「嚥下(えんげ)」とは、の飲み込むことをさす言葉です。
この嚥下機能が低下し、口からうまく食べられない状態を「嚥下障害」と言います。
これは、身近で深刻な問題だと嚥下障害のある父を見て思いました。
高齢になるほど嚥下障害を抱えるリスクが多くなります。
「人工栄養」を余儀なくされた父は、「胃ろう」ではなく「中心静脈栄養」で生きながらえる
嚥下機能の低下は、窒息を起こしやすく「誤嚥性肺炎」を引き起こす原因になっています。
肺炎は、日本人の死因の第3位だそうで、高齢者にとって命に関わる重大な病気です。
のど仏を上下させる筋肉が衰えるとなる
嚥下障害は、主に食べた物をのみ込む力が衰えることでなります。
口から物を食べたとき、咀嚼した食べ物を「ごっくん」とのみ込むと喉ぼとけが上がり、食べ物は一気に食道へ流れ込みます。
これが「嚥下反射」です。
そのとき、気道の入り口(声門)は、一瞬にして蓋(喉頭蓋・こうとうがい)で閉じられます。飲食物が肺に入らないようにするためです。
この喉頭蓋の「蓋(ふた)」がうまく閉まらなくなると気管や肺に食べたものが入ってしまいます。
喉頭の蓋が閉まりにくいというのは、加齢の影響もあります。
加齢で「のど仏」を上下させる筋肉の力が落ちて、のど仏が下がってくることも関係しています。のど仏の筋肉が衰えるとのど仏が下がり、反射神経が落ちます。
のど仏を上下させている筋肉の力も衰えるためタイミングよく喉の蓋が閉まらなくなります。気管にきっちりと蓋がされなくなるのです。
【参考にした本】
『嚥下障害のことがよくわかる本』藤島一郎監修 講談社
全身状態の悪化でもなる
父は、脳腫瘍の手術前は、食欲もあり口から食べていました。
病院で、食べかけの食事を下げられてしまったことに「(魚を)食べたかった」と怒っていました。
不自由な右手で、魚を食べていたので時間を掛かり、食べ残したと思われたようなのです。食べ物に執着していたこの頃は、目に見えた嚥下機能の衰えはありませんでした。ベットで飴が舐めたいとか、チョコレートが食べたいと母にねだっていたようなのです。
手術後は、しばらく「絶食状態」が続き、急激に食べる力が衰えていったように思われます。
病気や治療で安静、絶食が続くと食べる力が急速に衰えることがあります。
本来、使うべき機能を使わないと機能低下が進みます。
全身状態に影響する事態が起きると嚥下障害も起きやすいということで、体に大きな負担が掛かる手術の影響も否めません。
食べないので、栄養不足になり体力が低下し、全身状態が悪化していくという悪循環もあります。
栄養不足による体力や筋力の低下がさらに嚥下機能の低下させてしまったのです。
このように嚥下機能の低下には、全身の状態も影響します。
体力や免疫力、体全体の筋肉量の低下などでも嚥下障害は起こるのです。
嚥下障害が、始まっているかも
気管にきっちりと蓋が閉まらないことで起きる嚥下障害ですが、普通に食べている、食べられていると思っても嚥下機能の低下が始まっているかもしれないのです。
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などが嚥下機能が低下してきたサインです。
父は、入院する前から食べこぼしが多くなっていました。徐々に嚥下機能が低下していたのかもしれません。
以前、義母は食事中、食べた物でよくむせていました。
これも嚥下機能が低下して、気管に食べ物が入ってしまったのだと思います。
実は、私も食事中ときどきむせることがあります。
唾液が飲み込みにくいこともあり、すでに嚥下障害が始まっているかと思います。嚥下機能の低下は、40代から始まるのです。
簡単に嚥下の状態を調べる方法は、30秒間つばの飲み込みを繰り返し、飲み込めた回数を数えることです。
30秒間でごくんと出来ない、1~2回しか出来ないなど飲み込みに苦労するようでは、嚥下機能の低下が疑われます。
しぼり菜リズム
誤嚥性肺炎を起こす嚥下機能の低下は、加齢とともに始まっています。
食事のときにむせることが、多くなった。食べると胸が詰まる気がする。身に覚えのあるあなたは、「嚥下障害」がすでに始まっているかもしれません。
父のように加齢に加えて、病気による体力や免疫力の低下、筋肉量の低下が嚥下機能の低下に拍車を掛けることもあります。
嚥下機能の低下で、口から食べる楽しみが奪われないようにまずは、自分で嚥下の状態を知ることが大事だと思いました。