出典:集英社・アニプレックス・ufotable
鬼滅の刃
シニア(入口ですが)の私でも面白くてハマってしまっアニメがあります。
それは、今話題というより社会現象になっている『鬼滅の刃』(吾峠呼世晴原作・少年ジャンプ)です。
子どもに勧められてアマゾンプライムビデオ(月500円)で見始めたら、これが面白くて普段、アニメを見ない私でも惹きつけられてしまいました。
舞台は大正時代。
炭売りの少年・竈門炭治郎(かまどたんじろう)は家族を鬼に惨殺され、唯一一命を取り止めた妹は鬼にさせられてしまいます。
その妹の禰豆子(ねづこ)を人間に戻すため、家族を殺した鬼を討つ復讐のために「鬼退治」に出掛けるストーリーです。
『鬼滅の刃』の何が刺さりどこがよかったかです。
郷愁を誘う
まず、この物語全編に漂う「虚無感」や「儚さ」に惹かれました。
大正時代という時代背景に加えて、鬼の出現によって死と隣り合わせの恐怖が誰にでもあり、誰もがいつ死ぬかもしれないという虚無的な空気が社会全体を支配しています。
初っ端から主人公炭治郎も妹以外の家族全員を殺されてしまいあまりにも暗くて、救いようがありません。
でも、そんな無情な世への不安や哀しさを否定もせず強く生きていく登場人物達の様は、清々しくただ暗いだけではありません。
主人公の「家長制度」など前時代が色濃く残る家の長男として、自分のことは後回しにして家族を優先し家族の絆を大切するところは、忘れ去られた古き良き日本を垣間見るようです。
強い敵を倒すために努力や鍛錬怠らず、忍耐強く修行して一生懸命に頑張って何かを成し遂げる「武士道」のような精神性は、ある一定以上の年齢の方には刺さるかもしれまん。
舞台の時代にマッチした作画も沁みるものがあり、竈門炭治郎、禰豆子(ねづこ)、我妻善逸、嘴平(はしびら)伊之助、冨岡義勇等々登場人物の古風な名前もまでもが郷愁を誘い惹きつけて止みません。
魅力的な登場人物
主人公が優しい
まずは、家族思い、仲間思いの主人公の炭次郎が、とにかく優しいのです。
誰彼と分け隔てることなく優しくて、こんな孫がいたらいいだろうなあどと思ってしまうほどです。
妹や仲間のために努力、忍耐、鍛錬を怠らず強い敵を倒すために辛い修行に耐えていきます。そして、死をも厭わず鬼達に挑み続ける「王道のヒーロー」です。
敵である鬼にも同情し、悼む優しさはまさに「人格者」です。
推しキャラがいると楽しい
この物語には、魅力的かつ超個性的な登場人物が、たくさん登場します。
登場人物の中に必ず「贔屓」のキャラクターが、出て来るのではないかと思うほど多彩な人や鬼が出てきます。
私も贔屓のキャラクターこと「推してるキャラクター(推しキャラ)」が出来てから俄然、感情流入して盛り上がってきました。
アニメ版での私の「推しキャラ」は、我妻善逸くんでこの子の登場で『鬼滅の刃』が面白くなってきた感があります。
善逸くん、本当は強い子なのだけど普段は、小心で臆病です。
優等生の炭次郎と違って自分の強さを自覚せず、怯えるし 逃げるし、鼻水を撒き散らしては「鬼が、怖い」「死んでしまう」とピーピーと泣き叫ぶネガティブの塊です。その上、無類の女好きです。
そんな弱いところもまた可愛いのですが、いざとなれば強い!
ある状態になると本来の強さを発揮するのです。
普段の「ヘタレ」キャラと強くてカッコいいギャップが愛くて、いわゆる「ギャップ萌え」の魅力を楽しませてくれます。
このお話は、鬼が出て来てきたり、鬼の気配が結構、怖いのですが、善逸くんが先にヘタレてくれるので怖さが吹き飛んでしまうんです。
主人公と推しキャラに加えて、「鬼殺隊」同期の猪の被り物をした伊之助も加わったことでさらに、物語に親しみを感じるようになりました。
壮絶な戦いのシーンの合間の三人のやり取りが、コミカルで癒されて箸休めになります。
これから鬼を退治する鬼殺隊最上位のメンバー「柱」など一人ひとりの掘り下げられていけば、きっと贔屓の登場人物も出て来てもっと面白くなると思います。
悪者にも
この漫画、「敵」である「鬼」でさえ魅力的だったりします。
敵の鬼は、皆、元々は人間で大切な人を殺されたりして悲しい「トラウマ」を背負っています。
戦いの最期に「人間」だった頃の自覚に目覚め葛藤するよう様子は、敵であるはずの「悪者」にもスターウォーズのダースベイダーのように「情」を感じてしまいます。
『鬼滅』は、憎き敵にさえも丁寧に描き、すべての登場人物に作者の思いが通っているのです。
(どちらかというと)哀愁や悲哀が盛り込まれた登場人物の背景のエピソードを知れば知るほど、物語にも深みを与えて、それぞれがいとおしくて生き生きとしてくるのです。
登場人物の成長物語
『鬼滅』は、主人公をはじめとする登場人物(特に同期三人)の「成長物語」といえます。
師匠(メンター)との出会いや修行、鬼との戦いを通して、肉体的な強さに加えて精神的に成長していく様子を「追体験」することが出来ます。
主人公達は、鬼の前では圧倒的に強い訳ではありません。
勝つこともあれば、敗れることもあります。
でも、力を合わせ、力の限りを尽くしてボロボロになりながらも戦います。
展開が進むにつれて、戦う相手も格上になり目標がどんどん上がっていきます。
経験値が上がる中で、スキルも高くなり必殺技にもより磨きが掛かかり、結果的に心も体もより強くなり歩数を進めているのです。
親に捨てられ粗野だった伊之助が、人間らしい「情緒」を取り戻していったり、ヘタレな善逸が禰豆子を命がけで守ったり主人公達がどう変わっていくか見届けるのがこれからの楽しみなのです。
映像美や音楽
アニメの制作会社「ufotable」の作画の美しさ、クオリティはピカイチです。
大正時代が舞台の懐かしさが漂う映像、山里の風景、浅草の街並み、畳の目まで1本づつ描く細密でアリティーのある絵の再現。
TVアニメにも関わらず、まるで「劇場版アニメ」のようでそれだけでも見る価値があります。
炭次郎の父が舞う「ヒノカミ神楽」もプロの振付師に実際に舞ってもらい、複雑な衣装の動きも含めて映像をトレースして作画するというこだわり様です。
主題歌やBGMもよく、私は知らないのですが声優陣もかなり豪華だそうです。
その他
展開が早く、多彩な迫力のあるアクションシーンも技が惜しみなく出てきて、どんどんストーリーの展開も早く飽きることがありません。
予定調和の王道ストーリーで、複雑なことはなく「シリアス」と「コメディ」のバランスもよく感情移入しやすいです。
普段、アニメに馴染のない人にも見やすいかと思います。
鬼を退治する「復讐劇」だけに終わらず、登場人物の背景までを描写することにより、人間の「業」や「切なさ」も同時に表現されているところが深いです。
絶望の淵から這い上がり、妹を救うため、人喰い鬼から人間を守るため闘い続ける主人公炭治郎の姿は、一筋の光でありそこから「勇気」をもらうことが出来ます。
しぼり菜リズム
実は、最初は登場人物の絵が好きではありませんでした。
人が死んだり出血や暴力などハードな表現もあるのも嫌だなあと思っていました。
でも、回を進めて好きなキャラクターが出てきたり、登場人物達の背景を知るごとに感情流入出来るようになりそれから引き込まれていきました。
全編に漂う切なさ中に温かさと「愛」がある物語に懐かしさや郷愁を感じさせる作風は、きっと私の年齢層やシニアの方にも受けるのではないかと思います。