スーパードクターが難易度の高い手術に挑む「神の手」ものが好きでよくその手のドキュメンタリーを見ます。
今回見たのは、『プロフェッショナル 仕事の流儀 託された道を、まっすぐに 〜小児心臓外科医 山岸正明〜』(NHK)です。
主人公は、66歳の小児心臓外科医の山岸正明医師で、先天性心疾患の4,000人の小児の命を救ってきました。
子どもの心臓は、疾患の種類が多岐に渡り教書通りにいかなかったり、大人の心臓に比べて小さく手技が必要な手術になることが多いので、治療困難な難症に挑まなくてはならない場面があります。
でも、山岸医師は、治療の手立てがないというものや他の医師の手術で根治には至らなかった症例をいくつも手掛けてきました。
天職
山岸医師の心臓外科医という職業を「単なる職業ではなくて天職」と他の心臓外科医が言っていたように正に「天職」だと思いました。
針と糸をいつも持ち歩き縫合の練習をし標本部屋に入り浸っては、病気の心臓の形状を頭に叩き込む日々を過ごし研鑽
休日も手術の映像を見返して他の手がなかった見返したり、シュミレーションやトレーニング、頭の中は常に「心臓」なのでしょう。
さかなクンは「魚バカ」、牧野富太郎は、「植物バカ」(朝ドラの受け売りですが)なら山岸医師は、「心臓バカ」ですかね。
幼い弟を心臓病で亡くした過去があり、同じような心臓病の子どもを助けたいという志で小児心臓外科医になりましたが、単に人助けをしたいだけでなくやはり、根っからこの仕事が好きなのでしょう。
そして、好きというのが前提でプラス、誰よりも努力を惜しまないのがこの先生で治療困難な難症にも解決策となる新たな治療方法を常に考えています。
だから、コンマ以下の精度の切除と縫合を繰り返し、不全の危機にあるいくつもの心臓を蘇らせることが出来るのです。
自ら手術着を「戦闘服」と言うように66歳で3つの病院を掛け持ちし、戦闘服に身を包み最前線でバリバリ活躍するのは並み人間では出来ないです。
(スーパーシニア!)
「一外科医になりたくて、最後も一外科医で終わりたい」という彼の言葉通リの生き方で生涯一外科医を実現しているのでしょう。
未来への想像力
今回、他のスーパードクターの「神の手」と違うところは、子どもの心臓を扱っていることです。
子どもの心臓は、大人と違い成長します。
だから体の成長とともに心臓もどう成長するかを見極めて手術しくてなりません。
成長の先にどうなるかまで思いを馳せる「想像力」が必要なのです。
例えば、心臓の左側の本来4つあるはずが2つしかなく肺動脈が心臓に繋がっていない2歳女の子は、肺に十分な血液を送ることが出来ず生まれてからずっと酸素吸入していました。
3回目の今回の手術では、狭かった最深部にある吻合口を7ミリに広げて切開し肺に血液を送り込むう回路を作ります。
7ミリに広げなくても命は保てていましたが、女の子の将来を考えることであえて7ミリに広げました。
この手術で、女の子は、酸素吸入度が上がり酸素吸入器がいらないレベルになりました。
心臓に穴がある男の子は、術中、心臓を止めて人工心肺につなげる時間を後遺症の出ない限界の30分までとし、止めてやるより格段に難易度の上がる心臓を動かしながらの手術で対処しました。
これも、後遺症に悩まされないというその子の未来を考えてのことでした。
一般的には成長しない人工血管で補う場面でも手数は掛かっても心臓を覆う「自己心膜」を切り取って最大限活用しました。
自己心膜は、成長する形に合わせて切り取ってあげます。
「その子にとっては一生のこと。そこで絶対に妥協しちゃ駄目」という山岸医師の信念通り、心臓が止まってしまうリスクにも直面しながら子どもの未来のために踏み込んでいくのです。
この心臓が、これからの人生を支え切れるように
その子にとって一番いい結果になるように
当たり前の人生を歩ませてあげるようにと
それを実現するためには、怖いけど引いてはダメで、技術不足とか勉強不足とかいうのもあってはならず妥協は許されません。
山岸医師が手を止めないでやれることは全てやるのは、子どもの将来を考え最良のものを目指しているからなのです。
こうして彼の手術を受けた子ども達は、酸素吸入器が外れたり、学校に通えるようになったり、家族と将来の夢を語り合ったりすることが出来るようになったのです。
職人、デザイナー
今回ドキュメンタリーを見ていて思ったのが小児心臓外科医というのは、職人であり、デザイナーでありクリエーターでもあると思いました。
山岸医師は、縫い幅を0,5ミリ単位で変え調整しながら自然な膨らみが生まれるようそれに合わせて縫合をし、髪の毛の太さの糸縫合は、世界一丁寧といいます。
小さな心臓は手術が難しいし、動く臓器だから立体的な構造形成も難しいながら上手く奇麗な曲線で作ります。
これは、職人技
今の形が本当にいいのか、少し広げて成長したときに狭くならないよう立体をきちっと作ってあげる
心臓は立体なので、どの程度、余裕を持たせたらいいのか
その子にとっては一生のことなので、よりよい心臓の形をデザインしていきます。
このように子どもの未来を考えてデザインして作り上げていくのは、クリエーターの仕事ですね。
NHKは、そのまま隠さず手術の映像を流していましたが、それで見るリアルな心臓は、グロテスクというより神秘そのものでとても美しい臓器だと思いました。
そして、子どもの小さな心臓は、けなげで愛らしい
心臓ってやっぱり生命の源なのだと改めて思いました。
小児心臓外科医は、大変な仕事で一人前になるのに時間も掛かるため成り手も少なく全国に130人しかいない「絶滅危惧種」とのことです。
こんなにけなげで愛らしい心臓や未来を担う子ども達と向き合える素晴らしい仕事なので、小児心臓外科医目指す卵や若いドクターが増え、絶滅危惧種にならないことを願います。
しぼり菜リズム(まとめ)
『プロフェッショナル 仕事の流儀 託された道を、まっすぐに 〜小児心臓外科医 山岸正明〜』(NHK)
スーパードクターで「神の手」を持つ山岸正明医師は、小児心臓外科医として多くの子どもたちの命を救ってきました。
子どもの心臓は成長に伴い変化するため、治療が難しく手技も高度なものが必要です。
しかし、山岸医師は他の医師では根治が難しい症例にも挑戦し、新たな治療方法を考え続けてきました。
彼にとって心臓外科医は天職であり、手術のための練習や研究に情熱を注いでいます。
山岸医師の動機は、幼い弟を心臓病で亡くした経験から心臓病の子どもを助けたいという志に加え、心臓外科医としての仕事が好きなことも大きな要因です。
彼は努力を惜しまず、その子の未来を想像し根治に向けた治療方法を常に模索し切除と縫合を繰り返して子ども達の心臓を救っています。
小児心臓外科医は職人であり、デザイナーであり、クリエーターでもあると言えます。
心臓は立体的な構造を持つため、細かな縫合やデザインが必要で、成長に合わせた心臓の形を作り上げることが重要です。
山岸医師は子どもたちの未来を考えて心臓をデザインし、手術を行っています。
現在、小児心臓外科医の数は少なく、未来を担う子ども達のためにも是非とも小児心臓外科医を目指すドクターが増えて欲しいです。