氷河期展
「特別展 氷河期展 ~人類が見た4万年前の世界~」(国立科学博物館)に行きました。
常設館は、夏休みで中学や小学校の生徒や児童が沢山いたが、特別展は、平日の午前に行ったので、比較的空いていてゆったり見ることが出来ました。
科博は、前回行った古代DNA展で日本人の祖先について興味を持ったので、今回のクロマニョン人とネアンデルタール人の実物の頭骨が展示があるというので楽しみにしていました。
私の祖先は、縄文人?弥生人?「古代DNA展 日本人がきた道」
この日も連日続く猛暑の1日でしたが、実は、今も氷河期なんですよ
氷河期といっても、寒冷な「氷期」と比較的温暖な「間氷期」が繰り返して、現在は温暖な間氷期
だから氷河期は、雪と氷だけの極寒の世界だけでないのです。
今回は、現在よりもはるかに寒かった氷河期に焦点を当て、絶滅したマンモスやオオツノジカ、ホラアナグマなどの動物や当時生きていたネアンデルタール人とクロマニョン人がどのように暮らしていたか、氷河期時代の日本についても展示しています。
ネアンデルタール人 vs クロマニョン人
氷河期展で一番興味があったのが、氷河期に生きていたネアンデルタール人とクロマニョン人です。
特にネアンデルタール人とクロマニョン人の頭骨(本物)がフランスの博物館から来日して日本初公開
ネアンデルタール人とクロマニョン人の頭骨を並べての展示は史上初ので、これは見に行く価値があります。
展覧会では、氷河期を生きていたネアンデルタール人とクロマニョン人(を含む私達ホモ・サピエンス)の両者の解剖学的な違いや身体構造や生存戦略の違いを比べ、何故、片方は絶滅しもう一方が残ったのかという問いアンサーに肉迫しています。
まず、ネアンデルタール人とクロマニョン人、どちらが滅んだかというと「ネアンデルタール人」です。
そのネアンデルタール人についての展示から
ネアンデルタール人

ネアンデルタール人(ラ・フェラシー1号) パリ国立自然史博物館
1909年にフランス・ラ・フェラシー岩陰遺跡で発見されたネアンデルタール人の頭骨
残っている歯が犬歯より細長い動物の歯のように見え、現代人と比べて堅いものを食べていたので顎が発達し歯の数も多いです。

ネアンデルタール人の復元模型 パリ国立自然史博物館
CT スキャンによるネアンデルタール人の復元模型で、がっしりした体格と強靭な筋肉を持ち大型動物を狩猟して厳しい環境を生き抜いていました。
ただ、ネアンデルタール人は、クロマニョン人よりも前にヨーロッパに居住していた人類ですが約4万年前までに絶滅したと考えられています。
クロマニョン人

クロマニョン人(クロマニョン1号) パリ国立自然史博物館
一方、クロマニョン人は、フランスのクロマニョン遺跡で初めて発見されたことからこの名前が付けられ約4万~1万年前にヨーロッパに居住していた現生人類(ホモ・サピエンス)の化石人類の一種で、クロマニョン人の遺伝子はその後の世代に引き継がれ、現代ヨーロッパ〜西アジア〜北アフリカの住民の一部となっていきます。
(クロマニョン人は、消滅したのではなく進化したのです)
何が両者の命運を分けたのか

クロマニョン人の復元模型 パリ国立自然史博物館
復元模型で見ると氷河期という厳しい環境で生き抜くためにクロマニョン人は、寒冷地適応の動物の皮をなめして防寒具を作って着ています。
(ネアンデルタールは、上半身ほぼ裸で衣服も簡易なものですよね)
また、クロマニョン人は、火を積極的に利用し狩猟用と解体用で異なる石器を使い分けたり骨で作った縫い針などを作り筋肉の少なさを手先の器用さでカバーしていていました。

ネアンデルタール人の作った針
特に素晴らしいのは、骨や角、牙で作った「縫針」で、糸を通す穴まであるのです。
縫い針は、身体にフィットし保温性の高い衣服を仕立てたり、重ね着をして寒さから身を守ることに役立ち(狩りや漁労にも役立ったかな?)、いづれは編んで布を作るという行為に発展するように人類が、原始的な営みから進化していくためのテクノロジーだったに違いありません。
(人類にとって、「縫う」という手段を獲得したことは画期的なことだった)
小さいけどこういう道具ひとつあるないで、生死を分けたり生活の質が変わるのだと思います。
石器も

クロマニョン人の石器
↑の背付き石器のように石刃を潰すような加工が施さしたことで槍先やナイフとして使うことが出来たり、動物の皮の加工に使う掻器や骨の彫刻に用いた彫器など多様な道具が石刃から生み出されました。
道具の種類が増えたことで人々の行動範囲も広がったのです。

ネアンデルタール人の石器
槍の柄を整える道具か縄を作る道具だったとされる(穴空き棒)の先端部には、クロマニョン人と関りの深い動物の模様や幾何学模様の入っているものもあり装飾的、芸術的な表現までしていたのです。

ネアンデルタール人の石器
比べてネアンデルタール人の石器は、石ころにちょっと細工して少し尖られた簡単なもの
でも、ルヴァロア尖頭器のように1個大きな石のかけらから同じような形の尖った石や作りたい石を想定して取り出せる技を得てより多くの多種類の石器を効率的、計画的に作ることが可能になり、これはこれでとっても凄いことです。
(ネアンデルタール人の筋肉量は、クロマニョン人より30%も多く力持ちなんだけど石器を比べるとほぼ石ころに手を加えたのような単純な作りに見えてしまい、これだけではクロマニョン人に負けてしまうのだなあと)
実物頭骨を横並びで展示し、それぞれの復元模型を見比べたり石器を展示して道具や技術の進化を比べ解剖学的、文化的違いを解説していまが、古資料や展示品だけでなくさらにWikipediaやAI による概要などでネアンデルタール人の滅亡原因について自分なりに調べると
- 頭骨や復元模型では分からなかった解剖学的に喉仏の位置が高く、気道が狭かったため現生人類のように自由に言葉を操ることは難しかった。
- 現生人類に比べて人口規模が小さく集団も孤立していたため、近親婚により遺伝的疾患や環境変化に対する抵抗力が弱くなり絶滅のリスクが高まった。
- 小さな集団で生活していたと推測され獲物や資源を巡る競争で現生人類(ホモ・サピエンス)との競争で劣勢
- 最後の氷河期の気候変動で、寒冷な地域に適応していたネアンデルタール人は、気候が温暖化すると彼らが狩猟していた獲物や生活環境が変化し適応が難しくなった。(急激な気候変動は、食料資源の枯渇や居住地の喪失につながり生存を脅かした)
の記述があります。
ということで、ネアンデルタール人は環境や人口、競争の三重苦に見舞われて絶滅 、吸収されていったことが想像されます。

埋葬儀礼をしていた証拠のクロマニョン人のネックレス
滅びたネアンデルタール人と違いロマニョン人は、高度なネットワークを持ち石器や骨器を製作し埋葬の習慣もあり洞窟壁画や彫刻などの芸術作品も残しているように進んだ文化を持っていました。
また、多様な遺伝子で拡大し人口動態に柔軟に対応し現代人へとつながったと考えられています。
マッチョなネアンデルタール人に比べて、クロマニョン人は、比較的ほっそりした体格だったけど技術や文化を身に着け孤立を避け、戦略的に生き延びてきた様子が伺え、このことから私達が生きる上で何かヒントになるものがありそうです。
とまあネアンデルタール人とクロマニョン人を比べて、横道にそれながらも存続を分けた原因など展覧会が投げかけた問いを深追いしたくなった次第です。
で、氷河期に生きた動物や氷河期の日本については続きとなります。
日本初!ネアンデルタール人とクロマニョン人の本物の頭骨が見れる「氷河期展 」へ行きました。その2へ