浄瑠璃寺九体阿弥陀修理完成記念 特別展「京都・南山城の仏像」(東京国立博物館)へ行きました。
浄瑠璃寺
堀辰雄の「浄瑠璃寺の春」という随筆が国語の教科書にあり、内容はうる覚えてだけど「浄瑠璃寺(じょうるるじ)」という美しい響きと「馬酔木」というのが何度も出て来て「あせび」と読むのだと初めて知り、いつかこのお寺に行ってみたいと思っていました。
数年後に実現し岩船寺とともに浄瑠璃寺を訪れました。
本堂、庭、池、三重塔と全てが揃った山の奥のお寺の風情で、回遊式の池と三重塔の庭園が印象に残っています。
ただ、三重塔は岩船寺の方が気に入ったようで、岩船寺の塔の下で撮った写真が残っています。
草木や植物も多く、随筆の「馬酔木」の木もあったのだけど訪れたのが夏だったので、花が咲いていなくてスルーしたみたいでどんな木だったか覚えていません。
浄瑠璃寺が「九体寺」とも呼ばれるお寺の名物は、本堂に安置された「九体阿弥陀仏」で今回の展覧会の主役です。
ずらっと横並びに仏像があった記憶があるものの奈良や京都の他のお寺の仏像とごっちゃになって、本体そのものはどんなだったか覚えていません。
なので、この展覧会で修復を終えた9体のうちの1体の阿弥陀仏に再会し、照明のある室内でじっくり鑑賞しようと出向きました。
浄瑠璃寺の本堂に安置された阿弥陀如来坐像は、平安時代に極楽往生に関わったとされる9段階をキーワードとした9体で、その9体を納めた建造物が流行したが、建物ごと現存する群像は唯一、浄瑠璃寺のみです。
2018~2022年度までの5年を掛けて最も大きい中尊像以外は、毎年度2体ずつ修理され
今回、漆地に貼った金箔の浮き上がりなどを修復した1体が東京にやって来ました。
ビフォーがどんな状態か分からないけど、修復後は、お顔や胸に木目が見えるものの金箔が馴染んでしっとりしているように見えました。
「仏像は、信仰の対象であって美術品ではない」ゆえ美術館で見るものではない
亀井勝一郎氏のお言葉ですが、美術館ではお寺より照明や横や後姿ときに全方位から見せる工夫をしているのでやはり細部の造形まで見るのに適しています。
美術館だから分かるふくよかなお顔立ち、アレっ薄眼を開けていたんだとか薄衣の美しさ等
40年前に見た阿弥陀様は、こんな身姿だったのかと思いました。
ただ、浄瑠璃寺の本堂にオーラを放つ9体並んだ図は、まるで極楽浄土のようで信仰の対象としてはお寺の阿弥陀様の方が説得力はありますね。
南山城のお寺
若い頃、旅行雑誌で、浄瑠璃寺から岩船寺までの当尾の摩崖仏や「南山城」の特集をやっていて、その影響で南山城の岩船寺や石仏群にも興味を持っていたので、浄瑠璃寺へ行ったときにそちらにも足を運びました。
ただ、南山城地域は、京都といえ奈良に隣接する交通の便がよくない場所で、どうやって行ったか記憶にないが、タクシーは使っていないので奈良駅当たりから直通バスで行ったのかもしれません。
辺鄙な場所だけど岩船寺の三重塔や石仏群の道が京都の市街地とは違う風情で、わざわざ行った甲斐がありました。
南山城には、他にも古刹があり仏像巡りもしたいところですが、個人で回るのは大変なので行くことは叶いませんでした。
だから、展覧会では、浄瑠璃寺の他に岩船時、海住山寺、薬師寺、浄瑠璃寺、現光寺、極楽寺、禅定寺、寿宝寺、神童寺のあまり見る機会がない仏像も一度に見れたのはよかったです。
ほとんどの作品がガラスケースに入っておらず、近くから側面や背面のお寺に安置されているときの角度からは見れないところから見ることが出来ました。
大きな禅定寺の十一面観音は、ぐるっと回りながら見ると頭部の小さい仏像のお顔の表情が個々違っているのが分かり、小さいながら中央(頭頂)の仏様の存在感に背筋が伸びます。
お顔が奇麗といえば今回、美青年見つけました。
18体あれば中にもいるものですね
こちらは、現光寺の座った方の十一面観音で、胸は厚く腰はくびれていてお顔も品があり麗しいです。
寿宝寺の千手観音菩薩立像の千本の腕は、やはり迫力あるなあと
でも、ざっと数えて千本には足りてなかったような。
(あったのかなあ?)
同じ阿弥陀如来像だけど浄瑠璃寺の阿弥陀如来は、平安時代の貴族好みの上品な優しいお顔
比べて、鎌倉時代の極楽寺の阿弥陀如来像は、武士に受けのいい力強い風体になっていて時代背景が伺えます。
今回の展覧会は、作品数も少なく規模が小さいがこういった展覧会の方が1点1点じっくりと作品に向き合うことが出来ます。
それぞれ個性があり、飽きずに見られる数に絞ったところがよかったです。
しぼり菜リズム(まとめ)
堀辰雄の随筆「浄瑠璃寺の春」で浄瑠璃寺に興味を持ち実際にお寺を訪れたけど庭園の方が印象に残り「九体阿弥陀仏」は、ずらりと仏様あるなあというくらいの記憶でした。
なので、修理が完成した「九体阿弥陀仏」を再び見るために浄瑠璃寺九体阿弥陀修理完成記念 特別展「京都・南山城の仏像」(東京国立博物館)へ行きました。
漆地に貼った金箔の浮き上がりなどを修復した九体阿弥陀仏は、お顔や胸に木目が見えるものの金箔が馴染んでしっとりしているようで、ふくよかなお顔立ち、薄衣の美しさ40年前に見た阿弥陀仏は、こんな身姿だったのかと思いました。
展覧会では、浄瑠璃寺の他に自分ではなかなか行けない南山城の古刹の代表的な仏像も展示されそれを見ること出来る貴重な機会でした。
十一面観音や千手観音菩など近くから側面や背面のお寺に安置されているときの角度からは見れないところからじっくり見ることが出来ました。
それぞれ個性がある仏像の飽きずに見られる数に絞り、規模が小さいながら各仏像にじっくり向き合えたのはよかったです。
■浄瑠璃寺九体阿弥陀修理完成記念 特別展「京都・南山城の仏像」
- 会場:東京国立博物館 本館特別5室
- 会期:2023年9月16日(土)~11月12日(日)