(セミの幼虫と冬虫夏草をモチーフにした作品「祈り」 大竹亮峯 2019年)
「超絶技巧、未来へ! 明治工芸とそのDNA」(三井記念美術館)へ行きました。
平日だったけど、結構人が多く作品を並んで見るので、見終わるまで時間が掛りました。
福田亨の「吸水」にびっりさせられました。
まず、蝶の羽の色は、素材の異なる木材を組み合わせているもので色は着けていないとのことです。
蝶の羽なんか自然な風合いです。
そして、水滴部分は何と「木」で出来ていて台座の板を掘り浮き出た部分を磨き込んで、水滴のツヤを表現していてさらに驚きました。
「Amrita」は、レースで編んだ袋や白いパーツは、糸やビーズでなく陶磁で作られているそうでよく見ても分からないくらいな繊細さでどうやって作ったのか気になります。
何か月も練習して納得がいくサイズでパーツを作ることが出来るようになってから制作を開始
小さな粘土の粒をテグスに通してつなげた後に焼き上げするという工程で、気の遠くなるような繊細な作業なのでしょう。
まるで、レースの布のような質感の上、自由自在に形を変えることが出来るというのも超絶技巧の極みです。
木彫りで出来た「月光」の月下美人は、展覧会場では、花が開いた状態でしたが普段は花が閉じていて裏にある花器に水を注ぐとゆっくりと花が開く仕掛けになっているそうです。
(場内のVTRでその様子を見ました)
自然界のものをモチーフとし、作品によっては木や鹿の角を透けるまで細く薄く彫って制作していて花弁には鹿角を使用しています。
これも、大竹亮峯の作品で関節の複雑な動きを再現指が自在に動きます。
彼の人体や昆虫、草花の木彫による自在作品は、生命力を感じさます。
元プロボクサーという異色の経歴の持ち主の木彫作家・前原冬樹の「『一刻』スルメに茶碗」は、上の鎖から下の足先まで、一本の角材から削り出されていて成型し油絵具で着色しています。
これが、全部木だいうのもびっくりですが、スルメを止めているクリップやチェーンも1本の木から彫り出しているのは神業です。
噛めば噛むほど味が出るようなこのスルメが置いてあったら思わず炙ってしまうだろう
罪作りだ。
こちらもリアル過ぎて、皮だと思ってはめようとしたら「木製」だったなんて…
これも1本の木から彫り出した「一木造り」です。
茶道金工家の家系を継ぐ金工作家の長谷川清吉は、尾張徳川家御用鍔(つば)師の家系の4代目
家業と同時に鍔(つば)の加工技術を活かし使い捨てられる爪楊枝や梱包材、包装などを彫金で制作しています。
「使い捨ての工業製品」をモチーフにしたアート作品という着眼点がいいです。
きっと、100年後もこれだったら残ってますね。
吉田泰一郎の銅を基本にリン青銅、銀メッキ、七宝を駆使した巨大なです。
もう一匹の「三毛猫」(2021年)も毛並みや表情まで見事に表現され
ワンちゃんは、吠えられそうで怖いけど猫ちゃんは、思わず頭を撫でたくなりました。
(でも、機敏そうな猫だったのですぐに逃げられそう)
小坂学は、ケント紙によるペーパークラフトで細密な工業製品を制作します。
精巧で本物そっくり、実物大?
このスニーカーも履けるようね、きっと。
実際に親に買ってもらえず食べたかったものや欲しかったもの、思い出の品を作品にしていて
この神の手があれば「欲しいもの」「思い出のモノ」全て作ってしまうことが出来るのではないかと思われ、私は、頭の中で妄想することしか出来ないので羨ましいです。
ガラスアーティスト・青木美歌の細胞や微生物といったミクロの世界をガラスで表現した作品です。
ガラステーブルの下へと伸びる植物の根のようなガラス細工の繊細さ、上に伸びていく有機的なものは生き物を思わせどんなテクニックを使っているのだろうか
照明に浮かび上がるガラスと床に落ちた影が印象的で、全体的に宇宙空間に浮いているように見えます。
青木美歌は、2022年に41歳で亡くなっていてこれからの作品を見られないのは残念ですが、彼女のガラス作品には自身の魂が宿っていてそれは、永遠に残るでしょう。
明治工芸
一木造りでサクランボやイチジク、タケノコといった自然物を制作する岩崎努の作品は、明治工芸の安藤緑山の象牙彫刻と並べて展示
明治工芸の伝統的技法を受け継ぎながら新しいものを作っていいくというDNAが受け継がれていているようです。
明治工芸も57点展示され、今では、再現不可能な工芸品も多いです。
明治時代工芸品は、日本趣味の装飾ということで欧米向けの土産物として美術的価値は低かったそうですが「東京国立近代美術館70周年記念展 重要文化財の秘密」(国立東京近代美術館)の作品を見ても、漆工、七宝、木彫、陶磁器、刺繍絵画など超絶技巧のものばかりです。
現代の作家は、SNSなどで発信していたり取材した記事がありどんな風に作ったかとかエピソードが分かりそんなものを読んで見るのも面白く、若い作家がこれからどんな作品を作っていくか楽しみです。
人気の展覧会で、ここに紹介されていない作品も素晴らしく、それぞれの個展があったら行きたいくらいです。
将来的に人工知能や3Dプリンターなど進化して誰でも精巧なものを作れるようになるのでしょうが、やはり一から丹精込めた作った作り手の魂が感じられる作品は格別です。
しぼり菜リズム(まとめ)
「超絶技巧、未来へ! 明治工芸とそのDNA」(三井記念美術館)へ行きました。
福田亨の「吸水」は、蝶の羽の色は、素材の異なる木材を組み合わせているもので着色なし、水滴部分は「木」で出来ていて台座の板を掘り浮き出た部分を磨き込んで水滴のツヤを表現していて驚きました
「Amrita」稲崎栄利子は、レースで編んだ袋や白いパーツは、糸やビーズでなく陶磁で作られていてまるで、レースの布のような質感の上、自由自在に形を変えることが出来るというのも超絶技巧の極みです。
「月光」大竹亮峯の月下美人は、展覧会場では、花が開いた状態でしたが普段は花が閉じていて裏にある花器に水を注ぐとゆっくりと花が開く仕掛けになっていて彼の人体や昆虫、草花の木彫による自在作品は、生命力を感じさます。
「『一刻』スルメに茶碗」前原冬樹は、上の鎖から下の足先まで、一本の角材から削り出されていて成型し油絵具で着色、全部木だいうのもびっくりですが、スルメを止めているクリップやチェーンも1本の木から彫り出しているのは神業です。
長谷川清吉の「真鍮製 爪楊枝」など鍔(つば)の加工技術を活かし使い捨てられる爪楊枝や梱包材、包装などを彫金で制作し、「使い捨ての工業製品」をモチーフにしたアート作品という着眼点がいいです。
「夜霧の犬」吉田泰一郎の銅を基本にリン青銅、銀メッキ、七宝を駆使した巨大毛並みや表情まで見事に表現されています。
小坂学は、ケント紙によるペーパークラフトで細密な工業製品を制作精巧で本物そっくりで欲しかったもの、思い出の品を作品にしていてその才能、羨ましいです。
ガラスアーティスト・青木美歌の細胞や微生物といったミクロの世界をガラスで表現した「あなたと私の間に」は、照明に浮かび上がるガラスと床に落ちた影が印象的で、全体的に宇宙空間に浮いているように見えます。
一木造りでサクランボやイチジク、タケノコといった自然物を制作する岩崎努の作品は、明治工芸の安藤緑山の象牙彫刻と並べて展示し明治工芸の伝統的技法を受け継ぎながら新しいものを作っていいくというDNAが受け継がれていているようです。
明治工芸も57点展示され、今では、再現不可能な工芸品も多く超絶技巧のものばかりです。
人気の展覧会で、ここに紹介されていない作品も素晴らしく、それぞれの個展があったら行きたいくらいでした。
■超絶技巧、未来へ! 明治工芸とそのDNA
- 岐阜県現代陶芸美術館、長野県立美術館、あべのハルカス美術館、三井記念美術館終了
- 富山県水墨美術館
- 会期:2023年12月8日(金)〜2024年2月4日(日)