やまと絵
特別展「やまと絵 -受け継がれる王朝の美-」(東京国立博物館)へ行きました。
大和絵は、中国風の絵画「唐絵」に対する日本風の絵画のことです。
会場の冒頭によく似た風景の「山水屏風」が2つ並んでいて一つは、現存最古のやまと絵屏風でもう一つが現存最古の唐絵屏風で、差はほとんどないが山々の風景や人物が中国のものか日本のものかという違いでした。
その後、中国絵画の影響のもとで成立したやまと絵は、理念や技法を取り入れ平安時代以変化しながら独自に発展していきました。
室町時代になると四季の移ろいや月ごとの行事、花鳥・山水やさまざまな物語などあらゆるテーマが描かれました。
今回、展示件数245件(入替えあり)のうちの7割超が国宝、重要文化財で教科書などでお馴染みの作品も多く見るのに気合が要りそうな贅沢な展覧会です。
聖徳太子
トップバッターの国宝の「聖徳太子絵伝」(1069年)は、奈良の法隆寺に伝わったもので、太子の誕生から亡くなるまでの事績が、全六面に描かれた数多く描かれた聖徳太子の絵伝の中で最古の作品です。
以前行った
【聖徳太子】は、実存したか?『聖徳太子 日出づる処の天子』展で見たものは
でも、いくつもの絵伝で経年劣化したものは、ガラスケースなしの明るい照明下でじっくり間近で鑑賞しないと色が薄かったりかすれたりして聖徳太子は何処にいるのか分からないことがありました。
「聖徳太子絵伝」の実物を見れるのは嬉しいけど、近寄って細部まで見たいもののガラス越しで、小さい人物の表情も分からず主人公の聖徳太子が何処にいるのか見つけるに苦労しました。
細かい描写の細部は、もっと近寄って見ないと分からず魅力が半減します。
だから、『ウォーリーをさがせ!』ではないけど「聖徳太子をさがせ!」みたいになり
唯一、36人の話を聞き分けてる聖徳太子を見つけました。
東博の常設展示室「デジタル法隆寺宝物館」に原寸大の複製があるので、今度、そちらでじっくり探してみよう。
四大絵巻
目玉は、日本絵巻史上最高傑作であるオール国宝の「源氏物語絵巻」「信貴山縁起絵巻」「伴大納言絵巻」「鳥獣戯画」の「四大絵巻」です。
四大絵巻をコンプリートするには、一堂に揃う~10月22日に見に行なかくてはならずこの期間をターゲットに観覧予定を入れました。
「源氏物語絵巻」(平安時代12世紀)と「源氏物語扇面貼交屛風」(室町時代16世紀 広島・浄土寺蔵)を合わせて見ると現実を超えた「理想化した美」が描かれこれが、王朝の価値観だったと思われます。
ただ、現存最古のものだと色が薄くなって何が描かれているのかよく見えないものがあり、西洋画に比べて地味地味になってしまいこれを復元すればもっと色鮮やかになるのでしょう。
ストーリー性のある「信貴山縁起絵巻」(平安時代、12世紀)はアニメのような動きがあります。
「伴大納言絵巻」(平安時代、12世紀)は、応天門の炎と見物人の群衆の迫力が凄くたくさんの人、一人一人の描き分けていて、以前、見たアメリカから里帰り中の「平治物語絵巻 三条殿夜討巻」(鎌倉時代 ボストン美術館)のような臨場感があります。
この「平治物語絵巻」の「 六波羅行幸巻」(東京都国立博物館)があり、二条天皇が女装して脱出劇みたいなものもありまるで漫画のようです。
無骨な武士に対して端正で色白の顔立ちの貴族との顔の対比も見事です。
アメリカに渡ってしまった兄弟の「三条殿夜討巻」とは違い、日本のしかるべき場所(東京都国立博物館)に国宝としてあるのだけどこれは、当たり前のことではないのかもしれません。
「鳥獣戯画」(平安〜鎌倉時代・12〜13世紀 京都・高山寺)は、日本最古の漫画とも言われ擬人化された動物は、ユーモラスで見ていて飽きないです。
やまと絵など日本画は、筆の線で描く「線の絵」であるけど、動物や植物、背景の川の筆致の強弱のついた描線は、均整がとれ抑制されたやまと絵とは一線を画し躍動感が感じられます。
病草紙
面白かったのが、「病草紙(やまいのそうし)」という、平安時代末期から鎌倉時代初期頃に描かれた絵巻物でシュールできわどい描写があります。
「病草紙」は、「地獄草紙」「餓鬼草紙」とともに「六道絵」と呼ばれる仏教絵画のひとつとして人間の苦悩を表したものです。
「地獄草紙」「餓鬼草紙」も本展にあったけれど地獄や餓鬼より病気は、現実的で我身にも起こり得るのでこちらの方が怖いです。
特に「霍乱(かくらん)」「口より屎(くそ)する男」は、リアルな症状そのものを描いていてこんなの描いていいの?と見てはいけないものを見てしまったかのよう
と同時にそれら胃腸炎、腸閉塞の症状は、公衆衛生も未発達な当時(胃腸炎の女性は、介抱されているようだが)相当、忌み嫌われていたと思われます。
現代医学だったら症状緩和や治癒可能だけど腸閉塞らしき男性は、医療的ケアもされず差別されながら死に至るのだろう。
侏儒(しゅじゅ、小人)、せむしの乞食法師、両性具有の「二形(ふたなり)の男」も病気や障害に対する偏見と無理解ゆえ、当人は、一生、好奇の目にさらされる人生を歩まなくはならず何ともやるせない。
「眼病治療」も目から血が噴き出るほどの荒治療をしているのに失明してしまい残酷過ぎて(横の看護師?妻?は笑っていて)、中世において「病」とは業の結果なるものという位置付けだけどまるで、ホラーか地獄絵図です。
周りは寝入っているのに深夜に一人眠れず、起き上がって指折り時間を数える女
「不眠の女」は、私も中途覚醒で寝れないことがあり共感してしまいました。
詞書に「夜中に一人起きているのは、孤独で寂しい」みたいなことが書いてあり、私が寝れないときは横で熟睡している主人が羨ましいというかイビキまでかいてると恨めしく起こしたくなります。
「病草紙」の風俗画のような描写に当時の生活や文化が垣間見えてそちらも興味深いです。
悲惨な病気の絵巻ですが、病人以外は笑っていたり病人の隣で日常生活を送っていたり、以外に悲壮感がなく、病気も死も「日常」の延長でそれを受け入れながら明るく逞しく生きていたのかもしれません。
日本の四季
それまで地味な色合いが多かったけど最後の赤が鮮やかな国宝「観楓屏風図」(狩野秀頼筆 16世紀)は、復元したのか色味があり季節が感じられるものでした。
やまと絵は、四季が描かれているものも多く、春夏秋冬のある日本の四季のよさを改めて感じまず。
夏と冬というように日本の季節が二季になりそうな昨今なので、春と秋の風物はこのような絵の中でしか見れなくなるのであろうか。
国宝は、法律上の縛りがあるので今回、ハレー彗星並みの周期でしか見れないまとまったものなどこのタイミングを逃さず頑張って見ました。
でも、200点以上は多過ぎて、疲れて気持ちの集中力が切れます。
が、教科書でお馴染みの国宝「神護寺三像」も三像揃い踏みという幸運にも恵まれほぼ等身大の源頼朝(実際には、足利直義像で確定だけど教科書では頼朝なので)とも対面出来、疲れも吹っ飛んだようです。
しぼり菜リズム(まとめ)
特別展「やまと絵 -受け継がれる王朝の美-」(東京国立博物館)へ行きました。
大和絵は、中国絵画の影響を受けつつも、日本独自の絵画スタイルとして発展してきました。
聖徳太子の業績を絵にした「聖徳太子絵伝」は、近寄って細部まで見たいもののガラス越しで、小さい人物の表情も分からず主人公の聖徳太子が何処にいるのか見つけるに苦労しました。
日本絵巻史上最高傑作であるオール国宝の「四大絵巻」、「源氏物語絵巻」「信貴山縁起絵巻」「伴大納言絵巻」「鳥獣戯画」は、貴族の優美な世界観、ストーリー性のあるアニメのような動きや表情の描き分け、擬人化した動物の躍動感とそれぞれ見応えがあります。
「地獄草紙」「餓鬼草紙」とともに仏教絵画のひとつとして人間の苦悩を表した「病草紙」は、シュールな病状などきわどいどいものが多く、病気や障害に対する偏見と無理解が何ともやるせないです。
悲惨な病気の絵巻でも、病人以外は笑っていたり病人の隣で普通に日常生活を送っていたり、以外に悲壮感がなく、病気も死も「日常」の延長でそれを受け入れながら明るく逞しく生きていたのかもしれません。
やまと絵は、四季が描かれているものも多く、春夏秋冬のある日本の四季のよさを改めて感じまず。
■特別展「やまと絵ー受け継がれる王朝の美ー」
- 会場:東京国立博物館の平成館
- 会期:2023年10月11日(水)~12月3日(日)