エロイカより愛をこめて
40年ぶりにコミック『エロイカより愛をこめて』を読みました。
40年ぶりに『エロイカより愛をこめて』を再読したら、少佐や伯爵の印象が違っていた
40年ぶりに『エロイカより愛をこめて』を再読したら、少佐や伯爵の印象が違っていたNO2
再読の感想の続きです。
今だったらNGか
今と違って、当時は何とも思いませんでしたが、昔は鷹揚だったなあというシーンが結構あります。
タバコ
少佐は、ヘビースモーカーで「分煙」という言葉すらない頃なので、いつでもどこでもタバコをぷかぷかと吸っていて、アクロポリスで、タバコの灰を足元にポタポと落としてそのまま去ってしまったシーンなどもあり今だったら、完全に「罰金」ものです。
時勢か晩年の少佐はタバコをあまり吸わなくなり(吸える場所も、なくなってきたからか)、吸うときの場所や状況もわきまえるようになりました。
NGワード
伯爵や部下Gの同性愛者の男性を毛嫌いする少佐が伯爵を「ホモ野郎」と呼んだりやたらと「エイズ」を乱発するあたりも今だったらNGワードです。
少佐のセリフにもありましたが、当時、ドイツには「同性愛を禁じた法律」(刑法175条)があり、なんとベルリンの壁崩壊後まで存在していたのです。
ただ、少佐のような保守的なドイツ軍人に何度も言い寄る伯爵を嫌がる気持ちにも同情出来、少佐が、心から偏見や蔑視しているのではなく、悪意を持った言葉として用いた訳ではないのだと思います。
エロイカには、少佐がトイレに行くシーンが結構ありますが、昔は、大らかで屋外で「立ちショ〇」するシーンもあり、少佐に人間味が感じられて嫌いではないけれどこれも微妙にNGなのかなあと思います。
マイノリティ、女性
登場人物に関して、今だったら、白人ばかりでなく「有色人種」が一定数いるかと思いますが、NATOやKGBにしても、生粋の自国の白人がほとんどです。
特にドイツは、「移民」の受け入れに積極的な国なので、もっと黒人やマイノリティの多様な人種が出てきてもいいのかもしれません。
同様に秘書や一般職員以外の専門職、特に情報部は男性ばかりで「女性」がいないのも連載が始まった当時の世相なのだと思います。
(だから、「女装」する部下Gが重宝されるのか)
KGBには、「女スパイ」がいましたが(主婦として)隠れ蓑的だったり、「色仕掛け」的要素が強かったり能力よりも女性「性」を利用している感じでした。
ブラック職場
少佐の情報部は、2日徹夜、休みなしで働かされることもあって、きっと「過労死ライン」なんかとっくにオーバーして、今だったらかなり「ブラック」な職場だと思います。
少佐の部下達への「パワハラ」「セクハラ(かな?)」みたいなところもあります。
それでも部下達は、誰も辞めたりせず留まっているは、少佐の部下達への「愛」がありそれを部下達も分かっているからと想像します。
(情報部のような職場で、精神的にも肉体的にも鍛えられれば、どこに行っても通用し人間的にも成長しそうですけどね。)
と書き連ねましたが、あまり萎縮してしまうより、あれダメこれダメ表現の現在より自由度が高くてそれもエロイカの魅力なのでしょう。
本当に楽しい漫画
2度も同じ本を買うくらい『エロイカより愛をこめて』は大好きな漫画で、何度読んでも飽きません。
もちろん今、読んでも面白いです。
基本、「ギャグ漫画」でありながら、ハードボイルド風味も加わりストーリーの緩急、バランスもいいです。
「陰険漫才」などの会話の応酬が小気味よく、セリフを読んでいるだけでも楽しいです。
ここでは、紹介出来なかった名脇役(「迷」脇役も含めて)も沢山いて、その愛すべきキャラクター達を生み出してくれた青池先生には感謝感謝です。
それにしても東西冷戦など当時、現在進行形だった「自治問題」が既に語り継がれる歴史になってしまったのかと感慨深くエロイカの歴史の長さを感じます。
エロイカでは、世界遺産が舞台だったり旅情をかき立てる美しい「ヨーロッパ」や中東の風景が多く出てきて、コロナでどこにも行けない今、バーチャルな旅を楽しむことが出来ます。
各国の空港の様子もいいですね。
うん蓄つきの美しい「美術品」群、リアルな銃器や戦車、戦闘機、戦艦、航空機、ヘリなど重量級機械類にも迫力があります。
対照的に猫、犬、馬、ロバ、ラクダ、ネズミ、放牧された羊(「メリーの羊」もあり)、アヒル、豚、フェレット、牛や狼まで「動物」も沢山出てきて和みます。(中には、狼、闘牛など怖いのもいますが)
読み切り漫画で、これだけ「エンターテインメント性」を持って楽しめるのは、エロイカくらいではないかと思うほどで、今でも続いているファンの「2次創作」もあり、やはり、根強い人気があるなあと実感しました。
ファンを増やす「布教活動」として、19歳の子どもにもこの本を勧めているところで、年齢、性別問わず楽しめて電子書籍も出ているので、読んでいない方はこの機会に是非、手に取ってもらえればと思います。
しぼり菜リズム
『エロイカより愛をこめて』を40年ぶりに読んでみて、人生を経験した分、登場人物の印象が変わりました。
特に伯爵と部長の見方が、いい意味で変わりました。
で、私よりだいぶ年下になってしまった少佐は、偏屈だけど、少年の部分を残していてやっぱりセクシーで恰好いいです。
エロイカには、描かれた当時の世相で、今だったらNGになる単語やシーンがあり、職場では、黒人などの有色人種がいなかったり、女性がまだ、補助的な仕事をしていたりというのがあります。
『エロイカより愛をこめて』は、「エンターテインメント性」に溢れて、今読んでも面白く年代、性別問わずお勧めしたい漫画です。