作品として楽しめました。
自然との調和
ライトは「自然との調和」を強調し彼のデザインには、自然の景観や環境に溶け込むような要素が多く取り入れられています。
個人の邸宅である落水荘は、森の中の滝の上、山の斜面に建てたという常識では有り得ない立地に建てられたことで世界一有名な住宅になりましたが、建築に素人の私が考えるに滝の上にある落水荘は、湿気による劣化やメンテナンスや修繕や経費の面で実際に住むには難しいのではと現実を考えてしまいます。
(湿気で家中がカビだらけになりそうだし、夏は涼しいけど冬は寒そう、洪水や雪崩の心配や水の音がうるさい、虫や動物の来襲、風災害、敷地の除草、落ち葉の掃除…)
敢えて大自然の中に溶け込むように作ることはロマンであるととにリスクも大きく、期間限定で住むかホテルとして泊まるのならいいけど自然との調和は、理想だけど現実はあり得ないです。
でも、自然の美しさを最大限に引き出し建築と自然を一体化させ独自の美を生み出した功績は大きく、建造物も自然の一部と考えているから成し得るのでしょう
ライトは自然環境との一体感を高めるために建築物を自然の地形に沿って配置することも行い、これによって建物と周囲の景観が調和し自然と建築が一体となった美しい空間を創出しています。
だから、ドローイングを見ても建造物を含めた敷地や空間一帯全てが彼の作品だと思いました。
ライトの功績
展覧会では、さらにライトの功績を紹介
ライトは「教育こそ民主主義の基本である」の信念のもと多くの教育の場の設計し、日本でも同じ教育方針を持った自由学園の羽仁妻に共鳴し「自由学園明日館」設計しています。
(明日館は、池袋にあるので、見に行けそう)
そして、ライトは、建築技術の目覚ましく発達し人々の生活様式が激変した時期に一般市民向けの安価なユニット・システム住宅を開発し、ホテル、オフィスビル、学校、美術館、高層ビルから都市計画と時代に即した功績を次々と残していきました。
元々は、土地の個性を活かしたプレーリースタイルも今では、日本の住宅にも取り入れられ日常的に目にします。
街の景観に溶け込んだ身近なところにもライトの足跡を見ることことが出来、最近では、個人の邸宅にも目が行くようになりました。
しぼり菜リズム(まとめ)
『開館20周年記念展 帝国ホテル二代目本館100周年 フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築』(パナソニック美術館)に行きました。
フランク・ロイド・ライト(1867年~ 1959年)は、アメリカの建築家で1200以上の建築物を設計し、開放的で機能的なプレーリー様式、自然との調和を図りながら美を追求した「エドガー・カウフマン邸(落水荘)」、ニューヨーク・セントラルパークの「ソロモン・R・グッゲンハイム美術館」の代表作を残しました。
ライトの仕事をドローイング、写真、模型、家具やステンドグラスなどの実物、資料などで展示し、フランク・ロイド・ライト財団アーカイヴズが所蔵するドローイングが多数展示されていました。
日本との関係も深く、日本の浮世絵に魅了されたライトは、浮世絵の無駄が削ぎ落とされた背景や単純化された構図に着想を得て彼の建築スタイルやデザインに反映させ、ライトの理想を細部まで追求した「帝国ホテル二代目本館」やライトと同じ教育方針を持った自由学園の羽仁妻に共鳴し「自由学園明日館」設計しています。
彼が得意としたのは、自然の景観や環境に溶け込むような要素を取り入れて自然の美しさを最大限に引き出し建築で、自然を一体化した独自の美を生み出しています。
ライトは、建築技術の目覚ましく発達し人々の生活様式が激変した時期に一般市民向けの安価なユニット・システム住宅を開発し、ホテル、オフィスビル、学校、美術館、高層ビルから都市計画と時代に即した功績を次々と残していきました。
■開館20周年記念展 帝国ホテル二代目本館100周年 フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築
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- 会期:2024年1月11日(木)~3月10日(日)
- 会場:パナソニック汐留美術館