85歳の母は改めて「情報収集力」が凄く、侮れないと思いました。
母は家族や友人以外に新聞とテレビ、ラジオくらいからしか情報を得られていない「情報弱者」だと思っていました。
母の乳がんを通して、最高の医療を受けるためには、患者自身が行動を起こすことが必要だと痛感した
情報弱者だと思っていた母が…
母は、パソコンもスマホも持っていませんし使うことも出来ません。なので母の場合、情報源はほとんど人を介したものです。
社交的な母の情報の引き出しは、毎朝の公園での健康体操、近くのカラオケスナック、町会(老人会)、近所の人との立ち話などです。
父が地域の中核病院に入院しているときは、その病院の情報をすぐに集めてきました。病院の看護師の対応に悩んでいた母は、そのことをカラオケなどで話したそうです。
病院によって看護師の「質」が違う。科によっても違うのか、ICUでは「鬼」対応も
そうしたら、この病院は地域でも評判がよくなく、そこの院長が「どケチ」で有名だと聞いてきました。院長が、職員にろくな給料を払っていないので、いい看護師は他に行ってしまうとのことでした。
これを教えてくれたのは、「コミュニティー」のボス的な存在の人です。地域のことにとても精通しています。
その人は、院長と喧嘩したこともあったそうでこの病院は、行かない方がいいとうレベルだということも分かりました。
父の介護に関しても、同じような経験をしている人から話を聞いてきます。「在宅介護」や「胃ろう」を家族に経験のある人からの話です。
まず胃ろうは、止めた方がいいということでした。在宅介護も訪問ヘルパーの対応が適当なので、結局、家族が大変。家に帰っても、「誤嚥性肺炎」になって、また入院したという話も仕入れてきます。
母は、その人の家族構成や年齢、家庭事情などもわかっているので参考になるようです。最近では、妹の同級生の義理のお姉さんが、交通事故で亡くなったというのをどこからか聞いてきました。
その家族の状況もよく知っています。隣県に住む妹は、そのことは知りません。私の同級生やその家族の情報も母は、私より早く知っていたりします。
地域の人のことをよく知っている「情報集屋」、「伝書鳩」はどこにでも必ずいると思います。結構、母はそんな人とうまく繋がりがあって情報を得ているようなのです。
情報収集に大切なのは、案外リアルなコミュニティーであるのかもしれません。母の場合、地元のコミュニティーを上手く使い「生の情報」を得ているのです。
ネットがなかった時代は、このように人を介して、情報を得ることが当たり前だったような気がします。最近はあまり見かけませんが「井戸端会議」で、ご近所さんの様子が分かったりします。
昨日も井戸端会議で、お隣さんの両親の亡くなった病院がどこかということを聞いてきました。
母は、『食べログ』とは違う地域の良心的なお店の情報も知っていたりします。母はそんなところから、実に確かな情報を得ているのです。
あらゆる知識をネットに頼りがちな私は、近所に誰が住んでいるのかさえよく知りません。母は、私が思ったほど情報弱者ではないのかもしれません。
ネットが、情報源の私の方が情報弱者かも
私は、主に「ネット」で色々な情報を得ています。まずは、知りたいこと分からないことがあればネットで検索します。
座っていて楽に情報が得られることが出来ますが、膨大な情報で溢れかえり、溺れそうになります。本当に得たい情報に行き着くまでに寄り道をしてしまうこともよくあります。
情報にたどり着くまで、案外、時間が掛かるのです。しかも信用できない情報も氾濫しているので、その中から真実を取捨選択しないとなりません。
母は、分からないことがあるとすぐに人にたずねます。人に聞いて分からないことも多いのですが、「プラスα」の情報やお得な情報が得られることもあります。
入院中の父の前開きの肌着(マジックテープで止めるシャツ)を病院の近くで、買うことになりました。
私は、ネットで調べて買いましたが、別の日に母は、地元の商店の人に聞いて同じシャツを買いました。
私が、福祉用品を扱う店で買ったシャツ1枚の値段と同じ値段で、母は2枚買っていました。
母は、商店街の人に安い衣料品店を教えてもらっていたのです。ネットでは、わからない情報ですよね。ネットを駆使して情報を探したつもりでいたのが、生活に根差したものでなかったのです。
案外、母より私の方が、情報弱者なのかもしれません。
母の情報には、欠点もある
地域のコミュニティーから主に情報を得ている母ですが、そんな母の情報にも欠点があります。
母のもうひとつの情報源は、新聞の、週刊誌の記事の紹介の部分です。
情報を鵜呑みにする母は、例えば『週刊文春』の広告の「誤嚥性肺炎は食べながら治す」「絶食はダメ 9割は、食べた方がよくなる」という先出文を見て、「お父さんは絶食しているけど、食べた方がいい」となります。
同じ文春の「貴乃花はクスリをやってるみたいに異様と吹聴していた池坊保子」では、貴乃花がクスリをやっていると伝わってきます。
こんな風なので、自分の解釈と事実が違うことが母の話にある可能性もあります。また人の名前や地名などの固有名詞をすぐ忘れるのです。
例えば「小豆沢(あずさわ)病院」が、翌日には「小沢(おざわ)病院」になります。そして、いつの間にか「オズ(小津?)病院」となっています。
また人を介した情報の欠点は、口コミなので「尾ひれ」が付いたり、話が大きくなったり、本人の感情が入るため都合の悪い話はしなかったりします。
また、母の情報は自身のテリトリーの半径1㎞くらいの情報に限られます。それ以上、広い範囲となると全く分からなくなるのです。
母の情報力に陰りも
以前は、育成のボランティア、地域の集会場の仕事もやっていて「諜報部員」になったら活躍しそうなほど地域に密着した情報を集めてきました。
最近は年齢とともに活動範囲が、狭くなりました。同年代の知人も施設に入ったり、病気になったり、亡くなったりして少なくなっています。
そのため、情報も以前ほど集まらなくなり、母の情報収集力に陰りが見えるようになりました。
しぼり菜リズム
実家に帰り母の地域の話しを聞くことは、楽しみの1つです。
情報収集の場は、愚痴を言い合い、ストレス発散もしているようで母にとって社交の場にもなっているので、母が動けるうちは、地元の情報を集めて欲しいと思います。