「愛していると言ってくれ」
ドリカムの『LOVE LOVE LOVE』の曲の出だしのフレーズを聴くだけで泣きそうになり、恋愛ドラマの名手、北川 悦吏子が紡ぐセリフと愛のやり取りにキュンとした25年前に見たドラマ『愛していると言ってくれ』(TBS)が、再放映中です。
Amazonプライムビデオでも見ることが出来るこのドラマを今まで封印していましたが、テレビで興味本位で見出したら止まらなくて、アマプラで続きを見てしまいました。
どうしてドラマを封印していたからというと
年齢を重ね経験値が上がった今は、シビアな視点で見てしまい、私にとって珠玉のドラマが色褪せてしまうのではないかと思ったからです。
それほど思い出に残る大好きなドラマだったからです。
当時、金曜日放映の『愛してくれと言ってくれ』を見た後は、その余韻が放送後もしばらく続き、日曜日くらいまで現実世界に戻れませんでした。
放送が終了してからも、晃次が『(ひ)ろこォ~~!』とホームで叫ぶシーンなどが頭に残り、しばらくは「(愛してくれ)ロス」状態でした。
何と言ってもトヨエツ
当時、『愛してくれと言ってくれ』の余韻とロスが残ったのもひとえに榊晃次を演じるトヨエツが、あまりにも素敵だったからです。
一目見たその瞬間からトヨエツ演じる榊晃次に全てを持っていかれました。
このときから私は、榊晃次に恋をしてしまったのですね。
切れ長で、涼し気な目元とどこまでも優しい眼差し。
長い指と大きな手で表現する手話や絋子の涙を拭う親指までもが、美しく
所作にも色気が漂い、ときどき憂いを滲ませる阿修羅像のような横顔と不意な笑顔のギャップもたまりません。
紘子に林檎を取ったり、電球を替えるシーンで見せる「身長」の高さや、晃次の背中に「すき」と指で書くことで意識させる「背中の大きさ」も男性を感じさせキュンときます。
長い手足を包み込む洗いざらしのリネンのシャツとコットンパンツ。
裸足で、サンダル履きのいで立ちがよく似合います。
30代で、頭の先からつま先まで(いや影に至るまでも)全身に大人の色気を持った俳優さんって希有の存在なのかと思ったくらいでした。
今回、感じたこと
晃次と紘子の成長
このドラマは、究極の「擦れ違い」ストーリーという印象がありました。
でも、それだけではなく聴覚を失った画家と、女優志望の紘子のラブストーリーですが二人の心の成長も同時に描いていると思いました。
当時は、常盤貴子演じるヒロインの紘子の無邪気で爛漫。
真っ直ぐだけど人を傷つける無神経なもの言いや暴走感が目に余りました。
今見てもそう思いますが、それは二十歳そこそこの若さゆえなのかと思いました。
余りにも晃次を好き過ぎて、空回りしてしまったのではないかと紘子の気持ちも分かりました。
複雑な生い立ちで、ナイーブなどこか心に傷のある他人に心を開いてこなかった晃次がこのような自分とは、タイプの違う紘子だから好きになったのだと思いました。
孤独を抱えた晃次の心にあけすけに入っていったことで、晃次は心開いていきます。
人との間に扉を作っていた晃次が、紘子と出会って真っ直ぐに自分の気持ちをぶつけるように変われたのです。
紘子もまた晃次と出会うことによって自分の未熟さに気づき、依存することばかりではなく精神的な自立をしようとします。
「違うのならば、もっと知りたい。理解したい」
お互いに相手の気持ちを知ろうと努力しながら成長していっている様子が印象に残りました。
健ちゃん
当時は、トヨエツに全部持って行かれて気が付かなったのですが、改めて見て傍らで支える幼馴染の健ちゃんが結局、いいヤツなのだと分かり今さらながら泣けました。
紘子を大きく包み込む晃次の大人の男性としての魅力に心惹かれますが、健ちゃんのような温かさや男らしもいいなあと思いました。
改めていいなあと
手話を通して心を通わせていく様子は、今、見ても新鮮です。
言葉を話せないからこそ、手話で紡ぐ言葉が、実際の言葉よりも響きます。
「愛してる」って一生懸命伝える姿にも偽りがないのだと思いました。
「ねえ、どうして、すごく好きなことをただ伝えたいだけなのにうまく言えないのだろう」
というドリカムの劇中歌の詞のように誤解や思いが擦れ違い言葉に出来ないもどかしさがとても、切ないです。
劇中にも出てくる『ロミオとジュリエット』のように恋愛は、障害があるからこそ深まっていくのだと改めて思いました。
晃次が指で、影絵の「きつね」の形を作りながら列車の母を追いかけて走るシーンと晃次が『(ひ)ろこ~~!』とホームで叫ぶシーンは何度見ても泣けます。
しぼり菜リズム
やはり、タイトルになった晃次の「愛していると言ってくれ」(ア・イ・シ・テ・イ・ルと言ってくれ)のお願いに体を密着させて「愛している(ア・イ・シ・テ・イ・ル)」と振動で何度も伝えるシーンは、鳥肌ものです。
(絋子の手紙風に)どれだけ時が流れても、私の恋愛ドラマのベスト10第一位は1995年の夏に出会ったこのドラマです。
相変わらず、どこを切り取ってもトヨエツはカッコいいし、はち切れんばかりの常盤貴子も可愛いです。
『愛していると言ってくれ』は、私にとって色褪せない名作と再確認しました。