庭園美術館に蜷川実花の展覧会『瞬く光の庭』に行きました。
庭園美術館・建物だけでも価値あり
正面入り口から美術館に行くアプローチの敷地内の木々の緑。
静かな空間に都会のど真ん中ということを忘れそう。
美術館である建物は、元は旧皇族の朝香宮(あさかのみや)邸で、昭和8年に建てられた「アール・デコ様式」の重要文化財に指定された洋館です。
建物内部が素晴らしく、館内を見るだけで価値があり見の保養になります。
幾何学模様や動植物の模様を形どった壁飾り、家具、照明器具、マントルピース、ドアノブなど細部に凝ったインテリアやアール・デコの床、壁、窓、天井、階段、扉の内装です。
89年も前にこんな素敵な建物があったのか、今見ても古びた感じがしなません。
建物そのものが美術品です。
館内は、インテリアデザイナーのアンリ・ラパンが手掛けたものやガラス工芸家、ルネ・ラリックのガラスの扉などがありますが、ルネ・ラリックのシャンデリアなど各部屋の照明が同じものが1つなくどれも素敵でした。
(30年前に買ったルネ・ラリックのリングがお気に入りで、今も身に着けています。)
天井から下がるS字フックに掛けてある通称「金平糖」は、星のような形でにステンドグラスの赤や黄色の光を放って可愛らしいです。
(でも、地震が来たら落ちないか心配。)
庭園美術館は、このように歴史的建造物、美術作品、今回は、見なかったけど名前に冠する庭園があり、その3つを楽しむことが出来ます。
蜷川実花『瞬く光の庭』
館内で催されているのは、蜷川実花の『瞬く光の庭』です。
蜷川実花は、フォトグラファーで、映画監督。
2000年に木村伊兵衛賞を受賞して以来、第一線で活躍し続けています。
映画『ヘルタースケルター』も話題になりましたね。
今回の展示は、蜷川実花が、20021年以降コロナ禍に日本各地で撮り下ろした最新作ばかりで、そのほとんどが本邦初公開の作品です。
作品は、「胡蝶」の視点から見た花の写真で、中には、東京都庭園美術館の庭で撮影されたものもあるそうです。
作品にはタイトルや説明がないので、いつどこで撮った写真か何の花か分かりませんが、そんなことは気にならず案外、前入れ知識がない分作品そのものに集中し自由な発想が出来るのがいいかと思いました。
四季折々の花の写真は、「蜷川カラー」とも呼ばれるヴィヴィッドな色遣いや「光」を多く取り入れた明るい色調に特徴があります。
女性が好みそうな華やかな写真ばかりで、やはり観覧者は、圧倒的に若い女性が多かったです。
毎年、知人の山の写真展に行き高山植物や山野草の写真を見て、花でも自然な色合いがいいと思っていましたが、カラフルな花も新鮮でした。
「色」といえば、写真家ソールライターの全体がシンプルな色味の背景に差し色として赤や黄色、青の強い色を少し入れた写真が好きですが、全体が明るく色彩豊かな「蜷川ワールド」にも魅せられます。
ニューヨークが生んだ伝説の写真家『永遠のソール・ライター展』に魅了されて
↑新館の展示室では、空間全体に何枚もの透けるスクリーンをレイヤー状に設置し、スライド写真のように映像作品を流す演出をしていました。
写真の技術が優れている写真家はたくさんいるけれど、蜷川実花は直感的な感性で、独自の世界を切り開ていて、やはり、「らしさ」は一線を画す武器になると思いました。
利他性のある写真
はぼ花の写真ばかりですが、これが意外と飽きません。
それは、クラシカルな旧朝香宮邸をうまく使い作品と建物双方を引き立て合う空間の演出も楽しめたからです。
光降り注ぐ緑の中庭を借景にかつて大食堂として使われていた部屋の円形に広がった出窓にも展示していました。
そして、「人の手が掛かった花ばかりを気が付かないうちに撮っている」と会場で流れていた映像でのインタビューで応えていて、彼女の写真には、見えないながら「人が介在」しているものばかり。
彼女の写真は、誰かを喜ばせるために花を植えたり、種を撒いたり、手入れをしたり人を思う気持ち「利他性」があるものに惹かれて撮ったものだから飽きないのかもしれません。
しぼり菜リズム(まとめ)
蜷川実花の展覧会『瞬く光の庭』が東京都庭園美術館で開催。
旧朝香宮邸の本館は、重要文化財で、家具、照明器具、マントルピース、ドアノブなど細部に凝ったインテリアやアンリ・ラパン、ルネ・ラリックのデザインやアール・デコの内装で美術的価値があります。
フォトグラファーで、映画監督の蜷川実花が、コロナ禍に日本各地で撮り下ろした本邦初公開の作品を展示。
四季折々の花の写真は、「蜷川カラー」と呼ばれるヴィヴィッドな色遣いや「光」を多く取り入れた明るい色調に特徴があります。
花の写真ばかりですが、これが飽きないのは
旧朝香宮邸をうまく使い作品と建物双方を引き立て合う空間の演出も楽しめる。
誰かを喜ばせるために花を植えたり、種を撒いたり、手入れをしたりという「人が介在」した花の写真を好んで撮っていて、彼女の写真に人を思う気持ち「利他性」があるからです。
やはり、確固たる自分のスタイルを持つ蜷川実花の写真は、一線を画します。
■蜷川実花「瞬く光の庭」
- 東京都庭園美術館
- 2022年6月25日(土)~9月4日(日)