父は、胃がんの手術で「胃の切除」(2/3)を行って、15年ほど経っていますが現在までに色々な影響が出ています。
一般的に胃を切除した場合に出る影響は、ダンピング症候群、貧血、栄養障害、骨粗しょう症、逆流性食道炎などです。
胃の切除による影響
ダンピング症候群
本来、胃は、食物と胃液を混ぜて粥状にし、食物を貯めて徐々に小腸に送り出す働きます。しかし、胃を切除後、摂取した食べ物が急速に小腸に流入して「ダンピング症候群」を起こします。
ダンピング症候群の主な症状は、動悸、めまい、冷汗、全身倦怠感などです。また、食べ物が腸に移動し、短時間で吸収されるので一時的に高血糖になります。
これに反応してインスリンがたくさん分泌され、逆に低血糖を起こします。食後2、3時間経って、頭痛や倦怠感、冷汗、めまい、手指の震えなどが現れます。
貧血
父は、血液検査をすると必ず貧血と結果が出ます。これは胃の切除により、鉄分やビタミンB12が吸収されにくくなるために「貧血」が起こりやすくなるからです。
逆流性食道炎
胃の手術を受けると、胃の入口にある噴門(ふんもん)の働きが失われ、胃液や十二指腸液が逆流してきて、「逆流性食道炎」を起こしやすくなります。
父も数年前から逆流性食道炎と診断されているので、食事をした後はすぐに横にならないようにしています。
栄養障害
胃がないことでたんぱく質や脂肪の吸収力が低下、鉄分やビタミンB12の吸収力が低下します。
体のたんぱく質が減ってむくむが出たり、体重減少、貧血など「栄養不足」の症状がみられます。
骨粗しょう症
胃を切除したことにより、カルシウムの吸収が悪くなり「骨粗しょう症」になりやすくなります。父は、骨粗しょう症と診断されて、肋骨骨折や胸椎骨折を80代でしています。
腸閉塞(ちょうへいそく)
胃の切除など開腹手術直後に癒着による腸のねじれが原因で「腸閉塞」を起こすことがあります。
父は、大腸がんの手術をした後に腸閉塞を患っていて、このときは大変苦しかったそうです。
現在の影響
父は、胃の切除を行って15年ほど経ちますが、現在も大きな影響が出ています。
胃ろうが出来ない
父は、口から物が食べられない「嚥下障害」になりました。
一般的には、口から栄養を摂れない人が生きていくための胃に穴を開けてチューブで栄養を入れる「胃ろう」が選択されますが胃を切除した父は胃ろうが出来ませんでした。
胃ろうの替わりに敗血症のリスクのある「中心静脈栄養」や本人負担の大きい「経鼻栄養」をやむなくしました。
下痢や便秘
父の場合、胃の手術をしてから「下痢」や「便秘」に悩まされることが多くなりました。
現在も経鼻栄養の栄養に濃度を上げると下痢になりやすくなるので、様子を見ながら栄養分を入れています。同時に便秘にも悩まされて、定期的に浣腸をしていています。
誤嚥性肺炎になった
現在父は、鼻から管を入れて胃まで栄養を入れる経鼻栄養をしています。栄養を流しているときに嘔吐して、それが肺に入り「誤嚥性肺炎」になりました。
主治医は、胃を切除して胃の容量が小さいことや胃や腸を手術して胃腸が弱いことも影響しているかもしれないと言っていました。
誤嚥性肺炎になってからは、経鼻栄養を1日2回(朝夕)から3回(朝昼夕)に分けて時間を掛け胃への負担が少ないよう行っています。
栄養を摂った後は、すぐに横にならずに頭をしばらくギャッチアップして胃からの逆流を防ぐようにしています。
しぼり菜リズム
「胃は食物をいったん貯めて、消化液を出して撹拌しながらすりつぶし、少しずつ腸に送り出す」働きをしている臓器です。
「胃」がないことでこの働きが出来ず、色々な症状が出てしまいます。
父は「胃がん」から生還して頂いた命ですが、胃を切除したことにより15年が経っても後遺症だらけでQOLが悪いです。
胃を切除したことで当時は、数十年後に「胃ろう」が出来ないことで栄養摂取に苦労するとは想像出来ませんでした。父を見ていて「胃」の重要性を再認識しました。