特別展「旧嵯峨御所 大覚寺-百花繚乱 御所ゆかりの絵画-」(東京国立博物館)へ行きました。
大覚寺展
東博の正面の噴水広場にはチューリップが咲いて、一足早い春の訪れを感じました。
国立博物館の表慶館で行われているキティ展は並んでいましたが、平成館のの大覚寺展は並ばずすぐに入ることが出来ました。
神護寺や浄瑠璃寺、智積院、中尊寺、六波羅蜜寺など年一度程度開催される著名なお寺の名宝を見るのが好きで足を運んでいますが、今回も楽しみにしていました。
まず、お寺の「大覚寺」ですが
行ったことあるのか記憶になく、大きな池(大沢池)のある大きなお寺というのが記憶の片隅にある(雑誌やテレビなどの何かの媒体で見たのか?)のでもしかしたら行ったのかもしれません。
大覚寺は、京都真言宗大覚寺派の本山で平安時代嵯峨天皇が建立した離宮嵯峨院が前身の代々天皇もしくは皇統が門跡を務めた格式高い寺院です。
展覧会は、ふたつの「五大明王像」や国宝「後宇多天皇宸翰 弘法大師伝」、刀剣ゲームファン垂涎の「鬼切丸」「薄緑」の太刀が同時に展示されるという見所が多い展覧会ですが、今回は、大覚寺宸殿と正寝殿の障壁画が印象に残ったのでその感想など書きたいと思います。
障壁画
大覚寺伽藍の中心の「宸殿(しんでん)」と「正寝殿(しょうしんでん)」の内部を飾る123面もの障壁画(襖絵や障子絵)(前後期で展示替えあり)を一挙に公開する展示です。
最初にあったこの松の絵は、作者が書いていなかったが真ん中に存在感のある松がど~んとありいかにも狩野派らしい大樹の描き方です。
同じスペースにあったのは、正寝殿の屋内縁側の障子の腰板に描かれた19羽の野兎
この「野兎図」は、12歳で大覚寺に入った卯年生まれの門跡寛深を慰めるために渡辺始興が描いたものと伝えられ兎も細い葉っぱもリズミカルに配置されて、見ていると気持ちが和みます。
兎の絵は、きっと12歳と年端も行かない寛深の慰みになってであろう
ただ近くで見ると目が赤い兎や妙にリアルなウサギもいて、好き嫌いの好みが分かれそうです。
第4章の大覚寺の一角がそのままやってきたようなこの部屋は?
門跡の居室である正寝殿の中で最も各式が高い執務室「御冠(おかんむり)の間」を原寸大に再現したスペースで、御冠の間を飾るのは狩野山楽の「山水図」(16〜17世紀)です。
水墨画の山水図は、画題の中でも格式が高く「御冠の間」という最上位の部屋を飾るのに相応しく、部屋の奥半分が一段高くなっていてそこに畳を敷いて御座所として、脇には冠を置く冠台が置かれています。
(周りを囲む襖絵が煌びやかな蒔絵ではなく落ち着いた水墨画だから、襟を正して正座して執務に集中出来そうですね)
襖の奥の「剣璽(けんじ)の間」には三種の神器が保管されていたとも言われています。
こちらは、メイン会場で宸殿の最も重要な部屋を飾る狩野山楽の障壁画を中心としたものです。
狩野山楽(1559~1635年)の代表作「牡丹図」は、大覚寺の宸殿で最も大きな部屋「牡丹の間」を飾る18面の襖絵で、総延長22mに及びます。
お寺はお寺のよさもあるけど、広々とした展覧会場の壁に横一列並べられているのはとても見やすく一面の「牡丹図」の横や対面にも襖絵を展示し天井から襖絵のレプリカがいくつも下げられる凝った演出で、こういった展示は、博物館ならではで気持ちが踊ります。
ただガラスのケーズの中の展示なので写真を撮るとバックの風景が写り込んだり真近で見れなかったり、贅沢だけどガラス越しでない生の絵が見れたらよかったのになあと思いました。
視野に飛び込んで来るのは、金地の背景に一面に咲き乱れる牡丹の花々
狩野山楽の「牡丹図」は、劣化が進んでいない当時、もっと煌びやかでまるで極楽浄土にいるようなこの空間(「牡丹の間」)を演出し部屋に居るだけで気分や運気が上がったことでしょう。
狩野永徳しかり狩野派が得意としたのは金箔を使った「金碧(きんぺき)障壁画」は、いかにも権力者や富裕層が好みそうなものです。
(ただ居室として使うならば私は、「御冠の間」の地味な「山水図」の方が落ち着きますね)
襖絵のある宸殿は、1620年に後水尾天皇に入内した徳川秀忠の娘・和子(まさこ)の女御御所を後に移築したものと伝えられています。
正寝殿の「松鶴図」は、松の樹上で子育てをするつがいの鶴と生まれたばかりのヒナを描き、「大樹」は将軍の異称であることから徳川将軍の庇護の下で後水尾天皇と和子が子宝に恵まれるように願った画題と考えられているそうです。
この梅のピンクの表現が好みです。
がっつりと装飾的な絵もいいけれど写実と装飾がほどよいこのような絵は心落ち着きます。
山楽のこの大樹の描き方は、国宝展で見た師である狩野永徳の「檜図屏風」(東京国立博物館蔵)のような存在感のある表現と通じるものがあります。
そういう意味でこの水墨画「松鷹図」の松も柔らかな筆使いだけど永徳の「檜図屏風」に似ています。
金箔の襖絵は、智積院の長谷川等伯の「楓図」が好きだが、これだけ豪華な襖絵が贅沢に並べられた光景もまた魅力的です。
大覚寺の襖絵でぐるっと周囲を囲む画期的な展示会場の真ん中にソファーが置かれ圧巻の大パノラマのような絵が椅子に座りながら眺められるようになっていて、人が少なければゆっくりと座って絵を眺めたかったです。
(会場内は人が多く人で、襖絵がよく見えないため断念)
しぼり菜リズム(まとめ)
特別展「旧嵯峨御所 大覚寺-百花繚乱 御所ゆかりの絵画-」(東京国立博物館)へ行きました。
大覚寺は天皇家とも縁の深い京都を代表する名刹で、大覚寺伽藍の中心の「宸殿(しんでん)」と「正寝殿(しょうしんでん)」の内部を飾る123面もの障壁画(襖絵や障子絵)の会場が圧巻で狩野山楽の代表作「牡丹図」は、大覚寺の宸殿で最も大きな部屋「牡丹の間」を飾る18面の襖絵で、総延長22mに及びます。
山楽の「紅白倍図」「松鷹図」の大樹の描き方は、師である狩野永徳の「檜図屏風」のような存在感のある表現と通じるものがあります。
大覚寺の襖絵でぐるっと周囲を囲む展示空間会場の真ん中にソファーが置かれ座って圧巻の大パノラマのような絵が眺められるようになっていて、人が少なければゆっくりと座って絵を眺めたかったです。
■開創1150年記念 特別展「旧嵯峨御所 大覚寺―百花繚乱 御所ゆかりの絵画―」
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- 会場:東京国立博物館
- 会期:2025年1月21日(火)~3月16日(日)