「人生には様々な喜びがあり、同時に苦しみや悩みもあります。人に言えない、誰にも相談できない、悩みや苦しみ。そんな時いくらかお役に立てれば…」
というフレーズで始まるラジオの『テレフォン人生相談』(ニッポン放送 月~金曜日 11:00~)。
最近、この番組を聞いてなかなか「名回答」だなと思った相談があり、それを紹介したいと思います。
母に苦労をかけた父のお墓に母を一緒に入れるかどうか
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相談内容
「現在、認知症の母は、認知症になる前は母に対して横暴だった父とは、同じお墓に入りたくないと言っていた。しかし、父と同じお墓に入ってもいいと言うようになった。認知症になる前となった後で、全く逆のことを言っているのでどうしたらいいのか。」
父と同じお墓に入りたくない
【61歳女性の相談内容】
両親のお墓のことで相談。84歳の母が、認知症になった。
その母が、認知症になる前に亡くなった父と同じ墓に入れないでと言って、このことを覚えておいて欲しいと言われた。
生きている間父は、表面的には優しい夫だが、母に暴言やDVまがいのことをして母は大変な苦労をしてきた。母は、「あの人、病気なんだよ」と愚痴を言いっていた。
家で父の介護のときも横暴で我儘な父にマインドコントロールされ、家に籠り外出もままならかった。この頃から、今までの母と違うようになってきた(認知症の症状が、出てきた)。
父の最期の入院や葬儀もことはそれなりに対応していたが、覚えていない。父と自分との関係もよくなかった。
認知症になって、父と同じお墓に入ってもいいと
母が認知症になってから一度、父と同じ墓に入っていいと言った。
「お父さんどうなっているか」「入院しているの。どこにいるの」「生きているかもしれない」と言い、まるで今までのことがすっぽり(底が)抜けたようになっている。
認知症になる以前は父と一緒のお墓には入りたくないと言っていた母が現在では、入ってもいい、「父は、いい人だった」と言っている。
果たして、認知症になる前と言っていることが全く違うがどうしたらいいのか。父が亡くなったことを話すとその度に悲しむので、母にはお墓のことは触れないようにしている。
純粋なものだけ残る
【高橋先生の回答】
(認知症になる以前の母の言葉の方を大事にして、父と一緒にしない方に傾いている相談者に対して)母が自分の実家の墓に一人だけ入なると親戚の人にも両親ことが分かり、悲しい広がり方をする。
身内に(夫婦仲が悪かったと)レッテル貼られる。(相談者曰く、親戚は、父の横暴ぶりを知っていてよく我慢していると言っているので、お墓を別にしても大丈夫)
「認知症」になると人間の今までの因果応報や自分の抱えてきた問題が薄くなり、「純粋なもの」だけ残るという考え方もある。
もしかして、お母さんは、お父さんの「本質的」なものを見て純粋にお父さんを愛していて、許しているかもしれない。だからそんな言葉になるのでは。
この件は、信仰や人間観が絡んでいる。いいように解釈して、(お母さんが)最後にそういうことを言っているならお母さんの言うように一緒のお墓に入るというのも一つの見識。
また、お父さんの悪行に満ちた酷い振る舞いを絶対に許さない。それに対して、仕打ちするという生き方もある。
残されたものの救いになる
宗教で「善人」は天国へ、「悪人」はそれよりもっといい「往生」をするという言い方もある。酷い人間ほど最終的には、人間の「純粋」な部分に包まれていく。
そういう風に考えることで、後に続く人間が「救い」になる。酷い人だったけど、いいところを見ていた方が自分達が生きていくのに救いになるのでは。
過去の悪し様をあげつらい分け隔てするより、母の思いを大切にしてあげた方が後々、子の気持ちも安らぐのではないか。
そうしないと、実の両親を眺めるときに寂しい。死を前にしている人間の思いを大切にしてあげた方がいい。そういう「ストーリー」の方がいい。
お母さんもお父さんをもう、許しているかもしれない。普段感じているお母さんの悪口と娘であるあなたの悪口が一致しているので、(相談者の)両親を同じお墓に入れたくない気持ちが強いのではないか。
でも、父の悪いことしか思い出さない娘の人生より、(父の)こんないいこともあったというように思った方がいい。父を(よく)振り返る生き方の方がいいのではないか。
お父さんのいいところも思い出してみて
最後にパーソナリティー柴田理恵さんが、相談者にアドバイスとしてこんなことを言っていました。
お父さんとのいい思い出もあるでしょう。(相談者曰く、子どもの頃、家族旅行に連れて行ってくれた。楽しかったと思う)今まで、育ててくれたことを振り返ることも大切だと。
育ててもらった恩として、(どんな親だろうと)親を理解してあげなくては。お父さんのどういうところがよかったか、お母さんに聞いてみるのもいいと思う。
それによって、今まで知らなかったお父さんを知ることが出来るのではないか。
しぼり菜リズム
相談者の娘さんは、当事者にしか分からない複雑な思いを抱えていると思います。両親を同じ墓に入れたくないというのは、母よりも娘の気持ちではないかと思いました。
お母さんにお父さんのよかったところを聞いてみる。お父さんとのいい思い出を思い出してみる。
これをすることで、相談者の娘さんの気持ちもきっと変わってくるのではないかと思います。