経鼻栄養になった父
最近、父は鼻から管を入れて栄養を摂る「経鼻栄養」を試験的にやっていますが、以前のように下痢をすることがなくなりました。
【中心静脈栄養】で、「敗血症」になった父。経鼻栄養にうまく、移行出来るといいのだけれど…
このように胃腸の状態が、安定しているので「中心静脈栄養」を止めて、経鼻栄養を8割、口から食べて栄養を摂ることを2割で行うようになったのです。
父はこの2つで、必要な栄養を摂れるようになりました。この状態が続けば、感染症のリスクの大きい中心静脈栄養から脱却できるかもしれません。
口から食べる
今まで、嚥下訓練として、お楽しみ程度に甘い味のゼリーととろみのあるお茶を飲んでいました。
父は、甘い味のゼリーが飽きたというので、ST(言語聴覚士)に、もし可能であればゼリー以外のもの(甘くないおかず系のもの)もメニューに加えて欲しいと頼んでみました。
それから、父の状態を考慮してゼリーを中心に重湯やほうれん草や鶏肉などのペースト食もときどき加わるようになりました。
このように父の願いを受け入れて、食べさせてくれた医師や看護師、STの方々にはとても感謝しています。
通常、医療現場では、「嚥下内視鏡」や「嚥下造影検査」の画像診断の結果で重い嚥下障害があると絶食になります。
父も検査結果が悪く、ゼリーととろみのあるお茶以外はダメでした。検査にパスしないと食べさせてもらえないのは、やはり誤嚥性肺炎で亡くなるリスクがあるからです。
医師が、リスクを回避することを最優先すれば、なかなか口から食べさせてはもえらえないのです。それを「食べる」ことにGOサインを出してくれたことは、病院の患者、家族ファーストの対応にほかならないと思います。
「覚醒もよく、発熱もなく、痰がほとんどない。ベットから離れて過ごす時間もあり、本人が食べたい意思があれば食べられるようになる可能性がある。」
とNPO法人「口から食べる幸せを守る会」理事長の小山珠美さんは言います。小山さんは、「食べる」リハビリを重視して積極的に取り入れて患者を救う活動をされています。
嚥下リハビリの専門看護師でもある小山さんは、嚥下障害による絶食で、みすみす命を失っていく患者を多く看てきました。半面、食べること、食べるリハビリで劇的に回復した患者もたくさん看てきた経験があります。
食べることで体力がつけば、リハビリによる機能の向上も効果的に上がります。結果、嚥下機能もよくなり、口から食べることで元気になることは可能だと経験上、小山さんは力強く言います。
完全側臥位法による食事
父の場合、まだ飲み込みが悪く、痰も多いのですが、誤嚥性肺炎や窒息のリスクが少ない安全な方法で食べさせてもらっています。肺炎や窒息を防ぎながら栄養を摂る方法です。
その方法で、重要なのは摂食姿勢です。「完全側臥位法」という福村直毅医師(健和会病院健和会総合リハビリテーションセンター長)が普及している摂食姿勢の1つです。
【完全側臥位法による食事方法】
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従来の摂食姿勢は、上半身を後方に傾けて誤嚥の危険を減らす座位などでした。この姿勢では嚥下障害が重症な人はうまく食べられないことが多かったのです。
完全側臥位法では、喉の空間を完全に横に向けるので、食べ物を安全に溜められる空間が生まれます。
一般的な座位ではすぐに食べ物が喉にあふれ、その一部は声門を通って気道に流入してしまいます。完全側臥位法では、重力の働きで喉の片側にその3倍もの量を溜めることが出来ます。
食べ物は、声門を通ることなく、喉の片側だけを誤嚥することなく通過します。たまたまこの記事を新聞で知り、病院でもやっている方法と分かったので父に完全側臥位法での食事を頼みました。
また、シリンジ(注射器)を使って口の奥まで、食べ物を流し込む方法を在宅でされている方がいたので、父が在宅になったときの食事介助では、この方が楽ではないかとSTに聞いてみました。
シリンジを使うのは、舌の動きが弱い人の場合で父の場合は、舌の動きは悪くないのでスプーンでも十分大丈夫とのことでした。
父は、飲み込むときに右側の方が飲み込みがいいということで右側に食べ物が流れていくように右肩を下にした姿勢(右側臥位)にしています。
この姿勢でも誤嚥のリスクは0%ではありません。でも、誤嚥性肺炎や窒息のリスクを恐れて食べなければ栄養障害になります。
しぼり菜リズム
父は、今まで絶食状態の中で2度の「看取り」を打診されました。
絶食から脱却して、より安全な方法で「口から食べる」ことに思いを託し、生きる可能性を模索しています。
このまま、胃腸の状態が安定していれば生活の質も考えて、積極的に口から食べることをあきらめずに命を永らえてくれればと思います。