「国宝」酔いしそうな贅沢な空間。東博150年の『国宝展』その1
の続きです。
国立東京博物館(以下「東博」)が、創立150年を記念し89点全て公開する『国宝 東京国立博物館のすべて』
国宝にまつわるエピソード
見返り美人図
未来の国宝候補の重要文化財「見返り美人図」(江戸時代・17世紀)
最初に思ったのが、「これだけ有名だけど国宝でないの?」「思ったより、小さいなあ」(縦63.0×横31.2㎝)というものです。
これを描いた菱川師宣は、歌舞伎や遊郭の世界を描く「浮世絵」を作った絵師です。
この人がいなかったら、浮世絵というものはなく歌麿も写楽も北斎も、広重も世に出なかったかもで時代の変革をもたらした人なのです。
ある番組で、X線を当て絵の化学分析を行って絵具の材料を特定というのをやっていました。
調べたのは「立美人図」という師宣の肉筆画でしたが、艶やかな着物に高価な「金」などの絵具をふんだんに使っているのが分かりました。
浮世絵は価値が低いとみなされていたので、最高の技と材料を使い一流にしたかったという思いがあったようです。
金剛力士立像
最後にあった高さ3メートルの「阿形」「吽形」二体一対の「金剛力士立像」(平安時代・12世紀)で、2月に購入したばかりのものでドラマがあります。
もとは室滋賀のお寺の仁王門に置かれたものでしたが、室戸台風で、門もろとも倒壊して仁王像が下敷きになり潰れてばらばになりました。
復活を願いその破片を近隣住民が拾い集めて、400個以上のパーツだけを保管していたものを90年後に設計図もない中、経験と勘だけを頼りに復元したものです。
台風の被害後、散乱した仁王像の部品を集めてお寺が廃絶後も30年以上保管した地元の方々、修復に携わった職人や関係者達の「復活させよう」という執念で貴重な文化財が守られたのです。
東博の動画で仁王像の背面を写したものがあり、筋骨隆々とした表とは違いぼってりとして弛みや贅肉があり怒りの表情とは対照的な鍛え方が足りない背中だったのが何ともご愛敬でした。
(これは、穏やかなものを愛でる平安貴族の好みです。)
お金にまつわる国宝
国宝には値段が付けられないと思っていましたが、国に届け出が必要だが値段が付けられ取引されたケースがあります。
例えば、上杉謙信愛用「太刀姿無銘一文字」は、5億円。「古今和歌集巻代廿」は、7億円「彦根屏風」12億です。
東博では国宝の維持に年間27億円掛かるそうで、入場料だけでは賄えないため、例えば本館の重厚感ある大理石の階段をドラマの撮影などで1日120万円程度で貸し出したりしています。
しぼり菜リズム(まとめ)
東京国立博物館の館創立150年記念 特別展『国宝 東京国立博物館のすべて』に行きました。
国が指定して特別に保護・管理する建築物や美術品や文書などの「国宝」、その東博が持つ89点の国宝を全て展示する企画です。
国宝の数が多く人気の国宝もあるので、平日にも関わらず混んでいました。
静かな絵なのに近くで見ると筆致が激しく、空気感を感じさせる長谷川等伯の「松林図屛風」
磯部餅に見える本阿弥光悦の「舟橋蒔絵硯箱」は、『後撰和歌集』の和歌「東路の佐野の(舟橋)かけてのみ 思ひ渡るを知る人ぞなき」の文字を散らした凝った作りになっています。
光悦の硯箱の後にあったのが、光悦蒔絵の様式を継ぎながら独自の作風を確立した尾形光琳の「八橋蒔絵螺鈿硯箱」、光琳らしい大胆な構図で『伊勢物語』第9段の「八橋」の場面を表現しています。
「天下五剣」)の1振であるニックネーム「三日月宗近」の名刀「太刀 銘 三条」、名の由来にもなった刃の縁に沿って浮かび上がるいくつもの「三日月形」の刃文も見ることが出来ました。
酒呑童子を切ったといも言われる「天下五剣」の1振「童子切安綱」は、秀吉、家康も愛した名刀です。
平安貴族がお金を掛けて描かせただけあって、多彩で華やかな「孔雀明王像」は、細い金箔を貼った箇所もあり装飾的に凝ったものです。
国宝に選ばれる文化財は、美術品として優れているだけでなく特異なエピソードを持ち合わせていたりします。
廃仏毀釈の難を逃れるために売りに出されたこともある「孔雀明王像」は、実業家の原三溪が購入したことで、今こうして見ることが出来ます。
聖武天皇の直筆と伝えられる「楷書」のお手本「奈賢愚経残巻(大聖武)」は、字が大きく堂々として思いや願いが一文字一文字にこもっています。
でも、「闍」という字が2度書きされてより力強い筆の動きを表現しています。
「大聖武」とは逆に崩して流れるような平仮名の「元永本 古今和歌集」は、「和歌」の繊細さを表現するのに「平仮名」を多用し漢字がごく僅かです。
未来の国宝候補の重要文化財「見返り美人図」の作者菱川師宣は、歌舞伎や遊郭の世界を描く「浮世絵」を作った絵師で時代の変革をもたらした人です。
師宣の絵を化学分析し高価な「金」などの絵具をふんだんに使っているのが分かり、浮世絵の価値を上げようとしたようです。
最後にあった阿形」「吽形」二体一対の「金剛力士立像」、災害で安置していたお寺の仁王門の屋根の下敷きになりバラバラになった400個以上のパーツを90年後に設計図もない中、経験と勘だけを頼りに復元したものです。
東博では国宝の維持に年間27億円掛かり、入場料だけでは賄えないため、本館の重厚感ある階段をドラマの撮影などで貸し出しています。
■東京国立博物館創立150年記念 特別展「国宝 東京国立博物館のすべて」
- 会場:東京国立博物館
- 会期: 10月18日(火)~12月11日(日)