『鬼滅の刃』(以下「鬼滅」)に負けないくらい素晴らしいアニメ 『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』(以下「ハガレン」)の「名言」と「登場人物」を選んでみました。
今回は、私が選んだ「登場人物」です。
「名言」編は↓です。
【鋼の錬金術師 】の「鬼滅」に負けない「名言」と魅力的な「人物」は。中年の私だから感じること1
以下、ネタバレ注意!
(長くて深い物語の「ハガレン」をまだ咀嚼出来ていない部分があり、解釈が違っているところがあるかもしれません。)
登場人物
「ハガレン」は、敵であるホムンクルス(人造人間)もただの敵じゃなくてそれぞれドラマがあります。
「鬼滅」と似てますね。
人の業を上手く描いたホムンクルスさえもどこか人間味があり、完全な悪役というのが少なくて…とにかく、物語の全員が主人公になり得るほど魅力的なのです。
そんな中で、私が選んだ人物は、キング・ブラッドレイとホーエンハイムという二人の「おじ様」です。
全方位から見てカッコいいマスタング大佐とは違った垣間見せる大人の魅力と人間としての年齢が近いからかとっても気になる存在なのです。
キング・ブラッドレイ
キング・ブラッドレイは、実はホムンクルスなのですが、表向きの顔は、アメストリスの国家元首で、軍の最高位「大総統」です。
いわゆる独裁者ですが、これは、表向きの支配者に過ぎずホムンクルスの「お父様」の意のままに生きてきました。
ダンディでラスボス的な雰囲気の中に時折、気のいい親父さんぶりを見せるも表の顔と違う何かがありそうな匂わせ要素がたっぷりな人物なのです。
ホムンクルスというのは想定内で、正体が分かると「最強の敵」として非情な一面で圧倒します。
でも、他のホムンクルスと違うのは元は「人間」だったので、推定年齢が私くらい年齢で、老いを感じさせるところ(といっても強い!)などどこか人間的な味があります。
他のホムンクルスのように自分がホムンクルスであることに誇りと優越感がありますが、エドやマスタングに対して、自分の思い通りにならなくても彼らの成長を楽しんでいるようにも見えたり、リンやオリヴィエの目標への意地を気に入る様があり人間に対する愛を感じることが出来ます。
キング・ブラッドレイが、印象に残ったのはやはり最後まで「妻」を愛していたところです。
(これは、ポイントが高いですね。)
幼少時より大総統候補の一人として養成され、レールの上を歩かされて大総統としても「お父様」の操り人形でしたが、自分の意志で唯一選んだのが妻でした。
その妻を一人の女性として一生愛したことを誇らしげに思い力尽きたところなど「悪役」ながら愛すべき人物だと思ってしまいました。
国のトップであり「ハガレン」の中でも、1、2位を争うほど強いのだけど、妻とのデートの際には何度か、ビンタを喰らっていて、妻には頭が上がらない節もあります。
(また、そこがいい。)
死に際に「なめるなよ、アレ(妻)は私が選んだ女だ。私とアレの間に余計な遺言など要らぬ」と言い、妻に対して絶対的な信頼を寄せていて素敵な夫婦だと思いました。
そして、「人間のおかげで多少やりがいのある良い人生であったよ」と言い残し、最後まで必死にあがいてきた人間に「少しは楽しませてもらった」と満ち足りた顔で息を引き取ります。
任務に忠実にホムンクルスとして生かされるもどこか「人間として」生きた魂の痕跡があり、その部分に満足して生を終えたことに情を感じてしまいます。
眞子様の結婚問題ではないけれど誰もがどの家に生まれるかは選べませんが、誰と結婚するかは選べます。
運命のレールの上を歩いてきたブラッドレイの一生の中で、たった一つ自分の意志で妻と結婚したことは、ブラッドレイにとって「最高の選択」だったと思います。
ホーエンハイム
「ハガレン」は、もう一人の主人公であるエドとアル兄弟の父親であるホーエンハイムの半生を描いているといっても過言でありません。
ホーエンハイムは、自身の形をとった「賢者の石」そのものになってから「自分が原因となったにも関わらず、償う事もかなわず、死を選ぶ事さえ出来ない」という苦悩が常にある過酷な人生でした。
不老不死の肉体を持ち「死にたくても死ぬことが出来ない」辛さ、自分と親しく関わった人全てが自分より先に死んでしまうという運命を生きていく虚しさは計り知れません。
死ぬことさえままならない永い人生の中で、唯一、救われたことは妻のトリシャと出会ったことです。
トリシャと出会い結婚して、トリシャと過ごした日々や彼女との愛を通じて「人間であることの喜び」を取り戻して、そんな彼女と「一緒に老いて死にたい」と思うようになりました。
トリシャと生きるために元の体に戻る方法を探し旅に出て、旅の過程や戦いの中で、エドとアル息子達の父親としての「父性」が芽生えてきます。
ホーエンハイムは、既に亡くなっていたトリシャのお墓の前で最後に満足げな笑顔で死ぬのですが、私はこのシーンは「ハガレン」の中で、一番好きなシーンです。
それは、ホーエンハイムの気の遠くなるような人生の中で、この瞬間だけが苦悩から解放され、安らかな気持ちでトリシャの元に旅立ちことが出来たからです。
死の前に、エドとアルを自分の魂を犠牲にして助けたこと、そんな父の想いをエドが感じエドが初めて「(クソ)親父!」って親として認めてくれたこともあります。
自分と血を分けたホムンクルス「お父様」との闘いの決着や生涯を掛けて自身に宿る53万人余のクセルクセス国民の全ての魂の対話も終えた安堵感もあります。
不老不死だったはずが、体の中の最後の「賢者の石」を使うことで自らが滅びてしまいますが、それを息子達のためにに使えたこと、「賢者の石」がなくなったホーエンハイムは、もはや「ホーエンハイム」ではないのだけど本当の意味で、エドとアルの「父親」になることが出来たことが安らかな笑顔にさせたと思います。
子ども達のために生きそれを幸せだと思えるホーエンハイムは、己の弱さによって自分の娘をキメラ(合成獣)にしてしまったショー・タッカーや『ヱヴァンゲリヲン』の父であるゲンドウやとは違います。
初見で、訳分からなくて『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』を2回見た。
悔いのない人生を送るためにはどうしたらいいのか、愛を与える人がいて、それを受け取る人がいるということは幸せなことだとホーエンハイムの生き方を見て考えさせされます。
「ハガレン」は、自分に起因する出来事が愛する人達の人生を変えてしまう「因縁」や53万人余のクセルクセス国民の魂の犠牲の上に生かされている苦悩を背負った壮絶な人生でしたが、人生の最後に着地点を見出し終着を迎えることが出来たホーエンハイムの長い長い旅の物語であるともいえます。
そんな懊悩に満ちたホーエンハイムですが、飄々として、どこかホッとさせる雰囲気や包容力もあり夫としてても父としても素敵です。
自分が中年になってからは、キング・ブラッドレイやホーエンハイムのように、中年の悲哀やいわくありげなミステリアスな雰囲気のあるおじ様に惹きつけられるようになりました。
もちろん、妻への愛を貫き通した男性として二人とも魅力的で憧れるのです。
しぼり菜リズム
アニメ『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』の名言は「お前の手は人を殺す手じゃない。人を生かす手だ」と「耐えねばならんのだよ」です。
ともに復讐の連鎖を止めるべく言葉で、人々が前に向かっていくために必要な「ハガレン」の重要な言葉だと思いました。
私が選んだ登場人物は、キング・ブラッドレイとホーエンハイムという中年の「おじ様」です。
妻を愛し抜き生を終えた人生、背負っているものの大きさ、中年の悲哀、男性としても魅力的で目が離せない存在なのです。
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