東西冷戦下の スパイ映画のもう二つ目の作品は、『コードネームU.N.C.L.E.』です。
『コードネームU.N.C.L.E.』
(2015年英米合作)
ガイ・リッチー監督、ヘンリー・カヴィル、アーミー・ハマー出演
以下、ネタバレ注意
よかったところ
この映画は、1960年代のTVシリーズ『0011ナポレオン・ソロ』というアメリカのTVドラマのリメイク版です。
ハリウッド的というか雄弁でサービス精神旺盛、ストーリーも単純明快で分かりやすくオリジナルを知らなくても気軽に見ることが出来ます。
一通りの東西冷戦下のスパイ映画のお約束を入れた「スパイ映画入門編」という感じなので誰でも楽しめると思います。
見ていてハラハラする場面はありますが、勧善懲悪の「予定調和」のストーリーなので任務は必ず成功するだろうと安心して見ていられます。
巻末のメイキング映像で解説されますが、CGを安易に使っていないカーチェイスなどのアクションシーンは、なかなか味があってよかったです。
ナポレオン・ソロの仕立てのいいスーツや小物使い、スーパーモデルのような悪役の女ボスのファッションやアクセサリーなどお洒落で目の保養になります。
小悪魔的なヒロインのアリシア・ヴィキャンデルの60年代のツィッギー・ファッションとメークが可愛く、特に白いキャスケットと色鮮やかなオレンジと白を基調としたミニのクレージュのワンピースがキュートでした。
ファッションだけではなく、インテリアや小物などもこれでもかというくらい洒落ていて見ていて飽きないです。
いまいちだったところ
ファッションやインテリア、小物までもどうだと言わんばかりにお洒落ですが、お洒落にすることにこだわり過ぎて、肝心の人物描写が飛んでしまい上辺だけなぞっている気がしました。
画面の分割などカメラワークが斬新ですが、逆に技巧を凝らした撮り方は肉眼ではあり得ない表現なので多用すると作為的になってしまいます。
こういう撮り方が、これ以上多いとウザくなるというというギリギリの使い方で…。
まあ、飽きるし特に必要ないというか、ハリウッド的サービス精神でやっているのかなあと思います。
これをシリーズ化する序章の映画だとしたらこれでいいのかと思いますが『裏切りのサーカス』みたいに何度も見たいとは思いません。
この映画の主要人物が内面描写がほとんどなく、キャラクターの軽くポイントを押さえたくらいの紹介的な描かれ方しかしていないので、キャラクターに共感しにくく他人事目線でしか見れません。
だから、終始物語が絵空事みたいにしか思えないのです。
シリーズ化して続編が出来れば、徐々にそれぞれの内面的なものが見えてきて面白くなっていくのかもしれません。
CIAとKGBと敵同士、手癖と女癖の悪いプレイボーイと精神的にトラウマを抱えた無骨な大男という性格も考え方も相反する対照的なキャラクターという設定は、本来はもっと魅力的な二人なのかと思います。
ナポレオン・ソロとイリヤ・クリヤキンの二人の凹凸コンビが繰り広げる「バディ」ものとして、芽生えていく友情や信頼関係、お互いにないものを補って最強チームとして任務を遂行していくみたいな部分やコメディ要素で魅せるならもっと洒脱な会話を多くするなどがあれば違った映画になったと思います。
2つのスパイ映画
東西冷戦を背景にしたスパイ映画でも『裏切りのサーカス』と『コードネームU.N.C.L.E.』は全く趣が違い好みが分かれると思います。
キャラクターが弱いので架空の作り物みたいなっている『コードネームU.N.C.L.E.』に比べて、東西冷戦を織り込んだ人間模様を見事に描いているのが『裏切りのサーカス』で、リアルなスパイものとしても秀逸です。
映像やセット、小物、音楽も映画の雰囲気にマッチした『裏切りのサーカス』の方が好みです。
『裏切りのサーカス』は、「東西冷戦」というのをうまく生かしていますが、『コードネームU.N.C.L.E.』では、KGBとCIAという普段は殺し合う敵対同士という部分のみ東西冷戦を使っていて、時代設定も分かりにくく特に東西冷戦を題材にしていなくてもいいのかと思いました。
ゴージャスで洒脱な雰囲気。説明的で、種明かしのような画像があるので見る者には親切な『コードネームU.N.C.L.E.』
陰鬱として重厚。説明が不足しているので2回以上見ないと分からない『裏切りのサーカス』
何も考えないでリラックスして見るには『コードネームU.N.C.L.E.』、気合を入れて見るには『裏切りのサーカス』っていう感じです。
しぼり菜リズム
東西冷戦を題材にして描いたスパイ映画の『裏切りのサーカス』は、原作を読んでいることを前提にしたような作り方なのか2回見てもよく分からないところがありました。
でも、登場人物の思惑、嫉妬、愛憎とこの映画の本質は、犯人捜しのスパイサスペンスというより東西冷戦という背景に愛を絡めた「人間劇」なのだと思いました。
映像、音楽、小物使いも映画にマッチしてよかったです。
残念なところは、主人公と犯人の描き方が、少し足りなかったところです。
『コードネームU.N.C.L.E.』は、ストーリーも単純明快で分かりやすくオリジナルを知らなくても気軽に見ることが出来ます。
ヒロインの60年代ファッションが可愛く、CGを安易に使っていないアクションシーンは、味があってよかったです。
ファッションやインテリア、小物までもどうだと言わんばかりにお洒落ですが、お洒落にすることにこだわり過ぎて、主人公二人の人物描写が飛んでしまい物語が絵空事みたいにしか思えなかったです。
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