井之頭公園に祈念像?
井之頭恩寵公園の中に「平和祈念像」があるのをご存じですか?
私は、井の頭自然文化園内に「平和祈念像」があることが行って初めて知りました。
動物園を目的に行った井の頭公園でしたが、園内で長崎にある平和祈念像のエピソードに触れることが出来て思わぬ収穫でした。
「井の頭公園」「平和祈念像」ってどう結びつくか。
実は、井の頭自然文化園は動物園として有名ですが、園内に彫刻家北村西望(せいぼう)の作品が多数、展示されています。
西望の彫刻などの作品や資料を展示した彫刻館にアトリエ、野外彫刻があります。
平和祈念像は、その北村西望の代表作です。
実際の祈念像は、原爆が投下された長崎にありますが井之頭公園にもあり、祈念像制作の秘話も知ることが出来るようになっています。
北村西望
まずは、彫刻家北村西望についてです。
西望は、大正から昭和に掛けて活躍した彫刻家で、宗教関係、戦国武将など歴史上の人物の像を得意としていて、西望の作品で多くみられるのが「逞しく、筋肉を誇張した男性の像」で独自の作品スタイルを確立しています。
井の頭自然文化園には、館内展示(常設展示)と屋外の彫刻作品があります。
西望の作品は、戦前の戦意を高揚とさせる作品や子どもが怖がりそうないかつい男性的なものの中に家族や母と子をテーマにした慈愛に満ちたものもあり心安らぎます。
平日だったので、常設の彫刻がある館内は、人がほとんどいなくて、贅沢な空間を同行の主人とほぼ二人独り占めで、都内の穴場スポットかと思いました。
西望の彫刻作品は、菅内だけではなく屋外にもあります。
西望の屋外彫刻を見て彫刻は、(管理の問題もあって難しかもしれないが)屋外にあるのが骨頂かと思いました。
こんな風に後ろからだってどの角度からも見ることが出来るし、直接、触ることも出来ます。
光の加減や季節の移ろいの背景で、作品の印象も変わります。
(なんていっても、著名な芸術家の作品に直に触れることが出来るのがいい)
盛岡に住んでいた頃、田沢湖畔の「たつこ像」で有名な舟越保武の彫刻が中津川沿いや盛岡各所にあり、盛岡市民に愛されていました。
私も時折、市内を散策しながら「笛吹少年像」や「杏」を眺めては芸術を身近に感じていました。
このように彫刻が、日常の中にあり街や自然に溶け込み風景として馴染んでいるのは素敵なことだったと思いました。
作品が、少しでも多くの人に届くというのも芸術のひとつのあり方なのでしょう。
長崎平和祈念像秘話
北村西望の代表作は、「長崎平和祈念像」で、教科書やテレビで見たことがある人は多いと思います。
私は、平和祈念像は知っていましたが、西望の作品と今回、初めて知りました。
長崎県出身の西望が、昭和30年(1955年)に完成させた高さ約9.7メートル、重さ約30トンの青銅製で、「右手は原爆を示し、左手は平和を、顔は戦争犠牲者の冥福を祈る」と作者の言葉が台座の裏に刻まれています。
これが、井の頭公園の中にあるのです。
といっても「原型」となった銀色の実物大の祈念像で、館内に展示されていつでも見ることが出来ます。
それにしても井の頭公園の中に「平和記念像」があるなんて「秘密基地」みたいでわくわくしてしまいます。
この平和記念像にまつわるエピソードが、館内や別途建てた雑木林の中に佇む木造のアトリエにあって興味をそそられました。
長崎市から依頼されて制作した平和記念像は、高さ9.7メートルもあるのでそれを制作するために東京都が所有している井の頭公園の敷地内にアトリエを建てました。
現存しているアトリエは、どこからか移築したのかと思いきや記念像のためにわざわざ作ったものだったのです。
都が無償提供した土地に建てたので、西望は自らの500点以上の作品とこのアトリエを都に寄付しそれらが現在、展示されています。
アトリエ内は、高さ20メートルほどの吹き抜けとなった広い空間で、高さが10メートルもある祈念像のような巨大な作品が制作することが出来ます。
作品が全ての角度から確認出来るような大きな回転台や、天井近くまで上がる高所作業用のデッキが設置されさながら工事現場のようです。
写真は、大きな平和祈念像の制作風景です。
祈念像の制作は大掛かりで、全体を眺め気になるところを修正して、2階のギャラリーから見て下に降りて直しての繰り返しで理想の形にしていきました。
中部構造を木材で作り、直接、表面に石膏を盛り上げていく「石膏直付法」という工程で作っています。
(中の骨組みは、木だったのですね)
館内に置いてあった冊子によると祈念像は、高さ9.7メートルですが西望は、12メートルの像を作りたかったそうです。
しかし、そのためのアトリエを作るには予算が足りず断念しました。
当時の額で、1千万円のへそくりがあったらと悔しがったとのことです。
(現在のクラウドファンディングがあれば、念願の12メートルの像になったかな)
祈念像は、構想から完成まで5年の歳月を経ました。
最終的には、像は400個のブロックに分解して運び他の工房で鋳造されました。
井の頭公園と平和祈念像
誰もが一度は目にしたことがあるであろう長崎の「平和祈念像」が、井の頭公園内で制作されたことを今回、初めて知りました。
そして、作品を作るためにアトリエまで園内に建てたことに驚きました。
高さ9.7メートルの巨大彫刻がどのようにして出来たのか、どうして井の頭公園内で作ることになったのかが分かり平和祈念像に親しみを覚えました。
しぼり菜リズム(まとめ)
井之頭恩寵公園の中に「平和祈念像」があります。
これは、長崎の平和祈念像の「原型」となった実物大の祈念像で、館内に展示されていつでも見ることが出来ます。
平和祈念像の作者は、北村西望で大正から昭和に掛けて活躍した彫刻家です。
園内には、逞しく、筋肉を誇張した男性の像を中心に館内と屋外に西望の作品が多数展示されています。
常設の彫刻がある館内は、平日だったので人がほとんどいなくて、都内の穴場スポットかと思いました。
西望の代表作である長崎平和祈念像が、井の頭公園にあるはここで祈念像を制作したからです。
高さ9.7メートルある巨大な祈念像を制作するために園内の敷地を東京都から無償で借りそこにアトリエを建てました。
祈念像は、高さ9.7メートルですが西望は、12メートルの像を作りたかったのだが、そのためのアトリエを作る予算が足りず断念したというエピソードもあり平和祈念像により親しみを覚えました。