(「10の最大物」1907年)
ヒルマ・アフ・クリント展
女性画家ヒルマ・アフ・クリント(1862~1944年)は、全く聞いたことがない芸術家だったが、美術館に置いてあった彩色の美しいパンフレットで興味を持ち「ヒルマ・アフ・クリント展」(国立近代美術館)へ行きました。
今回は、ほとんどの作品が写真撮影可能だったので、章ごとに撮った写真で紹介していきたいと思います。
1章

「花と木を見ることについて、無題」1922年
精神世界を描いているのか、このような抽象的な絵を見ると何を描いているか分かりにくいが

「夏の風景」1888年
初期の正統的な美術教育を受けた後は、職業画家として「夏の風景」のような風景画や肖像画を描いていました。

「スケッチ 子どもたちのいる農場(「てんとう虫のマリア」)」
植物画や児童書や医学書の挿画も初期に描いていていて、具象的なこの頃の絵は何を描いているのか分かりやすいく植物を描いた水彩画数点は、デッサン力があり繊細な描写は私の好みです。
後に植物や人体がモチーフらしき作品が描かれるのは、この時期描いたものが影響しているように思います。
が、年代を追うと表現が抽象的になっていきます。
2章
どうして、ヒルマ・アフ・クリントが抽象的な絵を描くようになったかというの見ると
10代の頃から「スピリチュアリズム」に関心があり彼女の思想や表現を形成決定づける要因となったというのが分かります。

「5人 無題」1908年
「5人 無題」は、「5人 (De Fem)」 というグループの親しい4人の女性達との交霊術で高次の霊的存在からメッセージを受け取り描いたもので、霊的存在からのメッセージを視覚化するとこんな抽象的な絵になるのかなあと
私には、意味不明だけど波線の連なりが続くシンプルなものから、植物、細胞、天体など具体的なモチーフもあり見ていて楽しいです。
3章
さらに眼に見えない実在を知覚化していったのが、全193点からなる「神殿のための絵画」です。

「原初の混沌、WU/薔薇シリーズ、グループII」
青の補色である黄色の組み合わせは、単純にポスターのようにデザイン性があります。
ちなみにアフ・クリントは象徴的な色使い(色そのものが意味を持つ)をしていて、青は、女性性で黄色は、男性性としています。

「エロス・シリーズ、WU /薔薇シリーズ、グループII、No. 5」 1907年
花びらや四つ葉のクローバーのような植物由来の装飾的モティーフにアフ・クリントが、緻密なボタニカル・アートを描いていることを思い出しました。

「10の最大物」1907年
アフ・クリントは、人生の4つの段階(幼年期、青年期、成人期、老年期)を「楽園のように美しい10枚の絵画」で制作する啓示を受けて描いた「10の最大物」は、高さは3メートル超の大きさで、10点並ぶと壮観で見応えがあります。
(この部屋は、パワースポットのようで、パワーが頂けるような気がします)

「10の最大物」1907年
描画ルーラーで描くような幾何学模様が可愛い
中央のピンクの絵が「老年期」だが、桃やお尻、花びらを連想させ輪廻転生で再び「幼年期」に戻っていくように見えました。

「知恵の樹、知恵の樹、W シリーズ」1913~1915年
水彩画の作品で、白と黒の鳥から黒い鳥が、4枚目になると美しく色がついた鳥になり、とても意味深長です。

「白鳥、SUWシリーズ、グループIX: パート1」1914年
「白鳥」シリーズは、具象的な白鳥が抽象的、幾何学的形状に変化して最後に再び具象性に回帰するプロセスが全24点で表現されます。

「白鳥、SUWシリーズ」
上下シンメトリーな描き方
こんな抽象的な絵をカンディンスキーやモンドリアンより早く描いていたなんて、彼女こそ「抽象画の元祖」かもしれません。

「白鳥、SUW シリーズ、グループIX:パートI、No. 1」1914~15年
10点展示されている中で白鳥が描かれているのは2点だけで、これが一番分かりやすかった。

「祭壇画グループX」1915年
「神殿のための絵画」の集大成なのかな、ピラミッドの頂点に太陽のような円が描かれ神殿の祭壇に見えます。
(ここでもパワーを頂きました)
4章・5章

「原子シリーズ、No. 10」1917年
「神殿のための絵画」を経た後の水彩画の絵具の滲みを生かしたような作品で、後半は枯れたようなパワーダウン?したような作品が多かったです。
1920年代半ば以降は、制作とともに自身の思想や表現についての記録の改訂作業をしながら制作活動を体系的に残すことに費やしたようです。
正直に告白すれば、解説を読んでも結局、よく分かりにくくスピリチュアな思想やテーマが理解しにくかったです。
それでも彼女のスタイルや、その芸術の美しさを感じることは出来たと思います。
スウェーデン出身だからか、北欧のテキスタイルのような美しさもあり色彩のセンスは好みのものです。
全体的に彼女の絵から神秘性や(時代を超えた)普遍性が感じられるのは、神智学やスピリチュアリズムに傾倒しており、作品は「霊的な存在からの啓示によって描かれた」とされるからであろうか
性別、宗教、芸術の境界を超えた表現やこの頃まだ誰もしていない抽象的な表現は、自身も先進的過ぎると感じていたようで、死後20年間は作品の公表を禁じて自身の作品を理解してくれるであろう未来の私達に託して亡くなったという彼女の気持ちがよく分かります。
特に彼女の存在や抽象的な表現は「美術史を書き直す」ほどのものなるかもしれないとあったが、それが実現しそうなインパクトがある展覧会でした。
しぼり菜リズム(まとめ)

「ヒルマ・アフ・クリント展」(国立近代美術館)へ行きました。
全体的に彼女の絵から神秘性や普遍性が感じられるのは、神智学やスピリチュアリズムに傾倒しており、作品は「霊的な存在からの啓示によって描かれた」とされるからであろうか
特に彼女の存在や抽象的な表現は「美術史を書き直す」ほどのものなるかもしれないとあったが、それが実現しそうなインパクトがある展覧会でした。
■ヒルマ・アフ・クリント展
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- 会場:東京国立近代美術館
- 会期:2025年3月4日(火)~6月15日(日)