(皇居東御苑内の石垣)
皇居三の丸収蔵館
11月3日にリニューアルオープンした「皇居三の丸尚蔵館」(旧称・三の丸尚蔵館)に行きました。
大手町駅から徒歩2~3分にある皇居大手門で手荷物検査を受けた後、皇居内に入り東御苑内の博物館で開館記念展「皇室のみやび─受け継ぐ美─」第1期「三の丸尚蔵館の国宝」へ
皇居内は、多くの外人旅行者がいましたが、日時指定制なのか博物館は日本人ばかりでどちらかというと年配の人が多い印象でした。
三の丸尚蔵館は、宮内庁が管理してきた皇室関係の資料や美術工芸品を国に寄贈されたことを契機に、1993年に開館された施設です。
旧館を取り壊し新たに建設されたので、館内は新しく奇麗
現在は1期棟のみの完成で、2期棟がまだ工事中で2026年に完成予定なので完成したらまた、訪れたいです。
2、3階は収蔵庫で、1階の2つの展示室で今回の展覧会を開催しています。
国宝
今回は、皇居三の丸尚蔵館収蔵の「国宝」のうち伊藤若冲の「動植綵絵」4幅を筆頭に「蒙古襲来絵」や高階隆兼の「春日権現験記絵」、「藤折枝蒔絵箱」、小野道風の「屏風土代(どだい)」が展示されました。
これら国宝は、2021年と最近指定されたもので、これまでは天皇や皇族が所有する御物は、文化財の指定から外れていた(奈良の正倉院は例外)けれど方針が転換され国宝や文化財に指定されるようになったという経緯があります。
作品が、伊藤若冲のように近年になって評価が高まった訳ではなかったのですね。
「春日権現験記絵」は、藤原氏の氏神である春日権現の様々な霊験を、全20巻で記録した絵巻です。
当時の風俗を知る史料として、また痛みやすい絹地の絵巻が完全な姿で700年もの長年月を経て現存しているという貴重なものです。
鎌倉時代のものとは思えないほど、色鮮やかで奇麗です。
表紙部分の修復では、一般種の繭から作った絹糸では太すぎて風合いが出せないため皇后さまがご養蚕で育てられた日本純産種の蚕「小石丸」の生糸が使われたそうで皇室との縁を感じさせます。
この小石丸「螺鈿紫檀五弦琵琶」の再現模造にも使われて、芸術品への貢献度が高いと思いました。
え~超有名寺院の倉庫のお宝は、贋作?!「五弦琵琶」の模造品に触れて
高価な絹地に金泥と濃彩を多用しているからか、品が漂い精緻な描写も素晴らしいです。
この蒔絵箱が国宝?
なのかと思いましたが「春日権現験記絵」を納めていた箱だそうです。
描かれた藤の花は、藤原氏と春日大社にゆかりが深い花です。
「蒙古襲来絵詞」後巻(部分)は、細川家家臣の大矢野家から1890年に献納
元寇の2度目の来襲を描き、肥後国の御家人・竹崎季長(すえなが)が、自らの活躍を子孫に伝えるために描かせたものとされています。
博多湾沿いに築かれた生(いき)の松原の石垣の前を出陣する、主人公の竹崎季長らの一団が見られます。
(私が撮った写真は、肝心の赤い鎧の季長は切れて写ってませんでした)
絵詞全体では、リアルに描かれた実戦の様子から蒙古軍が鉄砲を使うなど日本軍と蒙古軍の戦い方の違い等が分かる史料といしての価値もあるようです。
↑の文字の羅列の「屏風土代(びょうぶどだい)」って何?
と思いましたが、土代は下書きで、屏風に貼る色紙に記す漢詩を下書きしたものでした。
下書きだけど随分優雅な字だなあと
それもそのはず、書いたのが平安時代(10世紀)の「三蹟」の一人であり花札にも描かれている小野道風の筆だからです。
(三蹟は、9世紀の空海などの三筆に対するものです)
屏風に描かれた清書の文字と比べて見たいが、本番とは違うリラックス感みたいなものがあるのかもしれないです。
こういう下書きや画家のラフスケッチなど美術館で見ることがありそれはそれで、面白いです。
中国から輸入された漢字を日本の漢字としての書き方にした「和洋」の元を作ったのも小野道風です。
「屏風土代」は、1925年に井上(旧侯爵)家より献上され、この作品以外も天皇へ献上された経緯も調べてみたくなりました。
伊藤若冲
伊藤若冲(1716~1800年)の「動植綵絵」の全30幅のうち12幅を第1期と第4期に分けて公開
今回の第1期の前期では、4幅が展示されています。
さすが、若冲の絵の前には、人が多い
写真を撮るのに人が写ってしまう程で苦労しました。
伊藤若冲は、「動植綵絵」(1757~1766年頃)を40歳頃から約10年を掛けて、京都の相国寺の「釈迦三尊像」を荘厳するために描き、花鳥を中心に魚貝に至るまでを30幅を書き上げ相国寺に寄進しました。
1889年に相国寺より皇室に献上
「菊花流水図」の大輪の白い菊の花がぽっと浮かんでいるようで、花火のように余韻を残します。
若冲は、熱心な仏教徒で「自然に生きる動物や草木にはすべて仏性が宿る」という考えに基づいて描かれているのが納得出来ます。
筋肉の付き方も研究したかのような鶏の生命が宿った身体表現、羽毛の染料と墨で一枚一枚描かれた繊細さと緻密さ
南天の実のみずみずしさ
動植物の表現において卓越した技能を持ってますね。
南天と鶏のトサカの赤、鶏の黒、菊の白、バックの黄色の色の対比とバランスも素晴らしいです。
若冲の吸引力凄し
こういうの見るとその場から離れられなくなります。
「老松白鳳図」は、松の上に雄の鳳凰が片足で立ち、旭日を仰いでいます。
レースのような純白の羽が美しく、写実的なのだけど幻想的です。
調べて見たら、非常に繊細なタッチの羽根は、裏透けする絹本の特徴を活かし裏側から彩色する「裏彩色」という技法を使っていて、これにより、顔料の彩度を保持しながら微妙な色彩の違いを出せるそうです。
きっと、使っている画材や筆、顔料なども高価なものなのでしょう。
羽先の赤と緑のハートも可愛いです。
御物として一般から隔離されていたことにより、しばらくその存在を忘れ去られていたような作品なので改めて一般公開されたのを機に是非とも見て欲しいです。
同時開催の特別展示「御即位5年・御成婚30年記念 令和の御代を迎えて―天皇皇后両陛下が歩まれた30年」も見て、天皇皇后両陛下の御成婚時に御召しになった十二単等が展示され、本物を目の前で見れるとは思いませんでした。
それにしても大手門の外は喧騒と高層ビル群があり
オフィスビルも門の手前で寸止めされて、そこから先の皇居内は、別世界で漂う空気も違います。
しぼり菜リズム(まとめ)
皇居東御苑内にリニューアルオープンした「皇居三の丸尚蔵館」に行き、「皇室のみやび─受け継ぐ美─」第1期「三の丸尚蔵館の国宝」を見ました。
三の丸尚蔵館は、宮内庁が管理してきた皇室関連の資料や美術工芸品を国に移管した際に開館した施設で、建物を立て替えて新しくなりました。
展示された国宝は、「動植綵絵」伊藤若冲、「蒙古襲来絵」、「春日権現験記絵」高階隆兼、「藤折枝蒔絵箱」、「屏風土代」小野道風です。
これらの国宝は2021年に指定され、以前は天皇や皇族の所有物は文化財指定から外れていたが、方針転換により指定されるようになった経緯があります。
「蒙古襲来絵詞」は、日本軍と蒙古軍の戦法の違いが分かる史料としての価値があるものです。
「春日権現験記絵」は、鎌倉時代のものとは思えないほど色鮮やかで奇麗で、表紙部分の修復では、皇后様がご養蚕で育てられた日本純産種の蚕「小石丸」の生糸が使われたのも皇室との縁を感じさせます。
書の達人である小野道風の「屏風土代」が下書きとは思えないほど優雅な書です。
伊藤若冲の「動植綵絵」の菊花流水図や「南天雄鶏図」「老松白鳳図」などの作品には、若冲の独自の視点と技術が光り仏教の「自然に生きる動物や草木にはすべて仏性が宿る」というのが体現されています。
同時開催された特別展示「御即位5年・御成婚30年記念 令和の御代を迎えて―天皇皇后両陛下が歩まれた30年」では、天皇皇后両陛下の御成婚時に御召しになった十二単などが展示されていました。
■「皇室のみやび─受け継ぐ美─」第1期「三の丸尚蔵館の国宝」
- 会場:皇居三の丸尚蔵館
- 会期:2023年11月3日(金)〜12月24日(日)