春の美術展
「開館20周年記念展 ジョルジュ・ルオー ― かたち、色、ハーモニー 」(パナソニック汐留美術館)と「開館25周年記念展 京都 細見美術館の名品-琳派、若冲、ときめきの日本美術-」(日本橋髙島屋S.C.)に行った感想です。
ルオー
子どもにジョルジュ・ルオーの絵を見せたら、「この絵のどこがいいの?」という感想でルオーの絵は、ズドンと息が詰まるような暗い絵もあって好みの濃淡が分かれる作家かと思いました。
私は、若い頃から敢えてデフォルメされたようなルオーの不思議な絵に惹かれるものがあり気になっていましたが、ルオーの作品を今までまとめて見たことがありませんでした。
ルオーの作品はほんの一部しか見たことがなく、ルオーという画家もよく知らずにいたのでもっとルオーを知りたいと「開館20周年記念展 ジョルジュ・ルオー ― かたち、色、ハーモニー 」(パナソニック汐留美術館)に行きました。
確かに人を選ぶような絵ですね。
黒く骨太に描かれた輪郭線が私が知るルオーの画風ですが、これらは後年のルオーの特徴だそうだ。
独特の太い輪郭線は、ステンドグラス職人に弟子入りしていたこともあるのでステンドグラスの影響が見られ宝石のような色彩もそういえばステンドグラスっぽいです。
敬虔なカトリックだったルオーはキリストを描いています。
ルオーは、二度の戦争を体験し戦争の苦しみ、悲惨さ、人間の愚かさ、同じ人間を裁くという裁判官の傲慢さや権力者の醜さも描き、一枚の絵で人間の暗部を掘り出しています。
かつ、娼婦、道化、サーカス芸人など社会の底辺にいる人々も好んで題材にし、人間の残酷な部分が強調された描き方で彼らが抱えている不安や悲しみも表現して人の心の奥まで手が届いています。
人間の本質に焦点を当てた絵は、美しさよりも醜さが強調した茶系の暗いタッチの絵なのだが、その暗い色調から晩年に掛けて装飾的で穏やかな表現に変わっていき、暗いままで終わらずやるせなさから救われた気分になります。
やはり、晩年の鮮やかな色彩を使った輝くような油彩画が好きですが、これが結構、厚塗りの絵なのです。
絵具を重ねる厚塗りは、一度仕上げた画面をナイフで削り、その上にさらにまた絵の具を塗って、削って…という工程を繰り返して画面を盛り上げていて
中には、仕上がった作品に絵具を10年間盛り続けたものもあるそうです。
これがルオーの個性だっていう絵がやはり多く、実際に見えた色彩や形態、構図などの事象とは少し違う画家のフィルターを通し内面で捉えたものを再構築し平面的に表現したのもルオーの特徴かと思いました。
パナソニック美術館は、ルオーの作品を260点所蔵していているのを知り、これからもルオー作品を見続けられるのかと期待します。
■「開館20周年記念展 ジョルジュ・ルオー ― かたち、色、ハーモニー ―」
- 会期:4月8日(土)~6月25日(日)
- 会場:パナソニック汐留美術館
若冲
「開館25周年記念展 京都 細見美術館の名品-琳派、若冲、ときめきの日本美術-」(日本橋髙島屋S.C.)
細見良、細見家三代のコレクション細見美術館から本阿弥光悦、俵屋宗達ら「琳派」、伊藤若冲のコレクション展示しています。
私が楽しみにしていたのが伊藤若冲で、数十年前にどこかのデパートの催事場で見て以来です。
その頃は、近年のブーム以前で展覧会でも若冲の作品は、メインではなかったと思います。
でも、鶏の躍動感のある独自の絵は一番、印象に残っています。
細見家では、伊藤若冲が現在のように人気が出る前から作品を蒐集してかなり先見の明と審美眼があったのだなあと感心しました。
同じ鶏でも「動植綵絵」のよく観察されていて図鑑のような精緻さで描いたものや墨の濃淡とデフォルメし大胆に簡略化した「鶏図押絵貼屏風」の同じ鶏でも描き方が違うのが面白かったです。
40代初期の勢いと音符ようなリズムで躍動感を表現した「花鳥図押絵貼屏風」と比べても80代晩年の「鶏図押絵貼屏風」は、熟練度が増し力の入れるところと抜くところが絶妙になっていて若冲の画業の軌跡みたいなものもたどれます。
私が鼠年なので、気になったのが「鼠婚礼図」という鼠の絵です。
ユーモアさえ感じさせる漫画チックな表現は、日本画をあまり見ないような人でも親しみが持てると思います。
勢いでささっと描いたようなデフォルメされたデティールの絵が好きでしたが、ヘチマの周りに蝶やカマキリ、カタツムリなど11種類の生き物が描かた「糸瓜群虫図」なんかも目を凝らして細部まで見ると緻密な描写に引き込まれこれも若冲の魅力なのだと思いました。
■「開館25周年記念展 京都 細見美術館の名品-琳派、若冲、ときめきの日本美術-」
- 会場:日本橋髙島屋S.C. 本館8階ホール
- 会期:2023年4月26日(水)~5月15日(月)
しぼり菜リズム(まとめ)
「開館20周年記念展 ジョルジュ・ルオー ― かたち、色、ハーモニー 」(パナソニック汐留美術館)
好みが分かれるジョルジュ・ルオー
ルオーは、戦争の苦しみ、悲惨さ、人間の愚かさ、同じ人間を裁くという裁判官を描くことで1枚の絵で人間の暗部を掘り出した絵を多く描いています。
社会の底辺にいる人々も好んで描き、人間の残酷な部分が強調された描き方で彼らが抱えている不安や悲しみも表現して人の心の奥まで手が届いた作品になっている。
人間の本質に焦点を当てた絵は、美しさよりも醜さが強調した茶系の暗いタッチの絵なのだが、その暗い色調から晩年に掛けては、装飾的で穏やかな表現に変わっていき暗いままで終わらずやるせなさから救われた気分になります。
「開館25周年記念展 京都 細見美術館の名品-琳派、若冲、ときめきの日本美術-」(日本橋髙島屋S.C.)
細見美術館から、私が楽しみにしていた伊藤若冲のコレクション。
同じ鶏でも「動植綵絵」のよく観察されていて図鑑のような精緻さで描いたものや6曲1双の墨の濃淡とリズミカルに音符ような躍動感を表現した「鶏図押絵貼屏風」の同じ鶏でも描き方が違うのが面白かったです。
「鼠婚礼図」のユーモアさえ感じさせる漫画チックな表現は、日本画をあまり見ないような人でも親しみが持てると思います。
若冲ささっと描いたような大胆にデフォルメされたデティールの絵が好きでしたが、「糸瓜群虫図」の目を凝らして細部まで見ると緻密な描写に引き込まれこれも若冲の魅力なのだと思いました。