(銀座松屋の正面の「ミッフィー」の顔)
ミッフィー
ミッフィーが好きで、LINEの絵文字や冷蔵庫のマグネットに使っていますが、ミッフィーのことちゃんと知っているかといえばそうでもなく、絵本も大人になってから手に取ったくらいなので実は、知らないことが多いのです。
「誕生70周年記念 ミッフィー展」(松屋銀座)に行って、ミッフィーは、ふるさとオランダでは「「ナインチェ・プラウス」」(うさちゃん)で、「ミッフィー」という呼び名は英語での呼び名(ナインチェを英語に訳した呼び名が「ミッフィー(miffy)」)だということを知りました。
「キティ」のようなキャラクター名だと思っていたので以外です。
子どもの頃は、「ナインチェ」(うさちゃん)を日本語訳で「うさこちゃん」と素敵な呼び名に名付けた翻訳者の石井桃子『ノンちゃん雲に乗る』の方が馴染がありました。
ミッフィーが好きになってたのは、かなり大人になってからです。
某金融機関の通帳の表紙がミッフィーで、たいして増えない残高より表紙のミッフィーにいつも癒されてからです。
「(あんな単純な)ミッフィーが、可愛いのは何故?」
ってよく思うのだけど単純に「可愛い」は生理的なもので理屈はいらないけど、この展覧会でミッフィーの可愛さの秘密が少し分かった気がしました。
キティは、子ども向けの可愛いらしさだけでなくて、色々なファッションブランドと相性がよくて大人も魅了するお洒落なアイテムに大化けするけどミッフィーには永遠の子ども向けの愛玩的な可愛らしさがあります。
シンプルな線と色使いで描かれミッフィーは、余計なものは排除したミニマムさ飽きのこない単純さがいい
この頃は、「無人島に1冊」は、ミッフィーの絵本でもいいと思い始めているくらいで、ミッフィーを日がな見ていても飽きないのも魅力の一つです。
(ずっと見ていると愛情ホルモン・オキシトシンが出てくるような)

そういえば、キティは口がないけど口が「×」になっているミッフィーの表情もキティと同じ無表情です。
これ、顔をシンプルに表現するために鼻と口の部分を「×」で表現したそうですが、実際のウサギも鼻と口がバッテンに見えるからアリですが
それ以上に嬉しい、悲しい、怖い、楽しいなどそのときの気まぐれな自分の感情に寄り添って受け入れてくれるための大事なパーツになっていて、ミッフィーに表情を与えないことで不思議と救われたりするのです。
(でも、この「×」がときどきチョビ髭に見えて、心の中でクスリと笑ってしまうのだが)
とここまでは、今まで感じてきたことで展覧会に行って改めて「可愛い+α」のミッフィーの魅力に触れることが出来ました。
ミッフィー展
会場の原画を近くで見るとミッフィーの輪郭線はところどころ微妙な滲みみたいなものがあってそれがいい味になっています。
会場のVTRの動画で作者のディック・ブルーナ(以下、「ブルーナさん」)がミッフィーの顔描いているシーンがあり、それを見ると一気呵成に輪郭線を引いているのではなく少しづつゆっくり丁寧に点と点をつなぐように描いていることが分かり、だから少し震えるようなラインになります。
このブルーナさんの震える線は「心臓の鼓動」と自ら言っており、一糸乱れぬ線よりも温もりある表現になっています。
ただ、シンプルな顔の輪郭は、簡単そうだけど自分で描いてみると少しでも上下左右にズレたりすればいびつな形になってしまうほど実は難しいのです。
誕生から70年、ミッフィーの絵やフィギュアが年代ごとに並んでいいるのを見るとミッフィーの変化するフォルムが分かります。
一番最初の絵本『ちいさなうさこちゃん』では、両耳にそれぞれ角度があり方角もあっこっち向いて長さも短く今とはだいぶ違うミッフィーです。
それから、初期の丸みを帯びていた耳の先が段々と尖ってきて顔も下膨れた輪郭になりさらに、再び耳の先が丸くなり顔も奇麗な丸になって今のミッフィーになります。
(各年代並べて見ると1960年70年代の下膨れのミッフィーが好きかな)
ミッフィーが魅力的なのは、物語の中で使われる色です。
ミッフィーは基本無表情ですが、ブルーナさんが編み出した「ブルーナ・カラー」と呼ばれる独自の色を背景に使い読み手が感情を想像出来るように描かれていて(例えば「赤」は、喜びや楽しさ「青」は悲しみや静けさなど)色の効果を生かしています。
こだわり抜いた赤・黄・緑・青・茶・灰の6色のブルーナ・カラーは、オレンジがかった赤や、少し濁った青などどれも、大好きな色で絵本に効果的に使われるだけではなくとってもセンスがいい
(ブルーナさんは、グラフィックデザイナーでもあるので「ブラック・ベア」シリーズのポスターもセンスが光り、色のセレクトも素敵)
そして、シンプルで子どもでも真似出来る色なので、いつも子ども目線で物語を作るブルーナさんの人間的な温かさも感じます。
ブルーナ・カラーは、色の魔術師マティスの色と同じくらい好みの色で、初期の絵本は、絵の具で背景や洋服の色を塗っていたが、途中から色紙を切り抜いて張り付けるマテイスの「切り紙絵」を彷彿とするような切り絵の手法に変わっていきます。
(ブルナーさんは、若い頃にマテイスに影響を受けているのです)
マティスが辿り着いたのが、切り紙絵・『マティス 自由なフォルム』を見て

ブルーナ・カラーでも特に「緑」が好きで、この緑の洋服を着た子が「たれみみくん(タレ耳君)」で今回「たれみみくん」の原画がたくさんありました。
「たれみみくん」は、文字通り耳が垂れているからそう呼ばれていますが、私は今まで、単純に耳が自在に上下出来て、耳を動かして「そうだね」とか意思表示しているかと思いLINEの絵文字でもそんな場面で使っていました。

でも、そうではなくて転校生の「たれみみくん」はあだ名で、片方の耳が垂れているから「たれみみくん」で、ちゃんとした名前もあります。
皆と容姿が違う「たれみみくん」の名前とエピソードを今回初めて知り、こうなったら絵本をちゃんと読まなくてはと『うさこちゃんとたれみみくん』『うさこちゃんのだいすきな おばあちゃん』(まつおかきょうこ訳 福音館書店)を図書館で借りて読みました。

絵本では、皆とは違う色の子や、片耳だけ垂れている子を登場させ子どもでも分かりやすいように「多様性」という課題や大切な家族の「死」を描いていてただ可愛いだけのお話ではないということが分かりました。
(16cm×16cm の絵本は、子どもでも手に取りやすい大きさで近くにあるとつい手に取ってしまいます)
展覧会で誘発され絵本も読んで可愛さの裏には、6色だけを使いつつシンプルな線だけどしっかり計算されて、難しいテーマもリズムある言葉や詩のような短い文で誰にでも分かりやすく表現され作者ブルーナさんの深い思いがあることが分かります。
今までは、生理的に可愛いから好きだったけどそれだけではない魅力を知ってさらにミッフィーの世界が好きになりました。
(でも、可愛い!)
日時指定の予約制で入場制限しているので、デパートの狭い会場だったけどストレスがない程度に見ることが出来ました。
平日だったけど親子連れもいて、男の子(幼児)が子どもでも手が届く位置にある小窓の中のミッフィーの絵を自分で窓を開けて嬉しそうに見ている姿が印象的でした。

シャーペンとロルバーンのリングノートの生誕70周年オリジナル文具
グッツは、入場時に配布した購入するためのチケットがないと購入出来ません。
しぼリズム菜リズム(まとめ)

(このメインビュジュアルのミッフィー達の絵は、『うさこちゃんとたれみみくん』の素敵なストーリーのクライマックスのシーンです)
「誕生70周年記念 ミッフィー展」(松屋銀座)に行きました。
年代ごとのミッフィーのフォルム違いや輪郭の描き方、ブルーナ・カラーの魅力を知ったほか、、皆とは違う色の子や、片耳だけ垂れている子を登場させ子どもでも分かりやすいように「多様性」という課題を描いていてただ可愛いだけのお話ではないということが分かりました。
展覧会に行き同時に絵本を手に取って生理的に可愛いから好きだったけどそれだけではない魅力を知りさらにミッフィーの世界が好きになりました。
■誕生70周年記念 ミッフィー展
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- 会場:松屋銀座8階イベントスクエア(東京都中央区銀座3-6-1)
- 会期:2025年4月23日(水)~5月12日(月)