30度を超える猛暑日が続きますが、屋内の美術館は涼しくて快適です。
『ボストン美術館展 芸術×力』(東京都美術館)と『ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡―市民が創った珠玉のコレクション』(国立新美術館)の感想です。
ボストン美術館展 芸術×力
『ボストン美術館展 芸術×力』(東京都美術館)
政治や外交にときには、個人で愛でるための収集した古今東西権力者たちに関わる作品を展示。
アメリカのボストン美術館には、日本国内に現存すれば間違いなく国宝級の日本の美術品が多く所蔵されています。
その中でもアメリカから里帰りした二つの絵巻「平治物語絵巻 三条殿夜討巻(さんじょうどのようちのまき) 」と「吉備大臣入唐絵巻」が圧巻でした。
特に「平治物語絵巻」は、人気で絵巻の前に行列が出来ていて、私もせっかくだから並びながらじっくりと見ました。
「平治物語絵巻 」は、平安時代の平治の乱を描いたこの絵巻は、藤原信頼と源義朝の軍勢によって後白河院の三条殿が襲撃された事件を描いています。
細かい描写は少し見えにくかったけれど、炎上する三条殿の惨状は迫力ありました。
煙がもくもくと昇り炎の勢いは激しく、火花が飛び散るという臨場感溢れる表現は、絵師たちの意気込みを感じます。
敵味方入り乱れ、馬で襲う兵士や逃げ惑う人、牛車に轢かれたり、女房や御所に仕えるような丸腰の人達が殺される残虐なシーンも克明に描かれいます。
絵が右から左へ馬や牛車が一斉に駆け抜ける場面などは、スピード感があってさながら平安時代の「アニメーション」のようす。
これだけ膨大な作品を制作するには、かなりの資金も必要で、「芸術×力」副タイトルになるように高い位の人が依頼し作らせたのかと思い時の「権力」が見え隠れします。
「平治物語絵巻」は、もう一つの絵巻・吉備真備(きびのまきび)が遣唐使として唐に渡った際の説話を描いた「吉備大臣入唐絵巻」とともに故あって市場に流出しますが、結局、買い手が見つからず海を渡ってしまいます。
(「平治物語絵巻」は、フェノロサ、「吉備大臣入唐絵巻」は、日本人によって持ち出されます。)
「平治物語絵巻」と「吉備大臣入唐絵巻」ともに国宝に認定されていなかったのと当時の日本に二つの絵巻に「審美眼」を以て価値を見出すことが出来る人がいなかったことから海外流出を許してしまいました。
こうなると後の祭りで、日本の歴史的な大失態です。
特に「吉備大臣入唐絵巻」は、関東大震災や世界恐慌の影響や掛け軸に不向きな内容もあり9年間買い手がつかなかったといい、まさに置き去りにされた不名誉な過去を持つ「日本の至宝」というところでしょうか。
- 会期:2022年7月23日(土) – 2022年10月2日(日)
- 会場: 東京都美術館
ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡―市民が創った珠玉のコレクション
『ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡―市民が創った珠玉のコレクション』(国立新美術館)
ドイツのケルン市が運営する市民コレクターの寄贈を軸に集めらたルートヴィヒ美術館のコレクションです。
20世紀から現代まで作品群の中に美大生の作品が紛れ込んでいても気が付かないであろうレベルの私は、「現代アート」は食わず嫌いで避けてきました。
ポップ・アートやアンディ・ウォーホルなんかは見ていて楽しいけど、特に「前衛的」なものや「抽象的」なものは、何を表現しているのか解説を読まないとちんぷんかんで、価値もよく分かりません。
(商業用ポスターやにプリントした手提げや小物などのグッズにすると可愛いものがあるのですがね。)
でも、絵画、彫刻、写真、映像などの現代アートは何をしなくてはいけないという縛りがなく、テーマも表現方法も自由なので多彩で「多様性」があるのだと思いました。
だから、固定観念を取り外して見方も自由でいいのかと。
ただ、今までと違う表現方法だったりテーマだったり革新的なものでなければ歴史に残る作品になり得ないので、見る機会の少ないそんな貴重な作品が見られたのが今回の収穫でした。
■ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡―市民が創った珠玉のコレクション
- 会期:2022年6月29日(水)~9月26日(月)
- 会場:国立新美術館 企画展示室2E
しぼり菜リズム(まとめ)
『ボストン美術館展 芸術×力』(東京都美術館)
ボストン美術館から里帰りした二つの国宝級の絵巻「平治物語絵巻 三条殿夜討巻(さんじょうどのようちのまき) 」と「吉備大臣入唐絵巻」
「平治物語絵巻 」は、平安時代の平治の乱を描いたこの絵巻の炎上する三条殿の惨状は迫力あり馬や牛車が一斉に駆け抜ける場面などは、スピード感がありアニメーションのようでした。
二つの絵巻は、作品に価値を見出せなかった日本で置き去りにされ海外に流出してしまいまいともに不名誉な過去を持つ「日本の至宝」ともいえます。
『ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡―市民が創った珠玉のコレクション』(国立新美術館)
20世紀から現代まで作品を展示するドイツのルートヴィヒ美術館
現代美術がよく分かりませんが、絵画、彫刻、写真、映像などの現代アートは何をしなくてはいけないという縛りがなく、テーマも表現方法も自由なので多彩で「多様性」があるのだと思いました。
固定観念を取り外して見方も自由でいいと考えると楽しめるし、今までと違う表現方法やテーマ、革新的な貴重な作品が見られたのが今回の収穫でした。