カピトリーノ美術館
東京都美術館の「永遠の都ローマ展」へ行きました。
カピトリーノ美術館は、イタリアのローマの7つの丘の1つカピトリーノの丘に建つ美術館で、一般市民に公開された美術館としては世界最古のものとされています。
教皇シクストゥス4世が1471年にローマ市民に「カピトリーノの牝狼」を含む4点の古代彫刻を寄贈したことにより設立
16世紀にはルネサンスの巨匠ミケランジェロが美術館に面したカンピドリオ広場を設計しました。
この歴史あるカピトリーノ美術館の所蔵品を中心にローマの歴史と芸術を紹介するのが、今回の展覧会です。
カピトリーノのヴィーナス
本展の目玉は「カピトリーノのヴィーナス」(2世紀)で、古代ギリシアの女神像に基づく2世紀の作品ですヴィーナスのために特別にしつらえた部屋に展示されています。
ヴィーナスが、ナポレオンがイタリア半島を占領したときに戦利品としてパリに持ち去られ、ナポレオン失脚後にローマに返却されるという歴史に翻弄されながらも腕がなく地中に埋もれていたミロのヴィーナスとは違いほぼ制作当時の状態を保っています。
門外不出のヴィーナスが、ナポレオンの略奪以外正規の手続きを経てカピトリーノ美術館を離れるのは、今回が初めてでこれを見られるのはかなりラッキーです。
脱いだ服を置き風呂に入る準備(入浴後?)をしているヴィーナスが、やや前かがみに姿勢で右手で一糸まとわぬ裸体を隠そうとするポーズはクニドスのアプロディーテーに着想を得た「恥じらいのヴィーナス」といわれ
この右手が、奥ゆかしさを表しているように見えるけど「裸」であることを強調しているそうです。
大理石の艶っぽさ白い肌、ミロのヴィーナスのように腹筋が割れているわけではなく適度な豊満さが安心感を与えます。
次の章の展示コーナーからもヴィーナスの優しい身姿がちらりと見え
どの方向から見てもそれなりに美しいですが、横や後ろからの見る身体のラインは、適度な肉付きや緩みもありやや熟女感が漂っています。
後半に「老女像」(2世紀)という老婆の全身の彫刻がありますが、ヴィーナスも年を取ることがあればああなるのかと思ってしまいました。
華奢な身体が好まれる現代のプロポーションと比較すると美の基準が少し違うのかと思い
豊満な女性の肖像画が多く描かれたルネサンス時代の豊かな体形まではいかないが、現代のスーパーモデルのような華奢な体形より健全で、このヴィーナスの少し高そうなBMIも含めて私は、好みかもしれません。
古代ローマ帝国
これまでヴィーナスのことばかり書きましたが、「古代ローマ帝国」に関するものも面白いです。
「ローマ」という地名のもとになった、ローマの建国神話に登場する軍神マルスの子である双子の兄弟ロムルスとレムスの兄のロムルスは、ローマを建国しロムルスの名前から「ローマ」になったとのことです。
この幼いロムルスとレムスが牝オオカミの母乳を飲んでいるとされたものが「カピトリーノの牝狼」(複製)で金貨など同じ表現の作品がほかにもありました。
二人は何故、狼の乳を飲んでいるのかといえば川に捨てられたところを寄ってきた牝狼に助けられたからです。
元気な男の子二人に乳を吸われるお母さん牝狼のは何か言いたげなちょっと困惑したような表情で神話とはいえ不思議な絵柄です。
どんなエピソードがあるのかこの神話がどんなものだったか機会があったら調べてみよう。
このほか、「コンスタンティヌス帝の巨像」(複製)も見どころで
ローマ帝国の皇帝「コンスタンティヌス帝の巨像」の一部を原寸大で複製した作品は、巨像の全長は断片の大きさから高さ12mはあったと推定され
迫力ある手足、頭部の複製を近くで見ると巨像は、奈良の大仏に匹敵する大きさなのかと想像します。
信仰の対象ではない一個人でこれだけ大きのある像が作られるコンスタンティヌス帝って余程の権力者なのかと調べると
「ローマ帝国の分裂、混乱を克服し専制君主政を確立し、キリスト教を公認した人」ということで全盛期は、「大帝」といわれる強大な力をふるったそうで納得
(特にキリスト教を普及させた役割は、歴史的に大きいです)
ネットも写真もない時代に皇帝の存在感を示すためにはきっとこういうものが必要で、皇帝の見た目や威厳を拡散する役割があったのでしょう。
ローマ美術
今展でローマ帝国時代の美術について思ったことが2つあります。
1つは、「プロパガンダ」としての美術の利用です。
権力を誇示するための巨象や戦勝の記念碑である「トラヤヌス帝記念柱」、英雄像としての大理石や石膏の肖像彫刻、権力者の肖像、ポートレート
当時の芸術は、政治的な指導者や著名な個人を称えるための表現手段でした。
純粋に芸術を追求したものもありますが、どちらかというと皇帝自身や軍事の勝利、政治的な出来事を称える等、その栄光を拡散する目的のプロパガンダとして美術を利用し帝国の統一と強大さを誇示したものが多いように思えましました。
もう一つは、古代ギリシャとローマの芸術って同じようだと思っていたことです。
似ているものが多いと感じるのは、ローマ美術は「ローマンコピー」と呼ばれるギリシャの美術品の模倣作品が多いからなのです。
実は、カピトリーノのヴィーナスもギリシャ時代にオリジナルがある模倣作品です。
カピトリーノのヴィーナスが古代ギリシャの作品だといっても信じてしまうほど私は、どちらがギリシャかローマか分かりません。
でも、美しさを理想化した端正なギリシャ彫刻と比べて実在する人物を描いた分どこか、人間臭さが感じられるような気がします。
ギリシャか、ローマか、ローマ時代に作られたギリシャのレプリカなのか当時の価値観や作られた目的を調べればもっと分かることがあるかもしれません。
しぼり菜リズム(まとめ)
ローマのカピトリーノ美術館の作品を主に展示した「永遠の都ローマ展」(東京都美術館)へ行きました。
カピトリーノ美術館は、皇シクストゥス4世によって1471年に設立され世界最古の一般市民向け美術館とされ教多くの古代彫刻や美術品を所蔵しています。
カピトリーノ美術館の目玉の一つは「カピトリーノのヴィーナス」(2世紀)でナポレオンの略奪以外カピトリーノ美術館を離れるのは、今回が初めてです。
ヴィーナスの優美な姿勢や裸体の表現は、「恥じらいのヴィーナス」といわれ奥ゆかしさを表しているように見えるけど「裸」であることを強調しているそうです。
ヴィーナスを見るとプロポーションなど時代における美の基準が反映されてるのだと思います。
展覧会では古代ローマ帝国の美術にも焦点が当てられており、美術は、巨大像、英雄像、肖像、戦勝の記録などプロパガンダの役割が強調されています。
ローマ美術は古代ギリシャ美術から多くの影響を受け、カピトリーノのヴィーナスなどローマンコピーといわれる古代ギリシャの作品の模倣作品が多く見られます。
でも、美しさを理想化した端正なギリシャ彫刻と比べて実在する人物を描いた分どこか、人間臭さが感じられるような気がします。
■永遠のローマ展
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- 東京都美術館
- 2023年9月16日(土)~12月10日(日)