「すみだ北斎美術館」に行きました。
すみだ北斎美術館
墨田区立「すみだ北斎美術館」は、大江戸線・両国駅から徒歩約5分の所にある浮世絵師葛飾北斎と北斎の関連したの作品に特化した美術館です。
公園に隣接した美術館の外観は、アルミニウムのような光沢のある素材で作られていて4方向から入れるようにスリットが入っているというモダンな造り
スリットは、場所によってはガラス張りとなっているため、館内の様子が見える他、内部へ光を届け逆に内部からは、公園や街並み、さらにはスカイツリーが見える仕掛けになっています。
建物自体が、アートな造りなのは、建築家・妹島和世によるものだからです。
人気なのでしょう、妹島和世&西沢立衛のSANAAや隈研吾の公共施設の建造物は、最近、多いですね。
葛飾北斎が生涯のほとんどを過ごしたと言われる東京都墨田区
北斎生誕の地のそばに建つのが、すみだ北斎美術館です。
同館では、北斎やその門人の作品を幅広く所蔵しその数約1,900点
墨田区が収集した作品に加え、北斎に生涯を捧げたピーター・モースの旧蔵品や楢﨑宗重コレクションなど主に3つのコレクションで構成されています。
北斎サムライ画伝
葛飾北斎とその一門の作品を収集しているすみだ北斎美術館では、管内所蔵作品を中心にテーマに合わせた企画展を行い収蔵作品を順次公開しています。
今回の企画展は、「武士」をテーマにした作品を展示した特別展『北斎サムライ画伝』です。
サムライだなんて、外国人観光客向けの企画かと思いましたが、実際にあった戦いや物語の戦いの場面を描いたものや風景画でもお侍さんが描かれていたりどちらかというと日本人向けのもので、外国人の姿も会場内ではほぼ見掛けませんでした。
北斎の作品は、子どもの頃、永谷園のお茶づけに入っていた「東海道五拾三次カード」を好んで集めていたので、武士の戦いのようなものより波とか滝とか富士山の風景や自然を描いたものが好みで、テーマが「サムライ」だと知っていたら訪れなかったかもしれません。
(実は、所用で近くに行ったついでに立ち寄ったので、何の情報も得ていなかった)
90代まで生きた北斎の長い画業では、「武士=サムライ」を多く描いています。
サムライといっても日常的に江戸市中で目にするサムライ、江戸時代に起こった事件(「仮名手本忠臣蔵 十一段目」)、江戸時代の名の知れたサムライ
戦のない平和な江戸時代に生きたので、江戸時代だけではなく過去に実際にあった戦いや物語の中の戦う場面、源頼朝や徳川家康などの武将や刀や槍といった戦いの道具などサムライにまつわる作品があり、北斎の門人達が描いたものも展示されています。
サムライが、テーマの中に私の好きな「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」があったので不思議に思いよく見ると
「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」と並べて北斎と同じ「波の文様」を配した同じ江戸時代の刀(「刀 銘 津田越前守助広/延宝九年八月日」)が展示されていていました。
「北斎の波」と「刃文の波」という共通の主題に「刀=サムライ」と企画展の主旨に沿うよう上手く料理していて、同時に刀剣は、刀剣博物館から借りたもので知名度も高いこの名品をいかに展示するかというキュレーターの苦労が偲ばれます。
私としては、以前見た大英博物館のものとこの美術館のものと好きな絵が何度も見れたので大満足です。
展示会場は、写真撮影禁止だったのでサントリー美術館(大英博物館蔵)の錦絵の写真を載せました。
これは、錦絵(多色摺の浮世絵版画)で、江戸時代に8000枚ほど刷られましたが、現存するものは200点ほどです。
後で知りましたが、それぞれ摺りや色味が異なるそうで、今回展示のものと大英博物館の「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」と比べても薄暗い会場では、違いは分からなかったと思います。
入口に「サムライ総選挙」というパネルがあって、出品作品のうち12点から好きなサムライに投票するというもので
1位は、「『絵本武蔵鐙』下 那須の与市宗高 扇の的のほまれ」で、那須与一の「扇の的」のエピソードを描いたもので、描かれたのは、馬の上から遠くに見える平氏方の船上にたてられた扇の的を射る様子です。
(その弓は、小さな的に見事的中し敵からも味方からも賞賛されます)
投票しませんでしたが私は、参勤交代の行列の「冨嶽三十六景 従千住花街眺望ノ不二」がよかったです。
那須与一や源為朝など戦いのものは好みではないものの鎧兜甲冑の細部まで細密で、馬の毛並み、人の顔や体の表現、描き込んだ背景は素晴らしいです。
肉体表現が素晴らしいのは、「北斎漫画」↑にもあるようにこんな風に常に研究していたからでしょうか
表情豊かな人間や動物、模様のデザインも様々な絵を沢山描いたから生まれたものだと思います。
「70歳以前に描いた絵はとるに足らないもので、73歳にしてようやく動植物の骨格や出生を描けるようになった」
「80歳でさらに上達し、90歳で絵の奥義を極め、100歳で神妙の域に達し、百数十歳になれば一点一画が生きているようになるだろう」
という北斎の言葉があるように北斎は、寝食を忘れるほど絵に生きた人で、生涯3万点を超える絵を描いています。
半紙本など擦りものが多いけど北斎はこんな↑鮮やかな色使いや細やかな筆使いの「肉筆画」(北斎展・サントリー美術館にて撮影)も描いていて、今回の展覧会の同じ滝沢馬琴の『椿説弓張月』(北斎挿絵)でも白黒の半紙本だったのでやはり肉筆画は見応えがあります。
(絵師が、筆を用いて自ら描くのが肉筆画)
この大英博物館蔵が所蔵している貴重な肉筆画「鎮西八郎為朝図」も本来は、この美術館にあって然るべきかと思いました。
この美術館の企画展で肉筆画の展示があったらまた、見に行こうかな
ちなみに『椿説弓張月』は、北斎の挿絵が重要な役割果たして人気を博し、『北斎漫画』も当時ベストセラーになり、北斎が現代に生きたならミリオンセラー作家として巨万の富を築いたことでしょう。
(でも、宵越しの金を持たなそうな人なので、無理かな)
サムライを配した「東海道五十三次」や「富嶽三十六景」もあり、一の谷の戦いを描いた「浮世絵一の谷合戦坂落之図 」の断崖を騎馬が連なってかけ降りている様子や弁慶の7つ道具や武勇伝で知られる弁慶のくすぐったそうな表情がユーモラスな「美人と弁慶の耳かき」など予想に反して、楽しむことが出来ました。
常設展
企画展を見てから常設展を見ました。
浮世絵師「葛飾北斎」を中心に、浮世絵とはどのようなものなのかを鑑賞しながら時代を追って学べるのが常設展で、こちらかを見てから企画展を見ればよかったと思いました。
こちらは、企画展とは違い外国人観光客が半分以上を占め、そんなインバウンド対応として作品の説明はタッチパネル式のモニターで日本語・英語・中国語で表示されるようになっています。
常設展示場では年代ごとの作品のレプリカが並べられ、北斎の作風が変化していく様子が分かります。
浮世絵は光に弱くデリケートなので、レプリカの展示になるのだけど本物が展示された企画展は、そのデリケートさ故、撮影禁止だったのでしょう
北斎の絵は、構図が大胆のように見えるが、コンパスや定規で描いたような幾何学に基づくものもあり緻密で計算されている
色彩の配色も考え抜かれているなど新たな発見がありました。
そして、漠然としか知らなかった浮世絵の工程ですが、「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」を例にしてどのようにして作られるかを解説した展示コーナーがありそこで、「摺りの工程」を知ることが出来ます。
作品の完成までには、「版元」「絵師」「彫師」「摺師(すりし)」という専門家がいて各パーツを担当します。
版木の絵柄が彫られている部分に絵具をのせ版木ごとに摺り、「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」の場合、輪郭のメインとなる「主版」と何枚かの「色版」摺り最後に波の色を重ね、計6回摺って、1枚の浮世絵が完成
色のズレやムラもなく、波しぶきが舞い上がる瞬間が浮き上がります。
この版画で特に難しいのが、富士山の背景が黒のグラデーションになっている部分で、「ぼかし」という技術によるもので、ここの匙加減が職人の腕の見せ所なのでしょうか
こうして、版画による浮世絵が数多く擦られますが、実は、北斎、大衆向けの版画より肉筆画や摺物などオーダーメイドの一点ものが多いとのことで意外に思いました。
しぼり菜リズム(まとめ)
「すみだ北斎美術館」に行きました。
墨田区立「すみだ北斎美術館」は、浮世絵師葛飾北斎と北斎の関連したの作品に特化した美術館でスリットを入れたモダンな建物は、建築家の妹島和世によるものです。
葛飾北斎が生涯のほとんどを過ごしたと言われる東京都墨田区で、北斎生誕の地のそばに建つのが、すみだ北斎美術館です。
企画展「北斎サムライ画伝」では、「武士」をテーマにした作品を展示
日常的に江戸市中で目にするサムライ、江戸時代に起こった事件(「仮名手本忠臣蔵 十一段目」)、江戸時代の名の知れたサムライや過去に実際にあった戦いや物語の中の戦う場面、源頼朝や徳川家康などの武将や刀や槍といった戦いの道具などサムライにまつわる作品があり、北斎の門人達が描いたものも展示されています。
那須与一や源為朝など戦いのものは鎧兜甲冑の細部まで細密で、馬の毛並み、人の顔や体の表現、描き込んだ背景は素晴らしく肉体表現などは、「北斎漫画」にあるように常に研究していたからでしょう。
サムライを配した「東海道五十三次」や「富嶽三十六景」もあり一の谷の戦いを描いた「浮世絵一の谷合戦坂落之図 」の断崖を騎馬が連なってかけ降りている様子や弁慶の7つ道具や武勇伝で知られる弁慶のくすぐったそうな表情がユーモラスな「美人と弁慶の耳かき」など楽しむことが出来ました。
常設展では、浮世絵師「葛飾北斎」を中心に、浮世絵とはどのようなものなのかを鑑賞しながら時代を追って学べ年代ごとの作品のレプリカが並べられ、北斎の作風が変化していく様子が分かります。
「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」を例にして摺りの工程」を展示されているコーナーで、版画がどんなものかが学べます。
■北斎サムライ画伝
- すみだ北斎美術館
- 2023年12月14日(木) 〜 2月25日(日)