グリーンブック
アマゾンプライムビデオで、シルバーウイークの期間100円だったので、以前から見たかった映画『グリーンブック』を見ました。
2018年 アメリカ
監督ピーター・ファレリー 出演ヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ
アカデミー作品賞、助演男優賞受賞
黒人ピアニストドクター・シャーリーと彼に雇われたイタリア系移民の用心棒兼運転手トニー・リップが、黒人用旅行ガイド「グリーンブック」を手に人種差別が残るアメリカ南部を演奏旅行する過程を描いた人間ドラマです。
雑感
北部では南部の3倍のギャラをもらえる安泰なドクターが、果敢に人種差別の激しい南部ツアーを行ったのは、「勇気は、人を変える」という信念があって挑戦の旅であったかと思います。
ドクターが苦難待ち受ける南部ツアーに、トニーを運転手兼用心棒として雇ったのは起こるであろうツアー中のトラブルを解決できる能力を見込んでことでしょう。
初対面でも粗野で無礼に見えるトニーに何か、ビビビッとくるものがあったのだと思います。
実際にトニーだったからこそ次々と起こる試練を乗り越えたり、二人の結びつきも強くなったのだと思います。
40年ほど前に黒人は、白人と同じ公衆トイレに入れないということを聞いたことがあってショックを受けましたが、それ以前のアメリカ、特に南部においては、私達日本人にとって想像を絶するような「人種差別」があったのだと改めて知りました。
アメリカでは、黒人が旅をするときのためのガイドブックの「グリーンブック」が、ほんの少し前まで存在していて、60年経った今でも根深い人種差別が脈々とあり、警察官の黒人銃撃事件などの温床になっているのかと思いました。
無教養で遠慮がないけど機転が利いて人間力の高いトニー。
繊細で、融通が利かないけれど知的で冷静なドクター。
トニーは、無学だけど実際には内面が豊かで人間味に溢れています。
ドクターは、どんなことがあっても「暴力は、敗北だ。品位を保つことが、勝利をもたらすのだ」と信念を貫き芯が強い。
そんな二人は、ともに心根が優しく人を受け入れ成長していく柔軟さや懐があるのでそれぞれを受け入れていけたのだと思いました。
よかったところ
ハリウッド映画という感じで、見ていて分かりやすく見る人を選ばない万人向けの映画です。
人種も環境も性格も考え方も違うトニープとドクターが、旅を通じて距離がどんどん縮まっていく過程が丁寧に描かれていました。
トニーは、黒人が使ったグラスを汚しいものであるかのようにゴミ箱に捨てるくらい「黒人」に対して差別意識があったが、ドクターの才能や人柄に触れるにつれ偏見がなくなっていき、差別ってお互いを知らないから起きるのかあと思いました。
演奏家として白人から拍手喝さいを浴びるも日常では、同じ白人から黒人として差別を受け、かといって「黒人コミュニティ」からも外れどこにも属さないデラシネであるドクターの「疎外感」や「孤独感」がマハーシャラ・アリの繊細な演技で伝わります。
イタリア系移民で、治安の悪いブロンクスに住み社会の底辺も見てきたが、妻や家族、一族郎党、仲間には恵まれて幸せそうなトニーとのギャップがドクターの孤独感を一層際立たせ、だからこそトニーの妻や家族に受け入れられるラストが生きてきたのだと思いました。
そして、食事を断られたホテルでのディナー演奏会を蹴って、黒人専用のバーでラフないで立ち、ブランドではないピアノで弾いたショパンの「木枯らし」(とい曲らしい)や地元のミュージシャンと即興での演奏シーンの笑顔が本物で輝いていました。
二人の距離を近づけたツールである「ケンタッキーフライドチキン」、音楽、手紙など上手く使っていて、語らなくともそれぞれの境遇や考え方、趣向までもがよく分かります。
脚本がいいのか、二人の演技力なのか二人に感情流入出来て親しみが持て、まるで一緒に旅をしているようでした。
トニーの観客の気持ちを代弁してくれるような行動も清々しく、ラストもハッピーエンドと綺麗にまとめ上げて心地よかったです。
ドクターの気持ちが乗ったピアノの演奏は、映画館でなくても臨場感がありました。
肩ひじ張らなくても人生において「幸福」って何かということを自然に考えさせられた映画でした。
残念だと思ったところ
人種差別、性別差別、マイノリティ、LGBT問題を織り込んだものが好まれる昨今のアカデミー賞を狙ったものなのか、人種差別に 実話ベースの物語なので現実にそうだったのか?、ドクターがゲイという場面があって「LGBT問題」も盛り込んでいましたが、必要だったのかと思いました。
人種差別のみに絞った方がよかったかと思いました。
トニーの妻ドロレスのトニーに対する愛情の深さやドクターのことをもちゃんと理解して全部分かってる賢明さ「内助の功」があってとってもチャーミングでこの映画の準主役級の役割を果たしていますが、「男性の理想とする女性像」として描かれ過ぎているかと思いました。
少し前の時代の主婦の家事労働ってきっと大変なのだろうけど、それをこなすのが当たり前の中で、子どもも小さいのにあれだけ大勢の家族に一族がしょっちゅう来ては食事やもてなしなどかなり大変なのに不満も言わずにこなしているのはよく出来た「奥さん」「お嫁さん」といった感じです。
(私だったら無理かなあ。終始、イライラして、主人にぶつけそう。)
まあそれだけ、トニーがドロレスに愛情を注いでいるからなあと思ってしまいます。
トニーは、移民系だからか、自分も差別を受けたことがあるのか映画では、割とすんなり黒人への偏見が消えましたが実際には、ドクターの演奏を賛美する白人やホテルの支配人のように根深く一筋縄ではいかなような気がします。
そういった意味で、ちょっと出来過ぎな感じがしないでもないです。
しぼり菜リズム
映画「グリーンブック」は、ハリウッド映画という感じで、見ていて分かりやすく万人向けの映画で、トニープとドクターが、旅を通じて距離がどんどん縮まっていく過程が丁寧に描かれていてよかったです。
トニーとは対照的な何物にも属さないドクターの疎外感や孤独感が、マハーシャラ・アリの繊細な演技で伝わります。
脚本がよく、二人の演技力もあり感情流入出来て親しみが持て、ラストもハッピーエンドと綺麗にまとめ上げて心地よかったです。
LGBT問題を織り込んでいましたが、人種差別のみに絞った方がよかったかと思いました。
トニーの妻ドロレスのよく出来た妻ぶりやトニーがすんなり黒人への偏見が消えたりと少し出来過ぎな感じがしてしないでもないです。