差額ベット
病院の個室などの「特別療養環境室」に入院したときに病院から請求されることがあるのが「差額ベット料」です。
特別療養環境室とは、患者一人当たり6.4㎡以上、病床ごとのプライバシーを確保する設備を備えているなどの要件があります。
要件を満たしていれば個室でなくても特別療養環境室に該当することがあります。
特別療養環境室の68%は個室で、差額ベット料は、1日平均8,018円、最高額は37万8,000円です。
ホテル並みか高級ホテルのスイートルームのような高額な部屋もあるのですね。
差額ベット料は、「公的医療保険」の対象にならず、また、1か月の窓口負担を一定以下に抑える「高額医療費制度」の対象外のため「全額自己負担」になります。
コロナ対策で、個室に入院
病院に入院したときに、大部屋が空いていないなどの理由で差額ベット料の掛かる個室を割り当てられることがあります。
父が入院したときも大部屋が空いていないという理由で、差額ベット料の掛かる部屋に数日間入院したことがありました。
特に新型コロナウイルスの感染拡大の中で想定されるのが、「コロナ対策」で、院内感染を防ぐために病院から個室への入院を求められることです。
個室を希望しないのに、病院側の都合で何十日も何週間も個室に入院して、差額ベット料だけで治療費以上の金額を支払わなくてはならないことになります。
(ホテルで、1泊や2泊ならまだしも入院して何十万円も払いたくないですよね。)
そんなときはどうしたらいいのか、また請求されたけど支払わなくてもいいときとはどんな場合なのかを書いてみました。
差額ベット料を請求してはならない場合
まず、病院側が患者に「差額ベット料」を請求、徴収出来ない場合についてまとめました。
①同意なし
「同意書」による同意の確認を行っていない場合
入院時には、必ず「同意書」に基づいた説明(設備や料金について説明)があり、これに同意した場合のみ同意書にサインをします。
金額についての詳しい説明がなかったり、「同意書」の内容に同意出来ない場合にサインを「保留」していれば差額ベット料を請求出来ません。
②治療上必要
救急患者や手術後の病状が重篤で安静が必要の場合で、患者本人の「治療上の必要」により特別療養環境室へ入院させる場合
病状が重篤で、治療が必要でICUや個室に入った場合は、差額ベット料を請求出来ません。
③大部屋満床
特別療養環境室以外の病室が満床であるため、特別療養環境室に入院させた場合
「大部屋が満室」だからという病院側の都合で個室に入った場合は、差額ベット料を請求出来ません。
④コロナ対策
感染症患者から院内感染を防ぐため、病棟管理の必要性から特別療養環境室に入院させた場合であって、実質的患者の選択によらない場合
今回、「コロナウィルス」に感染している患者が、他の入院患者の院内感染を防止するため、病院から個室への入院を求められた場合も差額ベット料を請求出来ません。
厚労省の通知2020年3月5日保医発0305第5号では「特別な療養環境の提供は、患者への十分な情報提供を行い、患者の自由な選択と同意に基づいて行われる必要があり、患者の意に反して特別療養環境室(差額ベット料の掛かる部屋)に入院させられることのないようにしなければならない」としています。
これは、患者が希望していないのに、差額ベット料の掛かる部屋に入院させてはいけないというもので患者の意思を尊重しているものです。
差額ベット代を支払いたくない
高額な差額ベット料を支払いたくない場合、上記の病院側が患者に「差額ベット料」を請求、徴収出来ない場合を踏まえての対策です。
大部屋希望を伝える
差額ベット料を支払いたくない場合は、ます差額ベット料の掛かる部屋に入らないことです。
それには、「大部屋を希望する。差額ベット料の掛かる部屋は困る」と大部屋希望をはっきりと伝えることが重要です。
以前、父が入院したときに大部屋が空いていないということで、4日間差額ベット料が掛かる部屋に入院したことがあります。
そのときは、1日2,000円と比較的安かったので「同意」しましたが、大部屋が空いたら移りたい旨を何度も伝えていたのですぐに大部屋に移ることが出来ましたが、それを伝えていなかったらずっと差額ベット料の掛かる部屋に居続けたと思います。
病院側の空気感として差額ベット料の掛らない部屋へ移りたいということを言い出しにくい雰囲気でしたが、長期入院になれば高額の負担を強いられるのでそこは頑張ってお願いしました。
同意書を保留する
入院に際して「同意書」を求められますが、そのときに部屋の料金が発生するかしないかなどきちんと説明を受けて、納得がいかない場合は、同意書のサインを押さず「保留」するといいと思います。
地方厚生局に相談する
しかし、患者の意思に反して差額ベット料の掛かる部屋に入り、病院から差額ベット料の支払いを求められたらどうすればいいのでしょうか。
病院の対応に納得出来ない場合は、全国に8か所ある「地方厚生支局」に相談するといいでしょう。
詳しいことは
「大部屋が、空いていない」とき、【差額ベット料】を支払わなくてもいい。病院の対応に納得がいかない場合は
厚生労働省の「通知」を持って行く
厚生労働省の「通知」をWEBから印刷して病院に持って行き交渉するといいと思います。
保 医 発 0 3 0 5 第 6 号 平 成 3 0 年 3 月 5 日(16ページ(8)病棟管理の必要性等から特別療養環境室に入院させた場合であって、実質的に患者の選 択によらない場合 例)特別療養環境室以外の病室の病床が満床であるため、特別療養環境室に入院させた患 者の場合)
詳しいことは
「大部屋が、空いていない」とき、【差額ベット料】を支払わなくてもいい。病院の対応に納得がいかない場合は
差額ベット料を支払わなければ別の病院に行って欲しいと言われた場合は、「厚労省の別の通知(2018年7月20日の事務連絡)」では、「入院の必要があるにもかかわらず、特別の料金の支払いに同意しないのであれば、他院を受診するように言われた。」の事例を不適切と思われるとしています。
民医連の医療機関
差額ベット代で、病院と交渉したりトラブルになるのは嫌だという方は、どの部屋も差額ベッド代を請求しない「全日本民主医療機関連合会」(民医連)に所属している医療機関があるので、そこを選ぶ方法もあります。
時間に余裕があれば、差額ベット料の掛からない部屋に入ることの出来る病院を予め探しておくといいでしょう。
父が、リハビリテーション病院や療養病棟に転院するときは、民医連に加入している病院や事前に差額ベット料の掛らない部屋への入院を条件にして探しました。
しぼり菜リズム
「①入院時に同意書に沿った説明がなされいない、同意書にサインしなかった場合②治療上個室に入る必要がある③大部屋が満床で、やむ得ず個室に入った場合④コロナなど感染症対策で個室に入った場合は、差額ベット料を請求することが出来ない。」
という旨が厚生労働省の「通知」に記されているので、コロナウイルス感染防止のためや大部屋が空いていないなどの理由で、意に反して高額の「差額ベット料」の掛かる部屋に入院させらることがあった場合で差額ベット料を請求された場合は、病院側と交渉したり地方厚生支局に相談するといいでしょう。
差額ベット料を支払いたくない、交渉するのは苦手というときは、入院時に差額ベット料の掛らない部屋に入りたい旨をきちんと伝えます。
また病院側の説明に納得がいかない場合は、「同意書」のサインを保留します。
余裕があれば、差額ベット料の掛からない部屋のある病院やどの部屋も差額ベット料が掛からない「民医連」の医療機関を探して入院するといいでしょう。