ザ・ドリフターズ(以下ドリフ)の『8時だョ!全員集合』(以下『全員集合』)に大きく貢献した『音楽』についての続きです。
アレンジの天才たかしまあきひこ
山本直純とともに『全員集合』の音楽に貢献したのが、山本直純の後を受け継いだ東京芸大の山本の後輩で門下生のたかしま あきひこです。
『全員集合』でのたかしまあきひこの代表作は、舞台転換のときにかかるBGMの『盆回り(ぼんまわり)』と『髭ダンス』のテーマ曲です。
盆回り
『盆回り』は、「剣の舞」や「天国と地獄」を参考に作られたオリジナル楽曲で、タイトルの「盆」とは、舞台転換に使用するターンテーブルを業界用語で「ボン(盆)」と呼ぶことに由来するそうです。
私は知りませんせんでしたが、大掛かりな舞台の床が回り、大勢のスタッフがステージに繰り出しあたふたと限られた時間で小道具を撤収する光景から放課後の掃除を連想し子ども達の間では、「お掃除の曲」として有名だったみたいです。
ちなみに短時間での撤収を可能にするため、建物などキャスターが付けられるなど大きなセットは全てキャスターなどで可動する仕掛けになっていたそうです。
この曲の効果もありスタッフ達の奮闘ぶりが案外、余興みたいに面白く、次の歌い手さんが出てくるまでテレビに釘付けになったものでした。
『盆回り』の曲は、「賑やかな祭囃子調の哀愁に満ちた日本古来の旋律と強いバックビートを利かせた最先端のポップスのリズムという全く異質な文化を掛け合わせたもの」と朝日新聞の記事『(ドリフの時代、その音楽』)にあり、そんな巧妙な仕掛けを仕込んでいる曲だから、一度聴いたら忘れないリズムとして記憶に残っているのだと思いました。
『髭ダンス』のテーマ曲
たかしまあきひこの卓越しした「アレンジ」の技術が生かされたのが、『髭ダンス』のテーマ曲です。
この曲は、志村けんがR&B・テディ・ペンダーグラスの『Do Me』を使いたいと持ち込んだもので、原曲から「ベースライン」だけを抽出しアレンジして出来上がったのです。
原曲も名曲で、この曲を選んた志村けんのセンスや発想力も凄いけど、洗練された曲とダンスの滑稽さとのギャップがより可笑しさを誘うアレンジは素晴らしく志村けんが亡くなった今、この曲を聴くと彼のダンスの映像がリンクして涙が溢れそうになります。
その他
「ちょっとだけョ〜」
『全員集合』で体に染みついたリズムのうち最もインパクトがあるのが、加藤茶が「ちょっとだけョ〜」と怪しげなピンクの照明の中でストリップのセクシーなポーズに興じるときに流れる曲です。
「ちょっとだけョ〜」は、ペレス・プラード楽団のラテン音楽の『Taboo(タブー)』のサビの部分が使われていますが、「加藤茶のテーマ曲」といってもいいほど浸透力があります。
ジャズなどで使われる「グロウル奏法」という「ガラガラ」と唸りながら大きな音が割れたようにトランペットを吹き、それを『全員集合』の生演奏を担ったゲイスターズのリーダー岡本章生が「より汚らしく、泥臭く」トランペットを奏でるという「アドリブ的」な演出がありこれが、功を奏したのです。
機転を利かせた「ダミ声」みたいな奏法によってより危うくブルージーな「ちょっとだけョ〜」になり、加藤茶の大げさに演じる振りと相まってこのコントが観客の笑いを誘いウケにウケたのです。
細部までこだわった音楽
ドリフの修練に修練を重ねたコントの技芸に加え、一瞬の笑いのために細部まで計算尽くされこだわった「音楽」があったから『全員集合』が、長きに渡り多くの人を魅了してきたのだと思います。
まさに「音楽」が、「笑い」を支えたといってもいいでしょう。
また、日本は、文化的に外来のものを日本風にアレンジしながら独自なものを築いてきましたが、音楽も同じことが言えます。
『全員集合』の音楽も『Tabo』『Do Me』など当時、最先端の洋楽をアレンジしたり、日本的なものと融合させた曲をコントにふんだんに取り入れてより進化させました。
そういった面でもやはり『全員集合』は、音楽的レガシーの宝庫であり、エンタメ界をリードしたレジェンド的な番組だったのだと思います。
しぼり菜リズム
『8時だよ!全員集合』は、「音楽」の果たした役割がとても大きかったです。
『全員集合』の音楽は、台本を練り完璧に計算して稽古して作り上げたコントと同じように緻密に作られたものでした。
その影の立役者である「早業の曲作り」の山本直純やアレンジの天才・たかしまあきひこ達の活躍も人気を後押ししました。
彼らのオープニング音楽、『盆回り』『髭ダンス』のテーマ曲、ゲイスターズのリーダーの機転を利かせた加藤茶の「ちょっとだけョ〜」メロディは、『全員集合』ととにレガシーとして記憶に残るものになりました。
音楽バンドとして活躍していたドリフターズは、音楽的リズムやテンポを生かして、言葉に頼らず、体で表現していき笑いを作っていき、ドタバタ劇の中にミュージシャンならではの「間の笑い」を含んだコントを取り入れていました。
『全員集合』は、「音楽」と切っても切り離せず「音楽が、笑いを支えた」といっても過言ではありません。
1.2