紀行文、滞在記のベスト10です。
ほとんど何十年も前のもので(新しくても10年くらい前か)、いかに最近、本を読んでいないというのが分かります。
ただ読んだ本の記録は 後から振り返ると自分がどういう道を通ったか分かるので面白いです。
今読み直せば、当時の視点とは異なるのでしょうがその頃の感性で書いてみました。
第10位:『謎の独立国家ソマリランド』高野秀行
海賊が横行する国、内戦の国というイメージの東アフリカにある共和制国家、日本人にとって遥か国で、関心が向かない国という知名度が低い国がソマリアではないでしょうか。
そんなソマリアのソマリランドに行ってソマリランドについて書いたのが、学んだ言語は25以上、早稲田大学探検部出身のノンフィクションライターの高野秀行です。
高野氏は、好奇心と冒険心を駆使してネットの情報に出てこない実情をときに現地の人とドラッグをむしゃむしゃ食べながら深掘りし、知り合った人々とのやり取りの描写が活き活きと描かれ紀行文としての面白さがあります。
それでいて、海賊産業の社会的背景や無くならない理由やイスラム原理主義勢力の現状などについても取材しその社会を仕組みや原理、原則を解き明かそうとする硬派の内容もあり
興味を惹いたのは、ソマリランドが内戦の果てに無政府状態となりその後、独立国として十数年も平和を維持していることです。
ソマリランドが、高いレベルの民主主義社会を築いているは、「氏族」というアイデンティティや欧米型民主主義では考えられない理論で成り立っているからです。
「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをし、誰も書かない本を書く」がモットーの高野氏によって不思議な国ソマリランドがほんの少し寄せられた功績は大きいです。
第9位:『黒部渓谷』冠松次郎・『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』角幡唯介
「黒部の父」とも呼ばれる冠松次郎は、1911年(明治44年)白馬岳から祖母谷、黒部峡谷に入り黒部川下廊下の完全遡行に成功
そして、黒部の谷や山の全貌を明らかにし登山の中に沢登りという日本独自の分野を開いた登山家です。
山登りをしている頃、山に関係する本をよく読んで、そのうちの1冊です。
現在でも一年のうちのわずかな期間、登山の初心者では入ることの出来ない秘境中の秘境が「下廊下」で、下廊下の中でもさらに秘境と呼ばれる「十字峡」に若い頃行きたかったけど、当時から比べると格段に整備されているにも関わらずビビッて断念した私からする黒部峡谷は、憧れの場所です。
人を寄せ付けない垂直にそそりたつ断崖、雪解けの冷たい清流逆巻く川の流れ、谷底から見上げる立山や剱の山々…
神秘的な原始の渓谷の面影を伝える『黒部渓谷』に行った気分になると思いきや、ますます憧れは募り行きたくなりました。
冠松次郎の黒部へ愛が行間からほとばしり、読んだものを黒部の虜へと道連れにしていきます。
『謎の独立国家ソマリランド』の著者・高野秀行の早稲田大学探検部の後輩にあたるのが作者の角幡唯介で、早稲田大学探検部は、ユニークな人材を輩出すると思いました。
ツアンポー峡谷は、奥チベットの黒部よりさらに秘境感のある場所で、まさに探検、いや冒険冒険譚である。
数度の訪問で、峡谷の未踏地である「空白の五マイル」を踏破することに成功し、壮絶な工程と死と隣り合わせの臨場感や情熱溢れてちょっぴり青臭いこの書
それにしても過酷な冒険から無事に帰って来たなあと感心します。
後にカナダ北極圏1600Kmを徒歩で踏破しているので、やはり只者ではないです。