エロイカより愛をこめて
40年ぶりにコミック『エロイカより愛をこめて』を読みました。
再読して、以前とは感じたことが違うことなどを書いています。
エロイカに出てくる登場人物にてついて続きの感想です。
40年ぶりに『エロイカより愛をこめて』を再読したら、少佐や伯爵の印象が違っていた
部長
少佐の上司である情報部長。
再読で、一番評価が変わったのがこの人かもしれない。
部長は、少佐に「あんた」呼ばわりされているけど私も勤め人を経験してみて分かったことは、ああ見えてなかなかの「タヌキ」で、実は、大物なだということです。
でないと、あんな型破りな少佐の上司は務まりませんからね。
暴れ馬である少佐を何だかんだで操っているし、人事部長、経理部長達との横の根回しも忘れず少佐や部下達にも気配り配慮をしています。
人当たりもよく、マフィアのボロボンテとも仲良くやっているというちゃっかりとした一面もある処世の持ち主で、SISのミスターLやの他国の諜報部要人など(大学の心理学の博士というのもいました)人脈も広いです。
部長止まりでそこから先に出世するような話もありませんが、意外と「政治力」があり上層部との調整にも長けて少佐がいくら無茶(高額経費と人使いの荒さ)をして組織の域を超えるようなことがあっても少佐の降格や左遷というのがないのは、この部長だったからなどと想像してしてしまいました。
部長は、人脈を利用した「極秘情報」を得ることもあり、本来は、切れ者なのだけど少佐を含めた沢山の部下をまとめなくてはならいので、「コーヒーに角砂糖を10個入れるほどの甘党」みたいなピエロを演じて部下を懐柔しているかもしれません。
また、部下を犠牲にするような非情な作戦は嫌う「温情派」で、少佐にも愛情を掛けているのが垣間見えるところが素敵できっと有能な秘書さん(※1)も部長には、一目置いているのだと思います。
※1:紅茶のポットとカップをあらかじめ温めるような少佐にも認めれている秘書さんです。
部下達
脱落するものも多い養成所でも選び抜かれたNATOのエリートなのだけど少佐の陰に隠れて目立たない26人の部下達は、少佐に「無能」呼ばわりされているものの世間一般から見れば極めて有能だと思います。
24時間臨戦態勢で動き回り、迅速に行動し、臨機応変に対処しなくてはならず、敵も味方も信用ならない世界でいつでも命の危険に晒されています。
そんな、スパイ稼業を何十年もやっていたらPTSD(心的外傷後ストレス障害)になるかローデのように暗くなるのが普通で、皆、よくやっていると思います。
きっと部下達誰もが、少佐を慕っていい関係を築いているから辛い任務もこなせるのだと思います。
部下A(アー)
部下の中でも素直で真面目な部下A(アー)は、ボーナム君と同じで同僚や部下にしたいタイプで親しみを持てます。
何げに少佐の行動を読み取って少佐のよき「女房役」として横並びの部下達との調整役にもなっています。
何よりも痛いも痒いも少佐のことをよく分かるようになってきたので、少佐もAを重宝して任務によく連れ出すようになりました。
人を安心させる少年のような容姿と少佐のようにいかにも「情報部員」らしくない物腰もAの取柄で、歴史や事件の水面下で動くことがスパイの本分と考えるならば、実は、Aのような人物こそ、情報部員として理想的なのではと思います。
部下B(ベー)
怠けものでサボり魔B(ベー)も、今、読めば情報部に欠かせない存在かなあと思いました。
人間関係の潤滑油になったり、斬新な発想をするBのような「働かないアリ」:例えば、『釣りバカ日誌』のはまちゃんみたいな人は、組織が「硬直化」しないためにいなくてはならないかと思いました。
ロレンスもそうかな。
真面目なドイツ人気質の中で楽天家のラテン系Bが、ときどき誰もが考えない発想をして功を奏することもあるのが面白かったです。
部下G(ゲー)、Z(ツェット)
「おかま」のG(ゲー)は、少佐や伯爵に恋心を抱いて途中からずっと「女装」しています。
Gが好きな少佐が中佐になって情報部を離れてたときは、「少佐のため」の化粧もしなくなり、すっぴん、髪ボサボサのサンダル履きでやさぐれて、まるで「はるな愛」が、「大西賢示」になってしまったみたいで可愛かったです。
「任務のためならナベ、カマも使う」情報部でのGは、おかまの印象しかなかったけれど、女性に変装してナイスな仕事も結構しているのだなあと。
露出嫌悪症でなかなか脱いでくれないので、服の上から「骨格美」を想像するしかない少佐に代わって(『Z』での)Z(ツェット)は、よく脱いでくれ「肉体美」を堪能することが出来たのが嬉しかったです。
今も昔も母性本能をくすぐるZの「…寒かったからです…」のお相手女性が今、読むと美人なのだけどどうも役不足で、もっと魅力的な子だったらその「寒かった」のセリフも生きてきたなどと思ってしまいました。
エロイカは、「少女漫画」なのに老人やおじさん達の男性陣があまりにも魅力的で、どうも女性の影が薄いのです。
その他部下達
部下A、B、G、Z以外は、皆どんぐりの背比べ状態で「モブ」として埋もれていますが、たまに頭一つ出るのが、ペルシャ語とアラビア語が堪能でトルコに行ったHと部下Lとか、情報部の番頭役として少佐と行動を共にするようになったAに変わって、Bとバディ組むようになったCとかその他、DとかEくらいか。
(マルタ島で、猫好きで地味なNの活躍というのもあった。)
それにしても部下達は、ミーシャの部下と同じように「宮仕え」で苦労する職業人として共鳴する部分も多く、機会があるならば彼らとの愚痴飲み会など参加して仕事の愚痴など聞いてみたいものだと思いました。
白クマ
読み直して、案外、素敵だなあと思ったのがKGBの「白クマ」です。
白クマって、ロマンスグレーで仕立てのいいスーツがよく似合う岡田真澄のようなダンディなおじさまだけど初期の頃は、コードネームのような風体で全然、記憶になかったです。
白クマは直情径行で頭に血が上りやすいミーシャと違って、「冷静沈着」で周りをよく見ています。
怒髪天を突く少佐やミーシャは、精神年齢が低い子どもみたいなところがありますが白クマは、もうちょっと「分別」ある大人かなあと。
でも、少佐が描いたヘタ過ぎる似顔絵に怒って会場を出て行ったり、少佐のお尻蹴っ飛ばす白クマも普段は、紳士然としているが、昔は、やんちゃしていたのだろうとか想像出来て、可愛かったです。
(まあ、あの温厚な白クマが足蹴りするとは白クマにとって、少佐は悪戯坊主みたいなものなのかと)
やはり物語で白クマといえば、ミーシャとのさりげないやり取りや友情を感じさせる会話が何とも言えずいいですね。
40年ぶりに『エロイカより愛をこめて』を再読したら、少佐や伯爵の印象が違っていたNO3