倒壊する可能性が高い
築47年のしぼり菜邸の「耐震リフオーム」を行いました。
昭和47年に建てられたしぼり菜邸は、建築基準法が変わる昭和56年以前の木造住宅のため、「耐震診断」と「耐震改修」の費用の一部が区で助成されるので耐震診断を行いました。
区の補助金を受け耐震診断の「簡易診断」と「精密診断」を受けその結果、評点(震度6強の地震に対して、どの程度耐えられるのかを表した数値)が0.05と「倒壊する可能性が高い」という結果が出ました。
古い家によくある窓が多くて、壁が少ないという間取りに親亀の上に子亀が乗ったような(広い1階に対してちょこんと2階が乗っている)複雑な建物なので評点が低かったようです。
判定結果は、「倒壊しない」「一応倒壊しない」「倒壊する可能性がある」「倒壊する可能性が高い」のいずれかになります。
構造評点上、倒壊しないという数値は1.0ですので、そこには程遠い数値です。1.0未満のしぼり菜邸は、何らかの対策が必要になるのです。
0.05というのは、必要な耐力の5%しかないということで、テストで赤点を取った気分で非常にショックでした。
そして、しぼり菜邸は、「2階の重さに耐えられず平行四辺形に1階部分が、潰れてしまう」という可能性も指摘され、早急に工事をしてもらわなくてはとお尻に火が付いたのです。
耐震リフォームまでの道のり
大きな地震が来た場合、「倒壊する可能性が高い」しぼり菜邸、善は急げと今年、2月に実家の耐震工事を行ったリフォーム営業会社に連絡をしました。
最初に耐震診断をしてもらってから今回、耐震リフォームを決意するまで4年経ってしまいました。なので、改めて耐震診断をしました。
診断をする診断士によって多少評点が違いましたが依然「倒壊する可能性が高い」には変わりありませんでした。
最初の耐震診断から4年経ってしまったのは、実家でも耐震リフォームを行っていてその大変さを目の当たりにして腰が引けてしまったからです。
在宅でのリフォームは、生活の場が「工事現場」になるので精神的にも肉体的にも大変なのです。
でも、赤点並みの評点に加えて10月の消費増税が間近に迫り、先延ばしにしていた耐震リフォームを行う決心をしました。
平行四辺形に押し潰された我が家の下敷きになった悪夢にうなされたくないというのもあります。
3月には、設計事務所で具体的な工事の「補強設計」をしてもらいました。
補強設計とは、倒壊しないためにどのように補強するか計画を立てて設計図や費用の見積書を作ります。この耐震補強設計には20万円掛かりましたが、自治体によっては補助が出るところがあります。
私が住んでいる区は、この補強設計に補助がありませんでしたが、実家のある区では、助成がありました。
補強設計で評点が1.5以上にする1案と評点が1.0以上にする2案を作って頂きましたが、費用は嵩みますが安心を得るために1案の評点が1.5以上「倒壊しない」にすることにしました。
安心のために、より完璧にすればいいのですが費用もそれだけ多く掛ってしまいます。
予算が限られている場合、耐震診断の結果から優先順位をつけて、最も弱い箇所から順に補強していくのがいいと言うことです。
耐震工事の場合、「費用対効果」の高いものから考えていくのです。
親亀の上に子亀が乗ったような2階建てのしぼり菜邸の場合、2階部分が乗っている1階の和室2部屋が2階の重みで潰れやすいということで、その弱点である2部屋を重点的にリフォームをすることになりました。
必要以上に費用を掛けられないので、2階が乗っていないその他の洋室や浴室、トイレ、玄関、廊下は手を付けないことにしました。
設計書を作ってからリフォーム営業会社を通して、4月に区に補助金の申請をして、承認された後、5月中旬に「工事契約」を行いました。
耐震リフォーム
工事契約を交わしてから、工事の日程表をもらい耐震工事が着工されました。
築47年の家をマイナスの状態からプラスの状態にしていく数値を上げるために、耐震診断を受けそこで弱いと判断された部分を、少しでも補強していきます。
耐震診断に基づく計画通りに、今あるの壁を強くするために「耐力壁」にしたり、「構造用合板」を張ったりします。
柱を増やし、窓の幅を半分にして壁を造り、筋交いを入れたり、木材の継ぎ目となる部分には「耐震金物」を取り付けて柱や梁が抜けてしまわないよう補強します。
建物そのものを地震に強い家にしても、それを支える「基礎」が不安定だと元も子もありません。建物とのバランスを考えて、床下にもコンクリートを流して基礎を新しく作ります。
今回の工事で一番多いのが、建物の内壁を解体して耐力壁等の構造用合板を配置する壁の工事でした。これは、部屋ごとに施工することが可能なので、住みながらのリフオームで行いました。
コンパクトな耐震工事
今回住みながらのリフォームなので、広範囲に工事が及ばない「コンパクトな工法」での工事が随所に施されています。
これは、「ガーディアン・シールド」工事です。
ガーディアン・シールドを使った工事は、床や天井などを壊さず壁を取り換えるだけの小規模な工事ですみます。
一般的に行われている耐震工事では壁以外に床や天井などを壊す大掛かりな工事になりますが、ガーディアン・シールドは解体、撤去、修繕などの工事がなくなるので工事期間が短くなります。
今回、耐震壁補強素材で多く使ったのが「かべつよし」という壁用ボードです。かべつよしは、屋内側から施工出来る内壁補強キットを使い簡単に耐震強化します。
今までは、外壁をはがしたり、床や天井を壊して施行しなくてはなりませんが、このキットでは工事が簡単になり、低コストで耐震工事が出来るようになりました。
助成金を利用する
今回の耐震リフォームは、自治体の「助成金」を利用することになりました。
助成を利用する工事というのは、様々ば条件をクリアしなければならならず、大きな間取りの変更は出来ないなどの制限が掛かります。
助成金を受ける為の申請業務などもあり、リフォームの具体的な相談を開始してから通常のリフォームより時間が掛ります。
区の助成金を受ける場合、申請が通らなければ、契約することが出来ません。 契約をしなければ工事を開始する事も出来ません。
申請から工事の許可が下りるまで、1か月近く掛かり待機する時間が必要になるので耐震リフォームは、計画に余裕を持たなくてはなりません。
申請などの手続きは、リフォーム営業会社を通して行ったので、こちらは特に何もやることはありませんでした。4月に申請して、5月に承認が降りたのでリフォーム営業会社と「契約」を交わし6月から工事が始まりました。
工事の最中は、上の写真のように工事の箇所に工事の内容を記載した紙が貼られています。
これは、「計画通りに工事をしたのかどうか」ということを、自治体へ報告しなければ助成金は下りないので、工事の様子を詳細に写真で記録して報告書を作るためです。
工事の最中には中間検査があり、区の関係者が工事現場に見えました。工事が終了後にも最終検査に見に来ました。
倒壊しない家に
6月から始まった耐震工事が、9月にようやく終了しました。
その結果、評点0.05の「倒壊する可能性がある」から1.5の「倒壊しない」家になったしぼり菜邸、以前より大きな車が家の前を通ったときの振動が少なくなくなり耐震性がアップしたことを実感しました。
(でもこればかりは、実際に大きな地震が来てみないと分かりませんが…。)
たまたま今回、屋根の点検を行ったら屋根が老朽化していて、重い瓦から軽いガルバリウム鋼板の素材の葺き替えることになりました。屋根も軽くすることでも、耐震化に効果があるのです。
耐震リフォームで、生命が守られるのは大前提、出来れば建物自体の被害も少なくしたいというのもあったのでこれで安心感が得られます。
しぼり菜リズム
耐震工事では、自治体の「助成」を受けるための手続きなどがあり、特殊なリフォームとなります。
耐震リフォームは、技術の進化により「コンパクトな工法」を取り入れた工事が出来、住みながらでも可能となります。