スカーレット
NHK朝の連続テレビ小説『スカーレット』が、終了しました。
10年ぶりの朝ドラ『スカーレット』を見た雑感です。
シルバー世代の人に不評?
『スカーレット』の平均視聴率は20%を切って、近年の朝ドラでは、低い結果に終わりました。
この原因の1つは、シルバー世代に不評だったのではないかということです。
朝ドラ開始以来欠かさず見ている朝ドラ皆勤賞の80代の母は、『スカーレット』は、「辛気臭くて、どうもね」と言っていました。
(丁度、貴美子と八郎が、ギクシャクしていく時期だったので)
『スカーレット』は、日常の「ケ」がメインストーリーで、非日常感や特別感など華やかさの「ハレ」の部会が少なく全体的に地味な印象です。
苦難の末に穴窯が成功して陶芸家として頂点を極める場面は、一番の見どころでしたが物語の「通過点」として端折っています。
成功してからの達成感や高揚感を全てそぎ落としてしまっているので、ヒロイン貴美子の「晴れ舞台」や「成功譚」を楽しみにしている人や思いを共有したい人にとっては、物足りなかったと思います。
また、夫婦の危機などのヒリヒリとした緊迫感ある描写に時間を割き、朝から「鉛の塊」を持たされてしまいます。
そして、高齢の母は「セリフが、ハッキリ聞き取りにくく、何を言っているのか分からない」と言うのです。
私もセリフがよく聞こえないことがあったので、いつもより音量を上げて視聴していたので、年配者には、聞きにくいシーンが多かったと思います。
セリフが分かりにくいのは、このドラマにとっては致命的なことです
『スカーレット』は、会話の中に「伏線」を忍ばせていることが多く、後の回収であのときのセリフにこういう意味があったとその言葉が生きてくることが都度都度あったからです。
なので、「ながら見」、ましてや「時計」代わりに見ることも出来ないドラマです。
凝縮された15分に無駄がなく、語らないシーンの登場人物の一挙手一投足、微妙な表情の変化も意味があるからです。
ドラマにクライマックスが少ない分、何気ない日常の機微を丁寧に描いて、その全てがクライマックスみたいなものでした。
母のように朝食を用意しながら、ご飯を食べながら見ているとそういった細かい部分を見逃してしまい、魅力が半減してしまいます。
『スカーレット』は、テレビの前にきちんと座って見ないとその「よさ」が分からないドラマなのです。
(私は、『NHKプラス』が導入されてからは見逃し配信を含めて、テレビと毎回、2回見ていました。)
そして、水橋脚本は、視聴者に判断をゆだねるような描き方をするのも、分かりにくかったのかと思いました。
白血病の息子武志の残り時間を考えると本来なら喜美子や八郎が先頭に立ってドナー探しするところなのにその時期に穴窯焚いていたのは、武志の治療のために作品を売って資金を集めるためなのだけど言葉足らずでそういう説明が、一切ありません。
八郎が、出ていった理由も明確に語られていません。
八郎が、信楽から京都、愛媛、名古屋へ住まいを移した理由も結局、分かりませんでした。
同時期にやっていた『おしん』の橋田壽賀子の脚本だったらその辺りを丁寧に説明してくれると思うので、年配の人も分かりやすいく好まれます。
母の同年代のお仲間達も今回の朝ドラは、「あまり、面白くない」と言っていたそうで、従来の朝ドラらしさもなく高齢層に受けが悪くて視聴率も伸び悩んだのでははないかと推測されます。
八郎さん
実は、私が『スカーレット』を見始めたのは、昨年の11月頃からなのです。
それまでは、週に2回ほど見る程度でした。
この頃、貴美子の夫になる八郎が登場して、この人が貴美子の「結婚相手」?と気になり出してから本腰を入れて見るようになりました。
史実の通りだと夫のDVや弟子との不倫で離婚してしまうので、どんな嫌われ夫をやるのだろうと興味津々でした。
「松下洸平」
クレジットを見ても知らない名前だったので、「サスペンス」に出てくる脇役みたいな俳優なんだろうと思っていました。
でも、いつまでたっても八郎さんは、好感の持てる人で、それどころか
「抱き寄せてもいいですか」「キスは、いつするんやろ」
立て続けの八郎砲に一瞬にして「八郎沼」に浸かってしまいました。
八郎があまりにも純朴で草食系だったので、そのギャップにびっくりしたのです。
どうして、八郎は家を出た?
主人公貴美子の夫の八郎は、どうして家を出て離婚したのか考えてみました。
武志にも問われていましたが、その理由を作中では明確に語られていないからです。
年明けには八郎は、「不倫」してフェードアウトするので、こんな真面目な人がいつ、どのように豹変してしまうのかとその時期、緊張感を持って見ていました。
結果的に匂わせはありましたが、不倫はせずに喜美子と離婚。
離婚しても家族思いの優しいキャラをキープしていました。
八郎は不器用だけど、常識人で優しくて律儀、婿養子にもなり家事や育児にも積極的です。
でも、プライドがあって頑固。
少々、面倒くさい「昭和の男」です。
八郎のこのプライドや頑固さが、災いして家を出ていってしまったのかなあと思っています。
八郎と同年代の私の父も子煩悩で、とっても優しい人でした。
それでも、時代背景も手伝って長男、家督としてのプライドみたいなものがあり意識の底では「亭主関白」でした。(実質は、母の方が強かったです)
どんなに優しくても昭和の男は、妻には自分を立てて欲しいし、男としての沽券やプライドに関わる領域を踏みにじられれば我慢がならなかったと思います。
陶芸家として才能ある妻への嫉妬に加えて、穴窯に夢中になった貴美子が、自分を見てくれないという嫉妬もあったのだと思います。
もしかしたら八郎は、家を出てからも、喜美子が迎えに来るのを待っていたのかもしれません。
子どもの教育資金に手を出した。自分が居れば「女性陶芸家・川原貴美子」は存在しなくなる。
穴窯に気持ちを持って行かれた嫉妬。家が燃えてしまうかもしれない危険な状態でもどうにも出来ない自分に嫌気が差した。
など八郎が、家を出た原因はいろいろと想像出来るのですが本当のところは貴美子にも、息子の武志にも語っていないので最後まで真意は、分かりませんでした。