特別展「和食 ~日本の自然、人々の知恵~」(国立科学博物館)に行きました。
和食
「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録されて10年になります。
カレーやラーメン、とんかつも日本食として海外で人気があるこの頃、和食って何だろうと思うことがあります。
展覧会では、「和食」とは、日本人の食事の総称であり、米のご飯が中心になり、西洋料理や中華料理などの世界の料理との差別化をはかるため明治時代に生まれた言葉であるとしています。
私は、和食といえばご飯を中心とした食事で、そこに汁物とおかずが加わるイメージです。
THE日本食↓
これは、「サザエさん」の波平さんの夕食で、一汁一菜が基本です。
麺類だとだしを取った汁にそばとかうどんで、ラーメンは中華料理でカレーは、西洋料理?なのですね。
精進料理や懐石料理、御節料理や桃の節句のちらし寿司など伝統的な行事で食べるものも和食です。
でも、ナポリタンやオムライス、エビチリのように実は、日本食というのがあり、自国の料理に海外の料理をアレンジして上手く取り入れているのも日本食なのかと思いました。
日本の豊かな自然がもたらす和食
日本列島南北に長く、豊かな自然がもたらす食の原材料すなわち日本の自然環境に即した食事が日本食の源になります。
(現在は、食料自給率が40%を切っているので何とも言えませんが…)
日本食・和食の基本となる水、キノコや山菜、野菜、海藻、魚介類と日本列島の豊富な食の材料を展示
食材の多くが種類が多種多様にあるので、展示数もかなり多いです。
特に水質と食文化は切り離せない関係にあり、山が多く降水量が多い日本は、ミネラル分を含みにくいため主に「軟水」です。
軟水はだしが取りやすく味を楽しむ日本茶などにも適して、逆に西欧などの硬水は、煮崩れしないため煮込み料理に適し紅茶の香りを引き出します。
このように、水だけを取り上げても地形や地質が料理に大きく影響していることが分かります。
日本のミネラルウォーターも地域によって硬度が異なり地図を使って表わされていました。
水の硬度は、その地形や地質と深い関係があることを知りました。
だしを使った料理が和食に多いのが、日本の水が、軟水で昆布や鰹節のうま味成分を軟水が引き出すからです。
和食に欠かせない「だし」の正体は、グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸などの「うま味」成分を食材から抽出し、水に溶かし出したもので科学的に紹介しています。
(うま味とは、甘味、酸味、塩味、苦味に続く5番目の味として日本人研究者によって発見されたもので、味成分は野菜、肉などにも含まれます)
ブイヨンや上湯(シャンタン)など、世界には様々なだしがあるが、それらにはうま味以外の成分も多く含まれている一方
日本の昆布だしやかつお節だしは、ほぼうま味成分のみのシンプルなもので素材の味を生かした料理が特徴の和食に適しただしであることが分かります
それにしても、昆布のグルタミン酸とかつお節のイノシン酸を合わせた一番だしは、単独よりうま味を強く長く感じるそうで、この先人達が経験を通じて見出しただし文化は奥が深く
これこそ、未来へ引き継ぐべき遺産だと思います。
ダイコンをはじめ、はほとんどが外国原産という野菜の多くのは約3000年ほど前に誕生したとのことです。
ダイコンは、江戸時代以降の品種改良により世界でもっとも多い800品種以上が日本には存在すると同展でもそのうち25種類のレプリカが展示
2m近くある世界一長い守口大根などスーパーにはないものもあり食べてみたいと思いました。
(守口漬けで、食べたかな?!)
日本は南北に長く、陸地の7割が山地で標高も多様なため、様々なキノコに恵まれ日本では、現在、約3000種類のキノコが知られ全世界の1割以上あるとされています。
日本で珍重される「マツタケ」は、欧州では「吐き気のするような匂い」という語源の学名で呼ばれナメコは、ヌルヌルが敬遠され文化の違いを感じさせます。
海に囲まれた日本ほど古くから海藻を食べる国は珍しいそうで、沿岸に生育する1500種のうち60種以上を食用としています。
展示では、ヒジキや寒天の原料テングサ、昆布など海藻の標本が並び、天井をつたう全長6mのナがコンブにビックリ
飛鳥・奈良時代か、貴重品であるがために税として納められた海藻があったことも知りました。
普段、柵や切り身でしかお目に掛れないマグロが、実物大の模型で展示され泳いでいる様子は、興味津々
体長が3m近いクロマグロは、迫力があります。
体の流線形?や鱗が目立たない、ひれを折り畳むのは、高速で泳ぐため
右下の「メバチマグロ」は、ほかのマグロに比べて目がパッチリしているのはほかのマグロよりやや深い海に適応するためと生物は、環境に合わせてデザインされているのですね。
魚も世界屈指の種類を誇る日本の食用魚があり、これだけ多彩な食材を見ることで普段食べている和食が、日本の自然と日本人の知恵や技術が生み出した食べ物であることが分かります。
カビ・細菌
和食に欠かせないのが「カビ」や「細菌」の微生物を活用した「発酵」技術です。
酒や醤油、味噌の基本となる調味料作りに活躍するのが、麹カビで日本人が上手に扱ってきたことが科学的に学べ料理や食は科学と密接に結びついていることが分かります。
会場では、発酵の仕組みや製造過程を映像も流しながら解説
漬物、納豆、表面にカビ付けをする工程を繰り返すかつお節…
微生物の正体が分からなかった時代にも独特のうま味や香りが形成されることを知り、試行錯誤しながら食事に取り入れていったのでしょう。
先人達の日本食
展覧会では、偉人たちの食卓や江戸の街並みを模型で再現し縄文時代からの和食の歴史を振り返ります。
マダイの塩焼きやアワビの塩焼きもある卑弥呼の食卓から、幕末にペリー提督をもてなした料理などが再現が面白かったです。
ずっと昔の食事のレプリカを見て気付いたことは、どんな豪華な食事でも「肉」がないことです。
それは、675年に天武天皇が発布した「肉食禁止令」により明治時代まで 肉食を禁じられといたからです。
肉を食べない代わりに魚や大豆でたんぱく質を補給したり
油脂を多用しない出汁の文化が生まれ、味噌、醤油、酒、酢の発酵調味料を使った食事として発展し肉を食べないことによる日本独自の食文化が形成されたことが分かります。
それが、日本食の代名詞である低カロリーの健康長寿食になったのですね。
確かに上流階級の人達の食事は、比較的栄養バランスがよく体にもよさそうです。
↑この1582年、織田信長が安土城で徳川家康を3日にわたり毎日、2回接待した「本膳料理」もタイの焼き物や鮒ずしがあり豪勢だけどやはり、肉がないです。
信長饗応膳は、数日前から用意していたので冷めた料理だったようですが、その後、旬の味覚を大切にし「温かいものは、温かく、冷たいものは冷たく」見た目にもこだわるようになりました。
一方の庶民の食卓は
肉も魚もなくて、低カロリー過ぎてこれだけでは、足りない~!
こんな質素な食事をしていて、たんぱく質も少なく肉体労働をしていた人は、これで体が持つのかなあと思い
検診をすれば、きっとアルブミンや蛋白も低くて栄養失調ですね。
江戸時代になると料理屋の発達、料理本の刊行、発酵調味料の大量生産が行われ、和食は、社会的に広がり庶民にまで浸透しました。
江戸時代の屋台も再現され、天ぷら、寿司、そばがあり江戸庶民の手軽なファストフードだったようです。
天ぷらは、立ち食いに向く串揚げで、握り寿司は今よりかなり大きくアナゴやマグロにアユを一匹使ったお寿司もありました。
鰻は、ぶつ切りにしたものを串に刺し焼いたもので、今のかば焼きの方が食指を誘います。
明治時代になると西洋料理が流入、肉食も解禁され和洋折衷の料理が、大正時代は、貴族の間ではカレーライスやオムライス、コロッケが食べられるようになります。
終戦後からは、漫画「サザエさん」に基づき再現したレプリカで「鰻」「かけそば」「茶碗蒸し」「すき焼き」「お寿司」の典型的な和食のほかに「カレーライス」「ラーメン」「コロッケ」「とんかつ」も登場し、和食だけではなく洋食や中華も食べる今の食事と変わらぬものになりました。
とにかく、展示物が沢山あり過ぎて丁寧に見て回ると時間がいくらあっても足りないくらいでした。
だから、じっくりと解説を読めないものもあったけど、日本列島には、豊かな自然の恵みがあり私達の祖先は、それを存分に活用し
さらに美味しく食するための「出汁」、発酵技術や養殖技術、野菜の品種改良にも挑んで世界に誇れる和食を作り上げてきたことが分かりました。
知れば知る程、奥深いのが和食です。
しぼり菜リズム(まとめ)
特別展「和食 ~日本の自然、人々の知恵~」(国立科学博物館)に行きました。
和食」とは、日本人の食事の総称であり、米のご飯が中心になり、西洋料理や中華料理などの世界の料理との差別化をはかるため明治時代に生まれた言葉であるとしています。
日本食・和食の基本となる水、キノコや山菜、野菜、海藻、魚介類と日本列島の豊富な食の材料の展示し特に水質と食文化は切り離せない関係にあり、山が多く降水量が多い日本は、ミネラル分を含みにくいため主に「軟水」で、軟水はだしが取りやすく味を楽しむ日本茶などにも適しています。
だしを使った料理が和食に多いのが、日本の水が、軟水で昆布や鰹節のうま味成分を軟水が引き出すからです。
魚も世界屈指の種類を誇る日本の食用魚があり、これだけ多彩な食材を見ることで普段食べている和食が、日本の自然と日本人の知恵や技術が生み出した食べ物であることが分かります。
酒や醤油、味噌の基本となる調味料作りに活躍するのが、麹カビで日本人が上手に扱ってきたことが科学的に学べ会場では、発酵の仕組みや製造過程を映像も流しながら解説しています。
展覧会では、偉人たちの食卓や江戸の街並みを模型で再現し、縄文時代からの和食の歴史を振りますが、明治までどんな豪華な食事でも肉のない食事で、代わりに魚や大豆でたんぱく質を補給したり味噌、醤油、酒、酢の発酵調味料を使った食事として発展し日本独自の食文化が形成されます。
江戸時代になると和食は、社会的に広がり庶民にまで浸透し、明治時代になると西洋料理が流入、肉食も解禁され和洋折衷の料理が、大正時代は、貴族の間ではカレーライスやオムライス、コロッケが食べられるようになり終戦後は、和食だけではなく洋食や中華も食べる今の食事と変わらぬものになりました。
日本列島には、豊かな自然の恵みがあり私達の祖先は、それを存分に活用しさらに美味しく食するための「出汁」、発酵技術や養殖技術、野菜の品種改良にも挑んで世界に誇れる和食を作り上げてきたことが分かりました。
■特別展「和食 ~日本の自然、人々の知恵~」
- 会場:国立科学博物館(東京・上野公園)
- 会期:2023年10月28日(土)〜2024年2月25日(日)