国立博物館で開催中の『宝石・地球がうみだすキセキ』へ行きました。
この展覧会で、地球の内部で、その石がどのように誕生し、発見、磨かれて宝石へと変わっていくか。
原石から採掘、成形、研磨の加工技術を経てジュエリーとして洗練されて行くまでの過程を知ることが出来ます。
宝石の優れた技巧や芸術性だけではなく、宝石が輝く理由や宝石の美しさの要件を構成する要素も明かされ、宝石を鉱物、地学、科学、歴史、芸術的な見地から楽しむことが出来る企画です。
宝石の誕生
古代エジプト、ローマ、ポンペイや日本の何百年、いや何千年も前の黄金の装飾品を博物館や展覧会で見る機会があり、どれも最近作ったもののように輝いて魅了されました。
宝飾品は、時を経ても美しさや価値が変わらないのです。
私がまず興味を持ったのが、この宝石が、どこでどうやって出来たのか、同展で、地学的な視点で紹介されます。
宝石のほとんどは「地球」が生み出したものです。
宝石の「原石」の多くは、地下深いところで生まれます。
地球内部は、マグマや大きな地圧が掛かったり高温高圧の極限環境にあり、プレート運動などによって、長い年月を掛けて動いています。
この地中で、多種多様な化学反応や結晶化と融解を繰り返し様々な「鉱物」が生じます。
例えば、これは展示会場の巨大な「アメシストドーム」ですが、空間(ドーム)の壁面をアメシストの群晶がびっしり覆っています。
アメジストは、溶岩などの泡が冷えて固まった中に熱水が侵入し水分が蒸発してミネラル分が結晶化し形成されます。
水晶は透明ですが、水晶の中でもアメジストが「紫色」なのは、アメジストに微量に含まれた鉄が天然放射線の影響を受けた影響で、紫に見えているそうです。
このように水晶の中でも紫が美しいアメジストように鉱物の中でも美しいもの、あるいは、堅く大きなものだけが宝石の「原石」になります。
この段階で、既に選抜が行われ宝石になる石だけが選ばれるのです。
原石から宝石に
鉱物の中で選手権が行われ、勝ち残った石だけが宝石になります。
ただ、このままだとただの「石ころ」ですが、それを「宝石」にするのは「カット(加工)」です。
カットは、原石から宝石としての特性を最大限に引き出すために成形と研磨の工程です。
この加工技術が、宝石としての価値を高めます。
展覧会では、採掘された原石から「カット」を経て、鉱物がどのような過程を経て美しい宝石になるのかを紹介。
原石とカットされた「ルース(磨いた石)」が200種類展示され、優れたカットが施されると、美しい宝石になっていくのが分かります。
例えば、カットされたダイヤモンドの輝きが美しいのは、「屈折率」「分散率」「硬度」という光を操る性質が関っているからです。
光の透過、反射、屈折、散乱、回折など科学の眼を通して知れば、宝石の美しさに納得がいきます。
輝く宝石とともにダイヤモンドなど生またままの原石も見れたのは貴重な体験でした。
宝飾品
マリー・アントワネットの「首飾り事件」のように、革命の火種ともなりうる存在感のあるダイヤモンド。
私の誕生石がダイヤモンドなので、ダイヤモンドが一番好きですが、2番目に好きなのがクレオパトラも愛した「エメラルド」です。
ポンペイ展で見た2000年以上前に作られた宝飾品に既にエメラルドをヘビの眼にはめ込んだブレスレットや真珠とエメラルドのネックレスがあり宝石の美しさは、永遠だと思いました。
「タイムカプセル」を開けたら、2000年前の『ポンペイ』があった
『ミイラ展』など古代エジプトの宝飾品や護符にも金やエメラルド、ラピス・ラズリ、トルコ石、アメジスト、カーネリアン、メノウといった宝石類が使われていて今見ても魅力的でした。
そして、展覧会の高級店の展示会やショーケースでもお目に掛かれないような古代メソポタミアやエジプト、アールヌーボー調の20世紀のもまでゴージャスな宝飾コレクションが圧巻でした。
時価総額どのくらいなのか。
これだけの宝飾品を展示しているのに警備が手薄なのではないか、防弾ガラスに入っているの?と心配になるほどでした。
その中で、日本の芦屋にあるメゾン「ギメル」の夏をイメージした葉っぱのブローチに目が止まりました。
宝飾品は、とかく、海外ブランドに目がいきがちだけど日本にも素晴らしいブランドがあったのかと思いました。
細かなメレを敷き詰め宝石のグラデーションで仕立てたデザインです。
大小の宝石を隙間なく石畳のように敷き詰める「パヴェセッティング」という技術により、繊細な輝きが生まれます。
白っぽい石から濃い色への色のグラデーションを出すためには、石の選定から始まる高度な技術が必要とされます。
グリーンの石は、エメラルドかカラーダイヤだと思っていましたが、繊細なカラーグラデーションが表現できる「デマントイド・ガーネット」というロシアで採掘される希少な宝石だそうです。
宝石になるべくして選ばれた鉱物が、シェイプ(輪郭や形状)やブリリアントカットなどの加工によって輝く宝石に変わり、それをデザインして貴金属の台座に配置することによって、ジュエリーとしてさらなる高みに到達させていく過程がよく分かりました。
宝石の生い立ちや原石から宝石へ、そしてジュエリーになっていく過程を知り、実際の原石や本物のジュエリーを見て、宝石を多角的に追求するという欲張りな展覧会でした。
しぼり菜リズム(まとめ)
原石がどのように誕生するのか、宝石がなぜ美しいのか、宝石を鉱物、地学、科学、歴史、芸術的な見地から分析、宝石を知り尽くす企画が『宝石・地球がうみだすキセキ』展です。
原石から宝石へ、ジュエリーへとどうようにして価値を生んでいくのかという過程を追うことが出来ます。
鉱物の中でも美しいもの堅く大きなものだけが宝石の「原石」になります。
選りすぐり原石を「宝石」にするのは、宝石としての特性を最大限に引き出すために成形と研磨の工程「カット(加工)」です。
ゴージャスな海外の宝飾品の中で、宝石の輝きや魅力を最大限に導き出すための繊細な細工の日本のメゾン「ギメル」のジュエリーに目をがいきました。
宝石の生い立ちや原石から宝石へ、そしてジュエリーになっていく過程を知り、実際の原石や本物のジュエリーを見て、宝石を多角的に追求するという欲張りな展覧会でした。
■『宝石・地球がうみだすキセキ』
- 国立科学博物館
- 2022年2月19日(土)~6月19日(日)