素描展
「スウェーデン国立美術館 素描コレクション展」(国立西洋美術館)に行きました。
素描といえば、地味、制作途中、練習、下絵というイメージで絵画展に行っても素通りしてしまうこともあります。
素描だけじっくり見ることは少なかったですが、ロートレックの即興感のあるデッサンを見てから素描にも少し興味が湧きました。
卓越した線描の力・「ロートレック展 時をつかむ線」に行きました。
今回は、素描が主役の展覧会なので、いつもは二の次になってしまう素描をじっくりと見れるいい機会です。
北欧最大級の美術館であるスウェーデン国立美術館のルネサンス〜バロック期の約50万点の素描のうち約80点が展示され、素描だけを集めた貴重な展覧会です。
(素描作品は光や湿度に非常に敏感なため、まとまった海外素描コレクションの日本公開は極めて貴重だそうです)

素描の画材・木炭
まずは、素描について
「素描は、いわゆるデッサンやドローイングとも呼ばれ、木炭やチョーク、ペンなどを用いて描かれる線描中心の平面作品で、絵画や彫刻などの構想を練るための下絵や完成作品の記録として制作されることもありますが、素描自体が完成作品となることもあります。」
(参照「スウェーデン国立美術館 素描コレクション展」パンフレット等)
会場に入った途端、照明が暗めだなあと思いましたが目が慣れてくると見にくいこともないです。
(明る過ぎるより見やすいかも)

会場は、あまり人気がないのか比較的空いて、観覧者が展示作品に近づき過ぎないようにするための観覧ラインや保護柵もなかったので作品に顔を近づけて見れ、小さい作品も細部までじっくり鑑賞出来ました。
(大きな絵もないし色鮮やかな絵もなく、紙に近寄って見ないと魅力が分からない作品が多い)
スウェーデン国立美術館 素描コレクション

「後ろから見た男性の頭部」フェデリコ・バロッチ
黒・赤・白のチョークで、用い肌の微妙な陰影や質感を表現
モデルを前にして描いた習作だと思われますが、構図の練習や光の捉え方を研究たのかな
まるでその場にいたような手の動きがありのまま感じられ、臨場感があります。

「画家ルドヴィーコ・カルディ(チゴリ)の肖像」アンニーバレ・カラッチ 1604 ~09年頃
赤・褐色チョークと黒インクで描かれた素描をしている「素描」だけど、人物の輪郭や質感、明暗などほぼ線だけでここまで表現出来る素描はあなどれません。

「女庭師」ジャック・ベランジュ
素描は、表現のアウトプットかな
ペンによるデッサンで、繊細な陰影表現が美しいです。

「紅海渡渉」セバスティアンブ・ルドン
躍動感とライブ感がありますね
全般的に油彩画と違い紙に描かれているので、インクや水彩による紙の撓みなども見れるのも素描の魅力です。

「ヘレネを伴い遁走するパリス」ルートヴィヒ・レフィンガー
作者の思考過程や試行錯誤の跡が直接的に感じられ、数百年の時を経て、作者の息遣いまで感じられます。

「眠る犬」コルネリス・フィッセル 17世紀半ば頃
はA5くらいの大きさだけどこれは、もう完成品ですね
(小さいから、かなり接近して見ると)
犬の体温や息遣いまで伝わってくるような柔らかさは、素描ならでは
目を覚ましたらむっくりと起き上がってくるようです。
素描って絵を練習するためだけのものではないのですね

「キリスト捕縛」レンブラント・ファン・レイン
光と影の画家レンブラントの素描
油絵の習作として即興的に描かれた感じだけど「光」の表現が素描でも巧みです。
筆致の速さと力強さ、構図による緊迫感も伝わり、さすがレンブラント御大!

「アランデル伯爵の家臣、ロビン」ペーテル・パウル・ルーベンス 1620年
こちらもバロック美術を代表するルーベンスの素描

「アランデル伯爵の家臣、ロビン」は、↑「アレシア・タルボット、アランデル伯爵夫人」の習作で、従者ロビン(右)の素描です。
衣装に比べて頭部がやや簡略化されているのは、衣装の準備素材として描かれたから
上着は、茶色、靴下は黄色、靴は黒…と衣装の色や素材についてメモも記されて
「名品は、一夜にしてならず」
不朽の名画もこうした地道な作業あってこそ完成されるのだなあと、美術史の巨匠も少し身近な存在に感じました。
このほか大スターでは、ドイツ・ルネサンス期の巨匠デューラーの素描もあり偉大な芸術家は卓越した素描家でもあるのだと納得し、機会があったら彼らの油彩画も見たいです。

「テッシン邸大広間の天井のためのデザイン」ルネ・ショヴォー
地味地味な作品群の中で、色鮮やかで比較的派手目なのがこれ
テッシン邸の天井に用いるためのデザインとして描かれたものだけど素描なのかと思う程、水彩と金泥を使っているので豪華で、繊細に細部まで描き込まれてた描写は、これだけでも立派な完成品です。

「テッシン邸大広間の天井のためのデザイン」部分
描かれている人物は、芸術の神や芸術家達だそうです。
素描は、地味地味だけど細かい筆のタッチがよく見れたり、筆跡・修正跡が生々しく残ったものもあります。
また、描線から制作の生の軌跡を読み取れ、画家の思考と技が線の運びに凝縮されていて油彩画とは異なる魅力を持っていると思いました。
これからは、素描作品があったらもっと積極的に見たいと思いました。
今回は、幸いなことに空いていたので1点1点じっくり接近して見れたので、かなり素描の魅力に迫れたのではないかと思います。
(観客の少ない展覧会は本当に贅沢です)
しぼリズム菜リズム(まとめ)
「スウェーデン国立美術館 素描コレクション展」(国立西洋美術館)に行きました。
会場は、あまり人気がないのか比較的空いて、作品に顔を近づけて見れ、小さい作品も細部までじっくり鑑賞出来ました。
素描は、絵を練習するためだけのものではなく完成品もあり、それだけで立派な芸術作品として鑑賞出来ます。
素描は、地味地味だけど細かい筆のタッチがよく見れたり、筆跡・修正跡が生々しく残ったものもあり、描線から制作の生の軌跡を読み取れ、画家の思考と技が線の運びに凝縮されていて油彩画とは異なる魅力を持っていると思いました。
レンブラント、ルーベンス、デューラーの素描もあり偉大な芸術家は卓越した素描家でもあると思いました。
■スウェーデン国立美術館 素描コレクション展
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- 会場:国立西洋美術館
- 会期:2025年7月1日(火)〜9月28日(日)