ウスター美術館
モネやルノワール、ドガなど今まで、「印象派」の絵は何度も見てきたもののモネやルノワールなどフランスを代表する画家の作品以外はほとんどお目に掛ったことはありませんでした。
アメリカボストンの「ウスター美術館」に所蔵されている印象派のコレクションは、アメリカやヨーロッパ内のこれまでに目にしたことのないような作品が多く、それらを中心に展示した展覧会が『印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵』(東京都美術館)です。
アメリカボストンにある「ウスター美術館」は、19世紀末に開館して以来、開館当初から象派作品を積極的に収集して印象派の豊かなコレクションがあります。
当時、評価の定まらなかったモネの「睡蓮」を美術館として世界で初めて購入したのがウスター美術館で、絵画とともに購入に際しての画商と美術館との生生しいやり取りも複製の書簡やパネルで展示
館長が理事会を説得したり、支払期限の延長を交渉したりして2万フランで購入
画廊からは口外しないようお達しがあったという「睡蓮」は、破格の値段だったようです。
(モネの「睡蓮」の中で、この作品が好みです)
ウスター美術館では、印象派の作品でもモネやルノワールなどフランスを代表する画家によるものだけではなく、ヨーロッパ内やアメリカの印象派の作品と幅広い芸術家の作品が所蔵されています。
今展覧会では、印象派の作品として日本初来日のものが多く、フランス本家の印象派だけではないこれまで見たことのない作品に触れることが出来ます。
そんな無二な展覧会なので今まで、印象派の作品は沢山見て来た人(私も)でも楽しめる内容になっているはずです。
印象派
会場内は基本、撮影禁止だったけど撮影可能な場所がありそこで撮影した絵の複製↑
複製の絵は、「洗濯場」アルフレッド・シスレー、「裸の赤ん坊を抱くレーヌ・ルフェーヴル(母と子)」メアリー・カサット、「リンゴ園」ジョゼフ・H・グリーンウッド「ゴルフ・ジュアン」ポール・シニャック、「ナタリー」フランク・ウェストン・ベンソン「税関吏の小屋・荒れた海」クロード・モネ、「朝食室、冬の朝、ニューヨーク」「コロンバス大通り、雨の日」「シルフズ・ロック、アップルドア島」「花摘み、フランス式庭園にて」チャイルド・ハッサム、「睡蓮」クロード・モネ、「オパール」アンデシュ・レオナード・ソーン「急流、イエローストーン」ジョン・ヘンリー・トワックマン、「オリーヴの木々」ジョルジュ・ブラック、「ハーミット・クリーク・キャニオン」デウィット・パーシャルです。
2024年はモネ、ドガ、ルノワールなどの芸術家が参加した第1回「印象派展」開催から150周年の節目の年になります。
第1回印象派展とは、1874年に開催された後に「印象派」と呼ばれる画家達によるグループ展で、当時のフランスの旧態依然のサロン疑問を感じた芸術家が独自の展覧会を企画したことに始まります。
「印象派」の呼び方は、モネの作品「印象、日の出」に対し、「印象でしかない」という評論家の皮肉に由来し「うまい切り返し」だと感心します。
とまあ評論家に揶揄される反アカデミックな印象派は、保守的で秩序を重んじる美術界とは対極なこをするんです。
例えば、即興的に主に戸外の風景や都市で日常的に暮らす人をテーマにする、従来とは異なる筆遣い、写実性にこだわらない…という表現でこれらは、今までにないものです。
今回展示のモネの「睡蓮」やルノアール、セザンヌ、クールベ、コロー、シスレー、ピサロ、シニャックなど
印象派は、風景や人物を光の変化を表現しながらその場の空気感を捉え自らの印象に忠実に描くのが大きな特徴で特に「光」の描写にこだわり、光を描くために必須の屋外での制作がメインになります。
筆遣いは、パレット上で絵の具を混ぜ合わせずそのままカンヴァスに並べていく手法を取り
それによって、時間や動きにより変わっていく光をを表現し、自然界の色としては存在しない「黒」も使いませんでした。
従来の見たものをありのままに描くという写実主義に対して「見たものの瞬時の風景、印象を捉えて再現する」のが印象派で、自分が住む町、風景、そこで暮らす人々など日常的な場面を多く描きました。
以前見た光の描写を追求した『テート美術館展』(新国立美術館)の印象派の絵にもあったように印象派が腐心したのは、私なりに解釈すると屋外に溢れるキラキラした光をいかに明るく効果的に表現するかということです。
アメリカの印象派
印象派は、フランスで起こった芸術潮流ですが、この流れが、強い影響力をもって国外にも広がり、やがて、ヨーロッパだけでない各国にも影響を与えます。
印象派の技法は、アメリカなどで独自の発展を遂げ、各地域の文化や社会と融合しながら様々なかたちで展開されていき今展覧会では、その過程を辿ることが出来ます。
その中でもメインは「アメリカの印象派」の作品で、日本ではあまり見ることが出来ない作品を多く紹介しています。
私がアメリカの印象派の作品を初めて見て、代表格であるチャイルド・ハッサムの絵が目を惹きもっと多くの展覧会でハッサムの絵を展示すれば日本でも人気が出る画家だと思いました。
(ハッサムを知ったのが、今回一番の収穫かな)
ハッサムの木漏れ日の表現、明るい色調の「花摘み フランス式庭園にて」(1888 年)は、筆のタッがモネのようで印象派を踏襲していてるが、パリ郊外の庭園を描いていても原色を使い色鮮やかで新しい息吹が感じられます。
雨に濡れた道路の質感や写る街並みの様子が圧巻な「コロンバス大通り、雨の日」(1885 年)
ソール・ライターの写真が絵画的なのか、ハッサムの絵が写真のようなのか、ソール・ライターの雨のニューヨークの写真を思い出します。
ニューヨークが生んだ伝説の写真家『永遠のソール・ライター展』に魅了されて
「シルフズ・ロック、アップルドア島」(1907 年)がモネの絵を彷彿とさせる一方、「朝食室、冬の朝 、ニューヨーク」(1911 年)のようにヨーロッパの印象派を見慣れた目で見ると窓の外の雪の摩天楼の風景がモダンで斬新です。
ハッサムの他にジョゼフ・H・グリーンウッドやなどアメリカの印象派の画家達の作品は、構図も大胆
街並みや工業地帯など人工的な風景やグランドキャニオンのようなアメリカらしい雄大な自然を描いた絵は、アメリカの印象派がフランスの印象派の表現技法を完全に模倣している訳ではないことを教えてくれます。
日本にも影響
19世紀の後半にフランスに登場した印象派が、世界に波及し進化していった歴史を絵画で辿りましたが、欧米だけではなく日本にも強い影響を与えました。
印象派の技術は、黒田清輝ら画家達によって広められ、我が国のアカデミズムをも形成するほどの大きな影響力を持ち印象派の影響を受けた黒田清輝や藤島武二、久米敬一郎らの作品を展示
画面全体に温かな光が溶け込んでいる「草つむ女」(黒田清輝 1892年)など印象派の影響が随所に見られます。
ここでは詳しく書きませんがモネやマネの印象派が、日本の浮世絵の影響を受けていると言われています。
確かに浮世絵の遠近感がなく、全体的に平面の表現が似ていなくもありませんが浮世絵が、印象派に影響を与えその印象派から日本の画家も影響を受けたというのは縁の循環を感じます。
今回の展覧会でヨーロッパに端を発した印象派が世界に広がり進化していった過程を見て印象派と言っても、ひとくくりには出来ないほど個性豊かで多様なものだというのが分かりました。
フランスの印象派しか知らなかった私に新しい印象派の魅力を教えてくれた展覧会でした。
しぼり菜リズム(まとめ)
アメリカボストンの「ウスター美術館」は、印象派の作品でもフランスを代表する画家によるものだけではなくヨーロッパ内やアメリカの印象派の作品と幅広い芸術家の作品を所蔵して、それらを中心に展示した展覧会が『印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵』(東京都美術館)です。
印象派作品は、今回展示のモネの「睡蓮」やルノアール、セザンヌ、クールベ、コロー、シスレー、ピサロ、シニャックなど風景や人物を光の変化を表現しながらその場の空気感を捉え自らの印象に忠実に描いているのが大きな特徴で、特に光の描写にこだわり光を描くために必須の屋外での制作がメインになります。
印象派は、フランスで起こった芸術潮流で、強い影響力をもって国外にも広がりやがて、ヨーロッパだけでない日本や各国にも影響を与え印象派の技法は、アメリカなどで独自の発展を遂げ各地域の文化や社会と融合しながら様々なかたちで展開されます。
その中でもメインは「アメリカの印象派」の作品で、ハッサムの他にジョゼフ・H・グリーンウッドなど日本ではあまり見ることが出来ない作品を多く紹介
アメリカの印象派の画家達の作品を見て、構図も大胆で、街並みや工業地帯など人工的な風景とグランドキャニオンのようなアメリカらしい雄大な自然を描いたものなどアメリカの印象派がフランスの印象派の表現技法を完全に模倣していないことが分かりました。
今回の展覧会でヨーロッパに端を発した印象派が世界に広がり進化していった過程を見て印象派と言っても、ひとくくりには出来ないほど個性豊かで多様なものだというのが分かり、フランスの印象派しか知らなかった私に新しい印象派の魅力を教えてくれた展覧会でした。
会期:2024年1月27日(土)~4月7日(日)
■『印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵』
会場:東京都美術館
会期:2024年1月27日(土)~4月7日(日)